「分かったって?」
「あのシャナ、桃華と一緒に行動してただろ? 桃華は初代魔王が、遺物を保管する為に所有している者だ。その桃華と一緒にいた。推測にはなるんだけど、お前のとこのリューネに、初代魔王は潜んでいるんじゃないかと思うんだけど」
シンクが息を呑む声が聞こえる。
おばさん達は、このリューネを含む国と次元の狭間に魔王がいるのではないかとの考えで、調査を進めていたはずだ。
まさか、並行世界にいるなんて、考えもつかなかったと思う。
それこそ、並行世界と言っても無限にあるからだ。
母様曰く、世界は大きな木の枝葉の先に過ぎず、如何様にもその枝葉は増えていくらしい。
今日の僕の行動からも、並行世界は発生するのだという。
何かを選んで、何かを選ばない。
その選択肢が逆だっただけで、発生するのだと母様から教えてもらった。
「それは…考え付かなかったな…」
「あっちの世界では、シャナが魔王になった。だが、並行世界のリューネだ。僕らが回収したり、破壊した魔王の遺物は、向こうではまだ健在なはず……シャナ!! おばさんに連絡!!」
ちょうど僕らの着替えを置きにきたシャナに、僕は指示を出す。
わかった、とシャナは返事をして脱衣所から出ていった。
風呂から上がり服を着て出てくると、難しい顔をしたおばさんがソファーに座り、偉そうに足を組んでいる姿が目に入る。
その隣では、母様が優雅に紅茶を飲んでいた。
「二人とも、来てたんですね」
「来ないわけがないだろう。グンジョウ、お前の考えを話せ。それによっては、調査の方向性を変えねばならん」
城に戻って報告書を上げてから、その話をされると思っていたのだが、緊急を要すると判断されたらしい。
僕は二人に、自分の考えを話した。
聞いている途中、母様が頭が痛そうに額を押さえた。
「母様? 星読み?」
「いいえ…何の因果かしらと思ってね。リューネの王族は、魔王と因縁がある。あたしが魔王である宮塚と戦って、魔玉を破壊し、ナズナと婚姻して魔王の因子を持つシャナが生まれ…もう本当…うちの子達に災難ばかり降りかかるなんて… あぁ、シンクが悪いって言ってるわけではないの。そこは勘違いしないでちょうだいね? 貴方も、あたし達の大事な息子なのだから」
シンクを手招きで呼んだ母様は、傍に寄った弟の頭を微笑みながら撫でる。
「ごめんなさいね、シンク。それにみんな。あたしが出られれば、こんな問題すぐに片付けて、あなた達に苦労なんて負わさなかったのに」
「お前が今の状態で全力を出したら、1時間もしないうちに死ぬぞ。かく言う私もだがな。昔に無茶をしまくったせいで、全力を出したらお前以上に保たん」
はっはっは、とおばさんは笑うが笑い事で済ませて良いのだろうか?
そんなおばさんを見て、母様は深いため息をつく。
「グンジョウの考えを元に、調査形態を再構築します。今日はゆっくり休みなさい、みんな。グンジョウ、髪乾かさないまま放置は許しませんからね。涼しくなってきたのだから、また風邪を引くわよ」
「分かってるよ、母様…」
後ろでユエがドライヤー準備してるんだから。
シャナ程ではないが、体は頑丈な方だと自負しているのだけど。
僕の返答に、よろしい、と母様は言い、カヅキおばさんと共に城に帰っていく。
といっても、おばさんが長距離転移が苦手なので、影渡りで帰って行ったけど。
◆◆◆
母様の言い付け通り、ユエに髪を乾かしてもらい、外に出る気力もなかったので、ルームサービスでご飯を頼んでもらい、食事する。
食事した後、どっと疲れが出たのか意識がそこで途切れ、次に目を開けたら朝だった。
今回はロイヤルだったからか、ベッド上にある天蓋の大きさが城で使ってるキングサイズのベッドのものと一緒で、金かけてるなぁ、なんて感想を持つ。
またユエと一緒に寝たのかな、なんて思っていたのだが、僕の両手に誰かの手が触れていた。
一つは僕と同じ大きさ、もう一つは僕より一回り小さい。
うん? と思った僕は左右を見る。
眼鏡をかけてはいないが、色くらいは判別出来るから。
僕の右隣に蒼色、左隣は金色。
こんな髪色を持つのは、僕の姉弟しかいなかった。
「え、どういう状況これ?」
僕が声を上げると二人とも起きたようで、寝起きのシャナが僕に朝の挨拶をしてくる。
「おはよー…グンジョウ、シンク…」
「おはよう、シャナ。シンクも。ごめん、これどういう状況? なんで二人とも、僕と一緒に寝てんの? 他のみんなは?」
寝起きにより頭が回っていないというのもあるが、ちょっと理解が出来なくて、僕は僕の姉弟に聞く。
「シンクもグンジョウだから…」
「うん、それはそうだね? シャナ、ちょっと頭の回転早めて」
無理、と姉は瞼を擦りながら起き上がった。
と同時に、シンクも起き上がる。
「昨日の事で若干メンタル弱ってた俺に、シャナが姉弟三人で川の字で寝ようって言い始めて…今回も部屋三つだったし、ベッドこれだろ? ユエとユタカで一部屋、ツルギは寂しく独り寝してる」
「だから寝落ちした僕を真ん中にして、二人で横に寝てたってわけ? 成程、理解出来た」
僕も起き上がり、もう一つの疑問を弟にぶつけた。
「で、なんで手を繋いでたんだよ」
「シャナがそうしろって」
人肌感じてた方が安心出来るでしょ、なんて姉は言うが。
メンタルが弱っている時、僕にはそれが効果的なので、それ以上何も言わなかった。
シャナは弟妹に関してのみ、僕らがどうしたら安心出来るのか、よく見ている人だったから。