「グンジョウ、証拠ならもう一個見つけたよ。いやぁ、あの親子本当馬鹿!! これ父様とカヅキおばさんに見せたら、大激怒間違いなし!」
「え、何見つけたのさ…」
シャナは収納空間から一枚の紙を取り出し、僕に投げ渡してくる。
その中身を見た瞬間、僕は思わずソファーを殴りつけた。
その衝撃で近くに座っていたツルギの肩が跳ね上がり、僕は彼にごめんと謝る。
紙の中身は、ユエをどう手篭めにするか、その手段や方法を思案したものだった。
ユエを手篭めにし、飼い犬にした後、内側から王家を崩壊させるという計画書付き。
「………あのさ。誰か倒れる覚悟で僕に魔力渡す奴いない?」
多分僕の今の顔は般若になっている事だろう。
シンクが、気持ちはわかるけど、と僕の肩に手を置いてきた。
「お前を行かせるぐらいなら、シャナに行ってもらって報告してもらった方がいいわ。な、シャナ」
弟の言葉に、シャナは頷く。
「うん。魔力切れなんて起こさないから安心して、グンジョウ。お姉ちゃん制作のカートリッジは、こんな大量にあるからね。普通の使い方するだけなら、それこそオーシアにまで飛んでいけるくらいだから。すぐ行って戻ってくるね」
シャナは収納空間から大量のカートリッジを取り出し、展開した魔法陣の上に置いて行った。
そして転移術を起動し、姉は転移していく。
僕は深いため息をついて、ソファーに腰を下ろした。
「これ…また21貴族の一家、取り潰しになるのか…?」
頭が痛くなり俯いていると、慰めるかのようにシンクが頭を撫でてくる。
「まぁ、見ようによっちゃ謀叛だもんなこれ。だけど今回はあいつらが処刑になるだけで、すぐ分家の誰かが当主になるだろ。父様は国民全員の顔と名前が一致しているし、どういう性格の奴かまで把握してるはずだ。えーっと、今当主がいないのはテレジア、ベルナール、フリーデリーケ、んで、ローレンツか。今年、っつーか、父様の代で荒れに荒れてんなぁ…」
それには僕も同意する。
初代魔王復活に、魔王の遺物探し、果ては謀叛やらお家取り潰しやらと、父様は僕以上に頭が痛くなっている事だろう。
母様の事もあるというのに。
僕が同じ状況になったら、パンクして目の前の状況しか見えなくなる事請け合いである。
「グンちゃん、ごめん。ユエ起きたんだけど、ちょっとパニック起こしてるっぽい。宥めてあげてくれる?」
「あぁ、うん。こっちこそごめんね、ユタカ。知らせてくれてありがとう」
寝室の扉を開けて、ユタカが顔を出しながら僕にそう言ってきた。
僕はソファーから立ち上がり、ユタカと代わるように部屋の中へ入る。
「アオ…アオ…っ!!」
僕の姿を認めたユエが、僕に手を伸ばしてきた。
その手を取り、彼女を抱きしめる。
「ごめんね、傍を離れて。シンク達が帰ってきたから、事情を説明してたんだ。謀叛の証拠を見つけたから、今シャナが城へ報告しに行ってる」
ユエの指に自分のを絡め、額にキスを落とす。
泣いている彼女の顔にキスをしまくっていると、ユエが僕の名前を呼んだ。
「アオ…私、何もされてない…? 寝ている間、アオ以外、誰も来なかった…?」
「されてないよ。ユタカも一緒に帰ってきてたから、僕がみんなに説明する間、傍にいてもらったんだ。君はまっさらのままだよ、愛しいユエ。あの…君が寝ている間、僕が手を出してたら、嫌、だよな?」
そう尋ねると、ユエは少しムッとなる。
「アオならいい。むしろして。襲って」
「例えばの話だからな? 手は出してないからな? 寝てる君なんて無反応すぎて、多分萎える。と、少し元気出たかい?」
彼女はムッとした表情のまま、僕の胸に顔を埋めた。
服を握りしめ、少し拗ねたようだった。
「アオのヘタレ…」
「ヘタレじゃなくて慎重って言ってくんないかな…アレ持ってきてないし…前も言ったけど、初夜でグスグズに甘やかして啼かせるから、覚悟しとけよお前」
上等、と返されてしまい、僕は少し困る。
そんな反応されるとは思わなかったから。
うちのお姫様、強気な所があるからなぁ。
まぁ、元気出たなら良かった良かった。
ユエを伴いリビングに行くと、シャナが戻ってきていた。
姉は僕を見ると、ブイっ、と手をピースにしてニヤッと笑う。
「明日、ローレンツ卿とザックに、城へ出頭するよう命令出すってさ。あとその頭の中の記憶も転写するから、グンジョウも城に戻って来いって、カヅキおばさん言ってたよ」
「証拠撮ってない事、おばさんに説明してくれたんだ。ありがと、シャナ」
そこも姉達に説明している最中に言っていたので、おばさんに伝えてくれてて助かった。
「ユエちゃん、あーいう輩は絶対処罰してやるから安心してね。何なら証拠でっち上げてでも…」
「流石にそれはダメだと思うぞ、シャナ。てか、言い分父様そっくり。流石娘」
握り拳を作り力説する姉に、ソファーの背もたれから少し身を乗り出していたシンクが、呆れたような目をシャナに向ける。