my way of life   作:桜舞

321 / 408
321話『兄である俺のエスコート』

ウンディーネ2の月。

二日に亘り開催される学園祭も、今年は僕らにとって最後のものとなる。

そんな中、僕は深いため息をついていた。

 

「グンジョウ、諦めなよ」

 

ポン、と肩に手を置かれ、シャナの方を見る。

父様そっくりになった姉は、僕を見て苦笑していた。

 

声も父様同様低くなっており、どちらかと言えば僕寄りの声かな、なんて思う。

衣装も、白のワイシャツに同じ色のジャボを付け、黒のスーツを着ている。

上着の袖は波打つ感じの袖で、どこかの紳士風であった。

黒の手袋を付けており、本当に男性だったのなら女性にモテているのだろうな、という端正な顔立ち。

 

髪の長さは調節不可らしく、いつもは左上で結い上げている髪も、下の方で結われていた。

 

「だってさ、シャナ…僕、自分の体違和感しかないんだよ…」

「それはあたしもだけど。三時間だけ頑張ろ? しかも一日だけで良いって、ルトル言ってたじゃん」

 

そうだけど…。

あと、自分の事あたしって言うと、オネエ感増すからやめて欲しい。

 

僕はまたため息をついて、自分の衣装を見る。

 

スカートを履くのは抵抗があったので、中にスパッツを履かせてもらい、黒のスリット入りのショートドレスを僕は着ていた。

首元から腕にかけて暗めな色のシースルー付きのドレスで、蝶のモチーフが着いたショートブーツを履いている。

蒼色のウィッグを付けさせられ髪が長くなっているが、首元にワンポイントで青いイミテーションの宝石がついたチョーカーをつけ、黒と薄紫の配色のヘッドドレスをつけさせられていた。

ちなみにドレスの背中は開いているし、ヘッドドレスに付けられたレースは腰まであるんだけど。

 

まぁ、これくらいならまだ許容範囲か、なんて自嘲気味に笑った。

 

衣装に縫い込むのはサイズ感の問題もある、との事で、おばさんから配られたのは、魔法陣が刻み込まれたブレスレットだった。

自分に渡された衣装を持って、更衣室でブレスレットを装着し起動して、着替えてこいと指示を受ける。

言われた通りにすると、みるみる女性の体になっていって、僕は少し目を覆いたくなった。

 

胸のサイズ、母様並みなんですけど、おばさん…。

 

学園祭が始まるまで、講師としてユーリおじさんに女性とは何たるかを、クラスの男子全員が叩き込まれたものだから、本当に嫌々ながら女性物を付けるしかなく。

 

「尊厳が崩されていくような感覚がするぅ…」

 

サイズもピッタリって何? と、更衣室で僕は顔を覆って天井を仰いだものだ。

そしてなんでユーリおじさんは、女性の事について詳しいんだよ。

貴方男性のはずでは?

普通おばさんが講師するべきでは?

元々男性だったんだから、おばさん。

 

「アオ、シャナちゃん、準備出来た?」

 

控え室件、IHクッキングヒーターで調理する場になっているユエ達のクラスへ、彼女が迎えにくる。

ユエの衣装はサイバーパンク風で、色は蛍光色の緑。

口元が隠れる物で、フードを目深に被れば彼女とは思えないくらい。

いつものユエより、背も高くなっている。

 

「グンジョウの化粧も終わってるよ。さーて…」

 

シャナが目を閉じて、深呼吸をした。

次に目を開けた時、僕の方を見て姉はニヤリと笑う。

 

「行こうか、グンジョウ? 兄である俺のエスコートは必要か?」

「はい、お兄様。よろしくお願いいたします」

 

ここもユーリおじさんの指導に入っていた部分で、そのままはよろしくないとルトルからの意見があり、女子は男性のように、男子は女性のような振る舞いを身につけさせられた。

 

抗議したかったが、ユーリおじさんからの圧で黙る他なく。

 

手を差し出してきたシャナの手を取り、僕は立ち上がった。

それに対して、ユエが若干面白くなさそうな目つきをする。

 

「アオは僕のなのに。シャナ君、ずるい」

「お前のである以前に、俺の妹だ。全く、うちの妹は愛らしいよな。そうは思わないか、ユエ?」

 

うわぁ、女性陣ノリノリだぁ…。

なんでそんなにノってるのか、僕理解出来なぁい…。

 

ちなみに、僕の脳内イメージはリーゼだ。

リーゼみたいに喋れば、まぁ、何とかなるだろうと思ったからである。

お淑やかさの権化みたいな子だからな、リーゼは。

 

二人の笑顔の応酬を見ながら、僕はまたこっそりため息をついたのだった。

 

◆◆◆

 

学園祭が始まり、オーダーを取って厨房に流す。

結構な賑わいになっており、大体はシャナ目当ての女性客と、ミステリアスな雰囲気のユエ目当ての女性客。

そして、何故かは分からないが僕目当ての男性客でごった返していた。

 

「お姉さん、マジ男?」

「そうなんですよー。これでもガタイがいい方なんですー」

 

外部客が揶揄い目的で声を掛けてくるが、僕はそれに対し、にこやかに笑って返す。

内心、じゃあお前らもなってみろや、と怒鳴りたかったが。

 

僕らの仕事はオーダーを取って流すだけで、配膳はしない。

一回シャナを交えてやってみたら、姉が大惨事をやらかしてくれたからだ。

いやぁ、あの時はシャナにマジで感謝したね。

このまま配膳までやっていたら、セクハラされる事間違いなしだったから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。