「ちゃんとやらないと不全になるってママ言ってたもん!!」
「なんでお前の前でやんなきゃいけねぇんだよ!! そんな心配しなくても良いわマジで!!」
一通り口喧嘩した後、お互いに謝る。
ユエに先に風呂から上がってもらい、ちょっとしてから僕も上がって服を着た。
初夜みたいって恥ずかしがってた彼女は、どこへ行ったのか。
マジで頭のネジどっかに行ったんじゃないか?
はぁ、とため息をついて脱衣所から出る。
寝室内が暗くなってて、ユエが電気を消したのだなとすぐわかった。
「ユエ?」
「…何」
不機嫌というか、少し拗ねた感じで返されて、僕は苦笑する。
ベッドの方を見ると少し盛り上がっていたから、ユエはもう潜り込んでいるのだろう。
眼鏡をとってサイドテーブルに置き、僕もベッドに潜り込んだ。
「そんなに拗ねるなよ」
「拗ねてないもん」
拗ねてんじゃん。
そう言いたかったが、彼女の機嫌を回復させる方が先か。
僕は後ろからユエを抱きしめ、その首筋にキスを落とす。
ピクリと肩が跳ねたが、気にせずキスマークをつけた。
「ア…オ…」
「今はこれで我慢しろ、ユエ。僕だってお前を抱き潰したくて仕方ないんだ。そんな誘惑してきて…後もうちょっとなんだからさぁ…」
彼女をキツく抱きしめ、頭に額をくっつける。
だって、とユエはポツリと呟いた。
「アオと付き合って、もう二年経ったけど…あんまり進展しないというか、なんというか…」
「無責任な事出来ないだろ? 未成年だし、別に自分で仕事して稼いでるわけじゃない。君を養えない、子供が出来ても、それに対してかかるお金だって払えない。全部親頼りになる。そんなの僕は嫌だ。君にも子供にも、ちゃんと責任を持てる人になりたい。ねぇ、ユエ。待ってて。その時が来たら、絶対君を迎えに行くから。ね?」
コクリとユエは頷いてくれる。
彼女の機嫌が治ったようなので、僕は頭に頬擦りして目を閉じた。
「好きだよ、ユエ」
「私も、アオ」
そのまま眠気が来たので、意識を飛ばす。
飛んでしまう直前、唇に何か柔らかいものが触れた気がした。
◆◆◆
城に帰り、僕は王宮内にあるおばさんの研究室を尋ねた。
予想通りとおばさんは言い、そこの椅子に座るよう指示される。
頭に何かの電極を貼られ、これが読み取る装置に繋がっているのかと少し興味をそそられた。
シンク程ではないが、僕もこういう機械関連は興味がある方だ。
ワクワクするのはやはり、僕が男だからだろうか?
「……うわ」
僕の記憶を読み取って出てきたものを見たおばさんが、思わず声を上げた。
ユエとの記憶は思い出すなよと言われたから、あの出来事だけを思い出していたのだが、上手く印刷出来たようだな。
「おばさん、これ取っても良いですかね?」
「あ、あぁ……グンジョウ、ユエを頼むな…流石にこれは、私でも引くレベルだ。ユエ、取り乱したろ?」
おばさんの問いに、僕は頷く。
「もうそれは、思い切り取り乱してましたよ。ユエは気付かなかったみたいですけど、使用済みのアレが奥の方にありましたし。本当…極刑にしてくれないかなぁ…むしろ手を下すなら僕が…」
「王族が直接手を下すとか、阿呆な事を抜かすな。そういうのは拷問部隊の仕事だ」
おばさんは僕の頭に貼り付けた電極を取っていった。
取り敢えずで見せてもらった写しは、全くもってその通りの物だったので、合ってますとおばさんに告げる。
戻って良いと言われたので、僕はおばさんの研究室から辞した。
そのまま歩いていると、化け桜の所にユエがいるのを発見する。
声をかけようと思ったが、彼女の出で立ちに息を呑んだ。
黒やオレンジ、白といった配色の着物と呼ばれる吾妻の衣装に身を包み、黒髪を結い上げている。
髪を留めているそれは簪と呼ばれるもので、彼女の名前の飾りがついていた。
色は僕の色である青。
持っている扇子は黒に金で桜が描かれている物で、それを手に持ち、彼女は舞い始めた。
その姿が美しく、僕はつい見入ってしまう。
数分か数十分か。
舞う彼女に目を奪われていると、ぱちっと視線が合った。
「アっ、アオ?! いつからそこに?!」
驚いたユエが舞うのを止める。
「えー…っと…君が舞い始めた辺りから、かな…」
苦笑しながら答えると、彼女の頬が赤く染まった。
とても可愛くて、僕はユエの傍に歩み寄る。
そして、彼女の足元に跪いた。
「舞う君は美しかったよ、ユエ…いや、今も美しい。吾妻に伝わる、天女かと錯覚する程にね」
「く、口説かないでもらえると…」
彼女の手を取り、その手の甲にキスを落とす。
口説かない、なんて選択肢、今の僕にはない。
本当に美しすぎて、もし今ユエに誘われたら、確実に僕は彼女に溺れる事だろう。
「ところで、その衣装どうしたの? あとなんで舞ってたの?」
疑問に覚えた事をユエに尋ねると、少し僕から目を逸らしながら教えてくれた。
「王妃様が前、着物着て踊ってたの。ここで。とても綺麗だって思ったから…教えて欲しいってお願いして…たまに、これ着て踊ってるの…」
「そうなんだ…とても綺麗だよ、ユエ」
本心を口に出す。
ユエはまた、口説かないでと僕にお願いしてくる。
それは出来ない相談なんだけど、もうそろそろ慣れてくれないかな。