「勝手に、人を、殺すんじゃ、無いわよ…っ!! 気絶してて、今起きたっつーの!! というか、身動き取れないから助けてよグンジョウ?! 手ぇ振り払ったなぁっ?! お姉ちゃん勝手に殺して助けないとか酷い弟だなぁっ?!」
「シャナ?!」
僕は慌てて、瓦礫やらを退かし始めた。
ユエ達も戦闘が終了したようで、シャナの救助に加わってくれる。
瓦礫と地面の間からシャナが現れ、腕を引っ張って助け出した。
土だらけになった姉は、自分の服についた土を払いながら眉を寄せる。
「あんにゃろー…っ! よくも攻撃してくれたなぁ!! くっそ油断したぁぁっ!!」
悔しがる姉に、ツルギが安堵した表情を浮かべてシャナを抱きしめた。
「シャナ…俺も、君が死んだかと…思ってた…無事で、本当に良かった…っ!!」
「咄嗟にリブロが障壁張ってくれたの。衝撃は殺せなくて、瓦礫に頭打って気絶しちゃったみたい。えへへ、ごめんねツルギ君。グンジョウも。泣かせてごめんね。お姉ちゃんは頑丈だから大丈夫だよ」
片方の手をツルギの背に回し、もう片方を僕に差し出してシャナは微笑む。
僕はそれを見て、また涙が出てきた。
「…っ、姉さん…っ!! 姉さんが無事で、本当に良かった…っ!! 僕こそごめん…っ! 守りたかったのに、守れなかった…っ!!」
「グンジョウ来てたらもっと大変な事になってたよ。でも、心配させてごめんねグンジョウ。お姉ちゃん想いの良い子だね、グンジョウは」
ツルギがシャナから離れたようで、姉は僕を抱きしめてくる。
頭を撫でられ、僕はシャナの服を掴み泣きじゃくった。
「アオ…」
「ユエ、そっとしといてあげよう? グンちゃん、シャナちゃんが無事で本当に嬉しいんだからさ。シンクも行きたいなら行ってきなよ。私達、周囲の様子見てくるから。ほらツルギ。シャナちゃん取られたみたいで複雑なのはわかるけど、姉弟なんだから変な事にはならないって! こっち来る!」
ユタカがユエとツルギを連れて、その場から離れる。
その後に少し重さがかかったのは、きっとシンクもシャナを抱きしめたからだろう。
「姉ちゃん…うちの姉が悪い…」
シンクはバツが悪そうにシャナに謝る。
あれを姉と呼ぶのも本当は嫌なんだろうが、自分の身内が起こした事を弟は謝罪した。
「あれを姉と呼ばなくて宜しい。あんたのお姉ちゃんはあたしだけ。良い? あんな性悪、あたしじゃないから!」
泣き止んだ僕の頭を撫でながら、シャナは宣言する。
シンクも、自分の弟であると。
「それに、グンジョウの名前についてなんか言ってたの聞こえたぞ…。母様が名前つけてくれたのにケチ付けるとかアホか。群青って名前は、グンジョウにぴったりなのに。何が見たまんまだ。ふざけんな!! あー、もーっ!! 次会ったら問答無用でぶちのめしてやる!!」
「…姉ちゃん…ごめん、俺も頭撫でてもらって良い…?」
良いよ、とシャナは微笑み、シンクの頭を撫で始める。
そして、弟にしては初めて涙を溢した。
「…うん、辛かったんだね。グンジョウ、あの…」
「良いよ、別に。こいつもグンジョウだし。僕と混ざってややこしいから、シンクって呼んでるだけだし」
シャナの意図がわかり、僕は肩を竦める。
弟だと思ってはいるが、もう一人の自分だという事は忘れていない。
「ありがと。シンク、今だけ群青って呼ぶね。あっちの世界で、とても辛い思いをしてきたんだね群青。でも、ここには群青を苦しめる者も、辛い思いをさせる物も、何もないよ。あたしも、もう一人の君も、弟妹だって群青の事が大好きだよ。だから、今からは幸福にしかならないって、宣言してあげる。もしも、君を痛めつけて、苦しめて、悲しませるモノがあったのなら、お姉ちゃんが全部排除するよ。あたしはね、群青。弟妹が幸せなら、それだけで幸せなの。君達の幸せが、あたしの幸せ」
「…姉ちゃん…」
シャナはシンクの手を握り、笑う。
とても優しい微笑みで。
シンクはその笑顔を見て、また涙を流した。
「ごめん…ありがとう…姉ちゃん…っ! 俺も、みんなが大好きだよ…っ!!」
「うん。思いっきり泣いて良いよ、群青。ここにはあたし達しかいないからね」
シャナと額を合わせ、シンクはさっきの僕みたいに泣きじゃくる。
いつもシンクが慰めてくれているように、僕は弟の背を撫でた。
◆◆◆
「アオ、あのさ。一個聞いて良いかな」
シンクが泣き止んだあたりで、ユタカ達が戻ってきた。
彼女達の報告を聞いて、僕は頭が痛くなる。
アビドボルは、被害は少ないもののフリーデリーケと同じ末路を辿ったらしい。
屋敷の中にいた者達は全て、原型を留めないくらいに溶けてしまっていたようだった。
被害はこの屋敷のみで、領民には何も被害がなかったのが不幸中の幸いか。
「何?」
王都に連絡して、おばさんとトリスタン所属の兵達が現場検証をしている。
その傍、ユエが僕に質問してきたのでどうしたのかと返した。