my way of life   作:桜舞

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316話『何処かへ行く事なんて許さない』

「ユエとの婚約をリューネ中に発表したろ? その前から、ロゼッタ嬢は僕と結婚したいってアビドボル卿にねだってたらしいんだ。一応、卿も陛下にお伺いを立ててたんだって。流石に年が離れすぎって事で、断ってくれたらしいんだけど。アビドボル卿も、年が上の僕に嫁がせなくて済んで安堵した事だろうね」

「だから私、敵視されてると? うーん…まぁ、良いけどさ…。幼い子に敵視されても、そういう事もあるよね、くらいにしか思わないし」

 

宝物庫の前に着き、扉を開けた。

中にはシャナ、ツルギ、ユタカがおり、僕らの姿を認めて声をかけてくる。

 

「やっと来た! 遅いよ、グンジョウ!」

「ごめん、シャナ。遺物見つかった?」

 

少しムッとした姉に謝罪しつつ、遺物の有無を問う。

シャナはううん、と首を横に振った。

 

「リブロがここにあるって言ってたけど。詳しい位置も分かれば良いんだけどな」

【申し訳ありません、マスター】

 

シャナがリブロを抱えて言うと、彼? 彼女? が謝ってくる。

リブロが悪いわけではないが、確かに詳しい位置情報が欲しい所ではあった。

 

「ここの遺物って何?」

「ピアスだって。ほんの数十年前の物だっていうから、アビドボル卿のお祖父様か、ひいお祖父様の代の魔王かもね」

 

結構近代なのか。

本当バラバラだよな、魔王の出現時期。

前兆が分かれば良いのにな、なんて思ってしまう。

 

「宝物庫にない、なんてはずないんだけど。大体は、家宝になっているんだから。ユエ、ユタカ。別の部屋も捜索してくれる? シンク、僕と来い。アビドボル卿に事情を聞きに行く。シャナとツルギは引き続きここで探してくれ。みんな、良いな?」

 

僕の号令に、皆頷いた。

僕はシンクと共に、アビドボル卿と別れた玄関ホールまで戻ってくる。

途端、ブォン、と低めの音が聞こえ、次いで嫌な気配が屋敷中に広がっていく感覚がした。

 

「な…っ?!」

 

この気配は、フリーデリーケで感じたものと同一の物。

という事は、魂喰らいの結界が張られたという事だ。

 

僕は後ろにいたシンクを振り返る。

だが弟は、驚愕した顔で玄関ホールから二階へ続く階段を見上げていた。

 

「シンク、どうし」

「あら、今はシンクって名前なの? グンジョウ。まぁ、あんたの名前なんてあたしに比べたら、ただ見たままの名前ですものね? ほんっと、おかしいったらありゃしない!!」

 

聞き慣れた声に、僕はそちらを見る。

階段の踊り場、見慣れた姿があった。

だが、その表情はいつもの花が咲いたような表情ではなく、醜悪と言っても良いほどのもので。

 

「…シャ、ナ……なんでお前がここにいやがる!! ソルフィアナ姉様はどうした!!」

 

シンクが激昂し、魔武器を取り出してシャナに向けた。

 

今日の姉の服は、ダボダボのベルト付きパーカーに、チェックのスカート、黒いブーツといったカジュアルな服を着ていたはずだ。

なのに、目の前のシャナは黒いショートドレスと、同じく黒い上着を羽織っている。

ドレスは胸元まで開いていて、妖艶さが漂っていた。

 

髪型だって、シャナはいつも左上で髪を結っている。

しかし目の前の姉らしき人は右上で結い上げ、花飾りが付けられたティアラを頭につけていた。

 

シャナらしき人物はクスクスと笑い声を上げる。

 

「あんな女なんて知らないわ。お父様やお母様みたいに、魔獣の肥やしにでもなったんじゃない? それより、グンジョウ? あたしと一緒に帰りましょう? 今リューネはとーっても混沌としていて素晴らしいのよ! 民が嘆き悲しみ、怒りの感情が全てあたしに流れ込んでくるの。とても甘美で心地よくて…ねぇ、グンジョウ? あんたのその怒りも、あたしへの栄養になってるのよ? ふふふっ!!」

 

何がそんなに可笑しいのか。

シャナと同じ顔で醜悪な言葉を紡がないでもらいたい。

キッと僕が睨み付けているのに気付いた姉らしき人物は、楽しそうに口の端を吊り上げた。

 

「シャナ、てめぇ…っ!!」

「あら、気付いた? 気付くわよねぇ?! あんたなら!!」

 

魔武器を握り締め、シンクはギリッと歯軋りする。

いつの間にか、ロゼッタ嬢がシャナらしき人物の腕の中にいた。

彼女は虚ろな目をしながら、クマのぬいぐるみを抱きしめている。

 

「ロゼッタ嬢!!」

 

僕が彼女の名前を呼ぶとロゼッタ嬢は首を傾げ、そしてケタケタ笑い出した。

 

「お兄様お兄様グンジョウお兄様。わた、わたわたし、こ、ここここここんな、こんな!! こんな姿ににににににっ!!」

 

グリンと人間がしてはいけない首の角度に、ロゼッタ嬢の首が曲がる。

その間も、彼女が笑う声は止まない。

 

「シャナ!! お前、小さい子にも手を出すクズだったのかよ!!」

「あら、そんな事もうわかりきっていた事でしょう? あたしはね、グンジョウ。人間って生き物は、全部あたしの食糧であり、オモチャだと思ってるの。怒り、嘆き、悲しみ、苦しみ。全て魔王になったあたしの、退屈凌ぎと栄養になってくれる。だからグンジョウ、戻って来なさいよ。あんたもあたしのオモチャなんだから。勝手に何処かへ行く事なんて許さない」

 

なんて身勝手な言い分だ。

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