my way of life   作:桜舞

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32話『僕何もしてませんけど?!』

ユーリおじさんは何も言わなかったが、ユエに何かしたら殺すと圧を感じた。

 

「あの、なんでツェリなんですか…? 確かに、お祖母様から、高評価をもらったと言っていましたが…」

「そうだな。師匠からの高得点とお前と同い年で幼等部からの付き合い。ユエよりは断然、お前の事をわかっているだろう。ハインリヒ家の令嬢だから、教養もある。ユエが潰れた場合、次の候補は彼女だ。わかっているのか、ユエ? お前が歩もうとしているのは、そういう茨の道だぞ。あぁ、ナツキを参考にするな。お嬢様は前世から完璧な人だったからな」

 

カヅキおばさんが、僕の後方を見て言う。

振り向くと、少し衣服が乱れたユエが立っていた。

 

え、何があったのそれ…?

僕何もしてませんけど?!

 

ユーリおじさんの眼光が鋭くなった気がしたので、僕は首を思い切り横に振る。

 

「な、何もしてませんよ?!」

「パパ、アオを睨まないで。ユタカと本気の喧嘩してきただけだから。ママ、王妃様。茨の道だとわかっている上で、私はアオと共に歩むと決めました。血反吐を吐いたとて、私は彼を諦めるつもりはありません。どんな責苦でも耐えてみせます。ですので、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします」

 

そう言い、ユエはカーテシーをし頭を下げた。

 

「じゃあ、今日から一緒に住む?」

「気が早すぎるぞ、ナツキ。まだグンジョウにはユタカという専属護衛がいるが、ユエがグンジョウの婚約者になるなら、こいつにも親衛隊から誰か出さねばならん。それの選別が終わるまで、一緒に住むなんて事、許すわけないだろうが」

 

一緒に住めば付きっきりで教えてあげられるのに、なんて母様は言う。

僕は父様を見た。

 

母様と婚姻を交わす時も、こんな大事になっていたのだろうかと思ったのだ。

 

「シャルの場合はな…元々専属護衛だった上に、一緒に寮に住んでいたから、流石にここまでではなかったぞ。まぁ、夫婦の形なんて人それぞれだろう。なぁ、ユーリ」

「そうだね。まぁ、グンジョウ君。他の女性に現を抜かしたら…どうなるかわかっているね?」

 

チラ、とユーリおじさんは自分の刀の鞘に手をかける。

僕は思い切り首を縦に振った。

 

◆◆◆

 

流石に今日はもう遅いからという理由で、ユエはここに残される事になった。

ユタカがおばさん達と帰る時に見送りに行ったが、ユタカはユエを睨みつけ声に出さず、

 

(絶対に諦めないからね)

 

と言って帰っていった。

 

「はぁー…」

 

僕はベッドに横たわり、深いため息をつく。

ユエと恋人になれたのはとても幸せな事だが、彼女に重荷を背負わせてしまったかもしれない。

それも耐えてみせる、と彼女は言ったが、ユエの人生には余計なものだろう。

 

それでも、彼女を離してあげられない。

 

「ほんっ…と…僕…クズの才能…あるんじゃないかな…」

「何の話?」

 

扉の方からユエの声がして起き上がる。

お風呂上がりなのか、少し髪が濡れていた。

 

「ユエ、ノックくらいして…?」

「したけど、返事なかったから…ごめん、お邪魔した?」

 

僕は首を横に振り、苦笑しながらユエに手招きする。

彼女は素直に僕の所に来た。

白いワンピースタイプのネグリジェは、とてもユエに似合っている。

 

「ちょっとここ座ってくれる?」

 

僕の足の間を示すと、ユエは躊躇いなく座った。

 

いや、座ってってお願いしたけど、少し恥じらいってものが無いのか…いや、あんだけキスしたんだから、これくらいは恥ずかしいうちに入らないのかな。

 

僕は彼女を抱きしめ、肩に額を乗せる。

 

「アオ? どうかした?」

「ねぇ、ユエ。僕は君に余計な重荷を背負わせたんじゃないかな。君を幸せにしたいと思ったのは本当の事だけれど、そのせいで君が辛い目に遭うなんて…。ごめん。だけど、君を離してあげられそうにないんだ。君が嫌だって言っても。愛してるんだ、ユエ」

 

僕の気持ちを、彼女に吐露した。

それを聞いていた彼女は肩を震わせて、笑い出す。

 

「…なんで笑うのかな」

「全部が全部、アオが悪いわけじゃないって思って」

 

僕の腕の拘束を外して、ユエは立ち上がる。

そして僕の方に向き直ると、微笑んだ。

 

「あのね、アオ。そう決めたのは私なんだよ? 妃教育が嫌、淑女教育も嫌、アオが好きなだけなのに、なんでそんな事をしなきゃいけないの。なんて、言うつもりはないよ。前なら言ってたかもしれないけど、今はアオの責務も、アオの婚約者がどういう立ち位置なのかも、理解しているつもり。だから、あまり自分を責めないで。私も、アオの事を愛しているの。貴方と一緒に、同じ道を歩きたいから、頑張ろうと思えるんだよ?」

 

彼女は、僕を抱きしめてくる。

大好きだと、態度で示してくれる。

 

あぁ、愛しい。

僕も大好きだよ、ユエ。

 

「ありがとう、ユエ。辛かったらいつでも聞くから。潰れる前に言ってね?」

「うん。こっちこそありがとう、アオ」

 

僕らはどちらからともなく、キスを交わす。

 

これからよろしくね、ユエ。

僕の愛しい人。

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