my way of life   作:桜舞

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312話『舞う君は美しかった』

「ちゃんとやらないと不全になるってママ言ってたもん!!」

「なんでお前の前でやんなきゃいけねぇんだよ!! そんな心配しなくても良いわマジで!!」

 

一通り口喧嘩した後、お互いに謝る。

ユエに先に風呂から上がってもらい、ちょっとしてから僕も上がって服を着た。

 

初夜みたいって恥ずかしがってた彼女は、どこへ行ったのか。

マジで頭のネジどっかに行ったんじゃないか?

 

はぁ、とため息をついて脱衣所から出る。

寝室内が暗くなってて、ユエが電気を消したのだなとすぐわかった。

 

「ユエ?」

「…何」

 

不機嫌というか、少し拗ねた感じで返されて、僕は苦笑する。

ベッドの方を見ると少し盛り上がっていたから、ユエはもう潜り込んでいるのだろう。

眼鏡をとってサイドテーブルに置き、僕もベッドに潜り込んだ。

 

「そんなに拗ねるなよ」

「拗ねてないもん」

 

拗ねてんじゃん。

 

そう言いたかったが、彼女の機嫌を回復させる方が先か。

 

僕は後ろからユエを抱きしめ、その首筋にキスを落とす。

ピクリと肩が跳ねたが、気にせずキスマークをつけた。

 

「ア…オ…」

「今はこれで我慢しろ、ユエ。僕だってお前を抱き潰したくて仕方ないんだ。そんな誘惑してきて…後もうちょっとなんだからさぁ…」

 

彼女をキツく抱きしめ、頭に額をくっつける。

だって、とユエはポツリと呟いた。

 

「アオと付き合って、もう二年経ったけど…あんまり進展しないというか、なんというか…」

「無責任な事出来ないだろ? 未成年だし、別に自分で仕事して稼いでるわけじゃない。君を養えない、子供が出来ても、それに対してかかるお金だって払えない。全部親頼りになる。そんなの僕は嫌だ。君にも子供にも、ちゃんと責任を持てる人になりたい。ねぇ、ユエ。待ってて。その時が来たら、絶対君を迎えに行くから。ね?」

 

コクリとユエは頷いてくれる。

彼女の機嫌が治ったようなので、僕は頭に頬擦りして目を閉じた。

 

「好きだよ、ユエ」

「私も、アオ」

 

そのまま眠気が来たので、意識を飛ばす。

飛んでしまう直前、唇に何か柔らかいものが触れた気がした。

 

◆◆◆

 

城に帰り、僕は王宮内にあるおばさんの研究室を尋ねた。

予想通りとおばさんは言い、そこの椅子に座るよう指示される。

頭に何かの電極を貼られ、これが読み取る装置に繋がっているのかと少し興味をそそられた。

 

シンク程ではないが、僕もこういう機械関連は興味がある方だ。

ワクワクするのはやはり、僕が男だからだろうか?

 

「……うわ」

 

僕の記憶を読み取って出てきたものを見たおばさんが、思わず声を上げた。

ユエとの記憶は思い出すなよと言われたから、あの出来事だけを思い出していたのだが、上手く印刷出来たようだな。

 

「おばさん、これ取っても良いですかね?」

「あ、あぁ……グンジョウ、ユエを頼むな…流石にこれは、私でも引くレベルだ。ユエ、取り乱したろ?」

 

おばさんの問いに、僕は頷く。

 

「もうそれは、思い切り取り乱してましたよ。ユエは気付かなかったみたいですけど、使用済みのアレが奥の方にありましたし。本当…極刑にしてくれないかなぁ…むしろ手を下すなら僕が…」

「王族が直接手を下すとか、阿呆な事を抜かすな。そういうのは拷問部隊の仕事だ」

 

おばさんは僕の頭に貼り付けた電極を取っていった。

取り敢えずで見せてもらった写しは、全くもってその通りの物だったので、合ってますとおばさんに告げる。

 

戻って良いと言われたので、僕はおばさんの研究室から辞した。

そのまま歩いていると、化け桜の所にユエがいるのを発見する。

声をかけようと思ったが、彼女の出で立ちに息を呑んだ。

 

黒やオレンジ、白といった配色の着物と呼ばれる吾妻の衣装に身を包み、黒髪を結い上げている。

髪を留めているそれは簪と呼ばれるもので、彼女の名前の飾りがついていた。

色は僕の色である青。

 

持っている扇子は黒に金で桜が描かれている物で、それを手に持ち、彼女は舞い始めた。

その姿が美しく、僕はつい見入ってしまう。

 

数分か数十分か。

舞う彼女に目を奪われていると、ぱちっと視線が合った。

 

「アっ、アオ?! いつからそこに?!」

 

驚いたユエが舞うのを止める。

 

「えー…っと…君が舞い始めた辺りから、かな…」

 

苦笑しながら答えると、彼女の頬が赤く染まった。

とても可愛くて、僕はユエの傍に歩み寄る。

そして、彼女の足元に跪いた。

 

「舞う君は美しかったよ、ユエ…いや、今も美しい。吾妻に伝わる、天女かと錯覚する程にね」

「く、口説かないでもらえると…」

 

彼女の手を取り、その手の甲にキスを落とす。

口説かない、なんて選択肢、今の僕にはない。

本当に美しすぎて、もし今ユエに誘われたら、確実に僕は彼女に溺れる事だろう。

 

「ところで、その衣装どうしたの? あとなんで舞ってたの?」

 

疑問に覚えた事をユエに尋ねると、少し僕から目を逸らしながら教えてくれた。

 

「王妃様が前、着物着て踊ってたの。ここで。とても綺麗だって思ったから…教えて欲しいってお願いして…たまに、これ着て踊ってるの…」

「そうなんだ…とても綺麗だよ、ユエ」

 

本心を口に出す。

ユエはまた、口説かないでと僕にお願いしてくる。

それは出来ない相談なんだけど、もうそろそろ慣れてくれないかな。

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