my way of life   作:桜舞

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314話『どっちが良いと思って』

問われれば首を縦か横には振るが、絶対に口を開こうとは思わなかった。

マジで反省してほしいので。

 

ユエを無碍にはしていないので、シャナも怒るに怒れないようだった。

 

「ユタカ…」

「ママに、グンちゃん困らせたらダメだって言わなかったユエが悪い。おかげでこっちも被害被ってるんだからね? シンクは美人になるのは証明されてるから良いものの、なんで私が男性に変身しなきゃいけないのかな。一番可哀想なのはツルギだけど」

 

ユタカはそう言いつつ、ユエを睨んだ。

 

僕らメンバーは全員表に出て接客する事になっていた。

午前は僕とユエ、シャナ。

午後はシンクとユタカとツルギ、という組み分けになっている。

 

確かにツルギが女性になった姿、想像出来ないなぁ。

シャナは父様そっくりになるんだろうか。

配色一緒だし。

 

「四面楚歌…」

「自業自得でしょ、お馬鹿」

 

ユタカに言われたくない、と姉妹喧嘩が勃発する。

それをスルーして、僕は本を読む事に集中した。

僕の代わりにツルギとシンクが二人を宥めるが、ふん、とお互い顔を横に向ける。

その内アビドボルの領都に到着したが、普通の街だとの印象を持った。

 

「アビドボルって、武家の家だっけ」

「俺そんな詳しくねぇんだよなぁ…兄ちゃん、武家だっけ?」

 

ユタカの疑問にシンクも少し首を傾げる。

いや、そこは覚えておけよと思いつつ、話を振られたので答えた。

 

「21貴族のうち、ベジャール、アレクサンドル、バルザック、ベルナール、ヴェロニカ、トリスタン、ビスコッティ、ロスヴィータ、ベネディクト、アビトボル、ヒルデブレドが武家の家。テレジア、ハインリヒ、アレクシス、ヴァリエール、ジルベルト、テスタロッサ、フランシスカ、ローレンツ、フリーデリーケ、ブリュンヒルデが文家の家だね。覚えておけよ、それくらい」

 

シンクの方へ少し呆れた目線を投げてやると、ごめんとジェスチャーされる。

そしてユエの方をチラリと見てみた。

彼女は携帯片手にウルウルと目へ涙を溜め、呟く。

 

「アオの声、アオの声だ…録音出来て…るね。うん、後でリピートして聞こう…」

 

一日しか口聞かないでいるのに、僕欠乏症になるの早くないか?

え?

君そこまでメンタル弱かったっけ?

 

「グンジョウに対してだけでしょ」

「だからって、早過ぎだろ」

 

シャナが呆れた目を僕に向けたので、そう答えてやる。

それも録音しているようで、ユエがもっと喋らせてほしいとシャナを見つめていた。

 

「…ユエ、まさかとは思うが…殿下の声を切り貼りして、その…ボイスロイドみたいなもの、作る気か…?」

「その手があったか!!」

 

ツルギが言った、ボイスロイドという単語に僕が首を傾げた瞬間、ユエの顔が明るくなる。

そして自分の携帯を見つめ、ニヤニヤし始めた。

 

「ツルギ、ボイスロイドってなんだ?」

「あー…俺も詳しくは、無いんですけど…その人の声の音域とかを、録音して調整し…歌わせたり、喋らせたり出来る、合成音声みたいな…」

 

あー、成程。

…って待てよ。

僕がユエに対して喋らないから、彼女は僕の声を録音して、僕の代わりにそれと会話する、と…。

 

「多分、AIプログラムを組んで、学習させていけば…殿下そっくりの人格を有した、AIが出来る、かと…」

「うわ。それ、ユエちゃんにはもうグンジョウ必要ないじゃん。グンジョウ、多分今凄くマズい状況だと思うよ? 意地張ったらユエちゃん、グンジョウの事捨てるかも…」

 

僕らがそんな会話をしているのにも関わらず、ユエは手元の携帯をタップしまくり、何かを検索しているようだ。

僕は少し席を移動し、彼女の携帯の画面を覗き込む。

 

検索画面には、ボイスロイドの作り方、AIプログラムの組み方、喋らせる方法などがブックマークされていた。

 

こいつ、僕と喧嘩する度に制作したこれで慰めてもらおうとか考えているのか?

 

イラッとした僕は、シャナに魔力供給をお願いする。

僕の意図を理解した姉は、ため息をつきつつリンクを繋いでくれた。

シャナの魔力を使い、周りから見えないように不透明な結界を作り、極小の防音結界を張る。

そして、ユエの手から携帯を取り上げた。

 

「あっ!」

「あ、じゃねぇよ。僕が目の前にいるのに、これで慰めてもらおうとか思ってねぇよな? なぁ、ユエ? これと生身の僕、どっちが良いと思ってんだお前は」

 

片手でユエの肩を掴み、押さえ付ける。

これ、と言いながら携帯を振った。

 

「アオ、それ返して!」

「さっきの質問に答えろ、ユエ。こっちが良いなら、婚約破棄しても良いんだぞ」

 

携帯に手を伸ばしていたユエだったが、その言葉を聞いて目を大きく見開き、僕を見る。

その目から、大粒の涙がボロボロと零れ落ちていった。

 

「だっ、だって…アオ…私が…っ、謝っても、何か聞いても、喋ってくれな…いんだもん…っ!! 寂しかったし…っ…悲しかった…っん、だもん…っ!! アオの方が、良いに…っ、決まってるじゃんっ!! う…うわぁぁぁぁんっ!!」

 

本格的に泣き始めてしまったユエを抱きしめ、その背を軽く叩く。

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