my way of life   作:桜舞

319 / 408
319話『魔王の居場所わかった』

「シャナちゃんへの呼び名、何個あるの?」

「それ今聞く事?」

 

現場検証が終わるまで僕らはこの場から離れる事が出来ず、兵達が動く様を眺めている他ない。

おばさんに連絡する前、いつからこの事態になっていたのかと調べた。

アビドボル卿も溶けてしまったみたいだったが、日記を付けていたようで、申し訳ないと思いつつ中を見てみる。

 

これは謀叛である。

陛下を裏切るなど、本来なら腹を切り、首を捧げて詫びねばならぬ事態である。

私の首だけで済めば良いが、そうもいかぬであろう。

ベルナールも、私と同じ事になっていると、シャナ姫殿下に似た娘に言われた。

私は、自分の娘が可愛い。

あの子は遅くに出来た宝である。

それを人質に取られ、言う事を聞かざるを得ない。

もしこの日記が、殿下か陛下に見られるような事があったのなら、私の命だけでどうか、許していただけないだろうか。

 

そう書いてあった。

 

どうやら、魔王が復活して暫く経った頃、あの魔王になったシャナと桃華に、ロゼッタ嬢を人質に取られたようだった。

娘を解放してもらう為に、色々と僕ら王家に隠れてやっていたらしい。

 

また21貴族の一家が、取り潰しになった上に称号へ置き換わるのかと思うと、ため息しか出てこなかった。

 

「だって、気になったんだもん…」

「教えてあげなよ、グンジョウ」

 

ペットボトルに入った水片手に、シャナがこちらに来る。

喉が乾いたからと、食堂を漁ってきたらしい。

 

「勝手に動いたらおばさんに怒られるぞ、お前」

「ちゃんと許可取りましたー。危ないからってツルギ君と一緒に行ったし。話はぐらかすなよー」

 

えいえい、とシャナは僕の胸を小突いてくる。

若干鬱陶しかったので、姉の手首を掴んでやめさせた。

 

「はぐらかしてねぇだろ。はぁ……シャナの呼び名、だっけ? まず基本的には名前呼び。姉だけど、僕の半身だからね。あとは精神弱った時には姉上。公式の場とか畏まる時には、姉君。で…小さい時は、姉さんって呼んでた」

「たまに姉さんって呼んでくれるよねー。そのたまにが嬉しいんだよな、お姉ちゃんは」

 

うんうんと頷く姉に対し、少し気恥ずかしさを覚えた僕は、姉の手を離して額にデコピンする。

いたぁっ! と自分の額を押さえ、シャナは涙目になりながら僕を睨んだ。

 

「何すんのさグンジョー」

「ただの照れ隠し」

 

照れ隠しでやるんじゃないと怒られるが、それ以外何があるというのか。

 

「シンクは?」

「ユタカとカヅキおばさんと一緒に、現場検証立ち会ってる。実姉が相手だったし、説明しなきゃいけないとでも思ったんじゃない? シャナそれ飲ませて」

 

姉の手にあるペットボトルを指差すと、はい、とシャナは僕に渡してくる。

キャップを外して水を飲むと、ユエとツルギから微妙そうな顔を向けられた。

 

「? どうかしたの?」

「間接キスとか思ってんだろ。姉弟だっつの。確かに僕ら、普通の姉弟からしたら仲良い方だけどさ。姉を女として見れるかって言われたら見れないっての。気持ち悪い」

 

あたしも、とシャナは苦笑いを浮かべる。

それでもお互いの恋人は納得してないようで、ツルギはシャナを抱きしめ、ユエは僕に抱きついてきた。

 

嫉妬されてんのかな、これ…。

シャナも仕方ないなと笑っているし。

 

「戻ったぞー、と…何やってんのお前ら」

「うーん…なんて言ったらいいか…」

 

シンクがユタカと共に現れる。

どうやら、おばさんへ説明等が終わったようだった。

 

「おばさんが宿に戻っとけって。後の事後処理はこっちでやっとくってよ。グンジョウ、レポート提出しっかりやれって、おばさんからの伝言」

「それはわかってるよ…」

 

シンクの言葉に、僕はため息をつく。

とりあえず取っていたホテルの部屋へ向かい、僕はソファーに倒れ込んだ。

 

「グンジョウ、せめて着替えてからやれよ。土とか砂とか付きまくってんだから。ザリザリすんだろ」

「分かってるけど、疲れてもう無理。ベッドじゃねぇんだから良いだろ…」

 

良くない、とシンクに無理やり立たされる。

そして肩に担がれた。

 

僕より力無いくせに、よく持ち上げられるもんだ。

あれか?

筋力強化してんのか、こいつ?

 

「シャナ悪い、先風呂借りるわ」

「大丈夫。ここ掃除しとくね。グンジョウよろしく、シンク」

 

そのまま僕は浴室に連行される。

途中、ユエが私もと言っているのを、ユタカが必死になって止めていた。

 

男二人で風呂に入る。

何の情緒もねぇな、なんて感想を抱いた。

 

「悪かったな、グンジョウ。俺の世界のシャナが迷惑かけてよ」

 

浴室の天井を見上げているとそう言われたので、僕は見上げたまま返事をする。

 

「別に。迷惑とか思ってないよ。それに、あれはお前の姉じゃない。姉の皮を被った魔王だろ。でもさ、シンク。暫定的だけど、魔王の居場所わかったんじゃないかな」

 

天井から、シンクの方に顔を向ける。

眼鏡をつけていないから、弟の顔がぼんやりとしかわからなかったが、首を傾げたのがその動作から分かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。