my way of life   作:桜舞

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317話『僕の半身が、死んだ』

僕は怒りに震えながら魔武器を取り出し、構える。

それを、姉らしき人物は楽しそうに見た。

 

「そっちのグンジョウも、あたしに対して怒っているの? 何故? この子もこの家も、貴方には全く関係ないでしょう?」

「関係なくはない。ロゼッタ嬢も、アビドボル家も、等しく我が国の民だ。その民を害した貴様を、許すわけにはいかない」

 

僕がそう言うと、魔王になったシャナは腹を抱えて笑い出し、涙目になりながら告げる。

 

「フリーデリーケだったっけ? 自国の民も救えなかった無能が、何を偉そうに。ロゼッタ、ねぇロゼッタ。その可愛い可愛い皮なんて捨ててしまいなさいな。貴女の本性を、グンジョウお兄様に見せてあげて?」

 

バリバリと、ロゼッタ嬢の体が裂けていく。

彼女の体から赤黒い塊が現れ、少し蠢いた後、粘液性のある物を吐き出した。

僕とシンクに向かって吐かれた物を避ける。

床に落ちたそれは、シューという音を立て、床を溶かしていった。

 

「強酸の粘液ってやつか…当たったらまずいやつじゃん…」

「ふふふっ! ロゼッタと一緒に踊っていなさいな。さて、桃華?」

 

魔王のシャナが、桃華の名を呼ぶ。

スッと影から出てきた桃華は、先程のロゼッタ嬢と同じように虚ろな目をしながら、シャナに近付いた。

 

「貴女にプレゼントよ。このピアス、あたしの趣味じゃないから貴女にあげるわ」

 

ピアス穴など開いていないのに、どうするつもりなんだあいつは。

 

そう思った瞬間、桃華の耳に無理やりピアスをねじ込み、その勢いで穴を開ける。

ロゼッタ嬢だったものからの攻撃を避けている間に見た光景だったが、僕は怒りでブランシュを投げつけた。

 

人の体を何だと思っているんだ、あいつは!!

 

僕の意思で飛んで行ったブランシュは、シャナに当たる寸前、桃華が取り出した剣によって阻まれてしまう。

 

「グンジョウ!! 無事?!」

 

宝物庫方面から、僕とシンク以外のメンバーが走ってきた。

シャナが僕らを見、若干泣きそうになっているのに対して、あぁ、やっぱり僕の姉はこのシャナだな、なんて思ってしまう。

 

自分より、弟の心配を第一に考えてしまう所とか。

 

「あら、並行世界のあたし。お元気? 別に元気でもそうでなくても、どっちでも良いのだけれど。会ったばかりで残念なのだけど、さようなら?」

「…え…あたしが、もう一人…?」

 

僕とシンクが、ロゼッタ嬢だったものと戦闘しているのに気を取られて、シャナは声を掛けられるまで気付かなかったらしい。

 

「シャナ!!」

 

特大の攻撃魔法がシャナに向かって放たれる。

僕は姉の所に向かおうとし、強酸の粘液に阻まれた。

シャナへ攻撃魔法が当たる瞬間が、スローモーションになっていく。

それは僕の脳内の処理速度が落ちたのか、それとも本当に時間がそうなってしまったのか、わからなかった。

 

魔法が当たり、その場に爆風が巻き起こる。

土煙が上がってそれを被った魔王のシャナは、とても嫌そうな声を上げた。

 

「なんて事?! 嫌だわ…せっかくのドレスに、埃がついてしまったじゃない…っ!! ロゼッタ、あたしはもう帰るから十分に遊んでいらっしゃい。桃華、帰るわよ」

 

パチン、と指を鳴らす音がし、次いで時空間の揺らぎが発生する。

それを通って、シャナと桃華はいなくなった。

 

「ツルギ、ユタカ、ユエ!! 無事か?!」

 

シンクが声をかける。

シャナの向こう側にいた三人は、各々声を上げたが、姉の声だけしない。

 

「あのバケモン、強酸の液を吐く! それに注意して倒せ!! 俺は魂喰らいの結界を破壊してくる!! グンジョウ、惚けてんじゃねぇ!! お前の姉ちゃんが、あんなんで死ぬタマかよ!!」

 

シンクは僕の頭を思い切り殴り、シャナがいた方向とは逆に駆け出していく。

ロゼッタ嬢の攻撃が、三人に集中したおかげで、こちらに一切来なくなった。

僕はフラフラと歩きながら、シャナがいた場所まで歩く。

 

「…シャナ……シャナ……? 何処…?」

 

姉に当たった特大魔法のせいで開いた壁の穴。

外にまで瓦礫が散乱し、僕は辺りを見回した。

シャナの名前を呼ぶが、返事がない。

外も見るが、姉の姿はない。

 

「シャナ…」

 

僕はその場に座り込み、俯いた。

ポタポタと、地面に涙が零れ落ちていく。

 

姉が、死んだ。

僕の半身が、死んだ。

 

守れなかった。

強酸を避けずシャナを庇えていたら、もしかしたら姉は助かったかもしれないのに。

 

「シャナ……ごめん……ごめん、シャナ…っ!! 守れなかった…っ!! 守りきれなかった…っ!! ごめん……ごめんなさい……シャナ姉さん…っ!!」

 

泣きながら、地面を握りしめた。

涙がとめどなく溢れる。

シャナの名前を、何度も呼んだ。

 

地面を握りしめていたのだが、そこから生えてきた手が、ギュッと僕の手首を握ってきた。

 

「っ、うわぁあっ?!」

 

思わずその手を振り払うと、恨めしげな声が地面の中から聞こえてくる。

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