my way of life   作:桜舞

323 / 408
323話『あのままでも良かった』

そしてそのまま、彼女からキスをされる。

 

僕がいつもユエにしているみたいな、甘く蕩けるようなキスに、頭がぼんやりとしてくるような感覚を覚えた。

 

「…やば、ダメだ…アオ、時間早いけど、ブレスレット外そ?」

 

ユエが唇を離し、僕にそう言う。

これ以上したら、僕を押し倒して襲いかねないと、彼女は思ったのだろう。

いつも僕はその気持ちを抱えて我慢しているのだから、少しは理解してくれただろうか?

 

でも、名残惜しいと思ってしまったので…ユエがいつも言っているセリフを吐いてみた。

 

「ユエが良いなら、いいよ…?」

「っ! アオ?! 今女の子なんだから、そんな事言っちゃダメ!!」

 

いつも君が誘惑してくるの、真似しただけなんだけどな。

でも耐えてくれてありがたい。

 

「ユエ? 僕の気持ちわかった?」

「わかった…充分にわかった…だからそんな可愛い顔しないで…アオ、よく耐えれてるね…私、あともう一回やられたら襲う自信しかない…!」

 

うん、僕もそういう時あるから、本当理解深まって良かったねユエ。

 

◆◆◆

 

更衣室に行って、全て脱いでからブレスレットを外す。

元の自分の体に戻り、もともと自分が着ていた服などを持ってシャワー室に入った。

少し頭を冷やし、化粧を落としてから、ユエとの待ち合わせ場所に行く。

 

「お姉さん一人? 俺らとお茶しない?」

「彼氏待ってんの? まだ来ないじゃん。サイテーその彼氏。俺らの方が良い男だからさぁ、その間俺らと遊ぼうよ」

 

典型的なナンパ野郎どもに、ユエが声をかけられていた。

僕の彼女に何声かけてんだよ、とキレそうになっていたら、ユエが口を開く。

 

「鬱陶しい。邪魔。その煩い口を閉じろ。私の彼氏が、お前らより劣るわけないだろ。お前らと遊ぶ義理なんてない、失せろ」

 

凛とした月光のように冷たく響く彼女の言葉で、僕は少し固まった。

 

あんな声出すんだ、ユエ。

怖いしそれを向けられたら、僕泣くかもしれない。

 

「なっ、このアマ…っ!」

 

激昂した一人が、ユエに殴りかかった。

だが、ユエは素早くその腕を掴み、後ろへ捻り上げる。

もう一人がユエを拘束しようと動くが、腕を掴んでいた男を押すようにして体勢を低くし、顎に踵を叩き込んだ。

 

腕を掴んでいた男はユエからの圧迫に体勢を崩し、そのまま床へ顔面ごと倒れた。

見回りをしていた先生達が何事かと寄ってきたので、僕は彼女に近付きつつ、先生方に説明をする。

 

「アオ、遅い」

 

先生方がナンパ野郎どもを連れて行った後、ユエがムッとしながら僕を見上げつつ言う。

 

「ごめん、色々鎮めるのに時間かかって…それより、見事だったよ。流石僕の元専属護衛で、恋人の君だね」

 

ユエの肩を抱き、頭にキスを落とした。

瞬間、僕の背中に衝撃が来て、僕は前のめりになる。

後ろを振り返ると、腕を組んで仁王立ちしている、不機嫌そうなシャナが立っていた。

 

「グンジョウ、約束忘れてないよね?」

「わかってます、すみませんでした姉君! 僕らの穴埋めしてくれてありがとうございました!!」

 

よし、とシャナは頷き、手を差し出してくる。

僕は姉の手に、自分が使ってたブレスレットを乗せた。

ユエも自分のをシャナに渡す。

今度はシンク達の番なので、弟達に渡さなければならない為だった。

 

「シンク達んとこ行くよ」

「はい、何処へなりともお供させていただきます!!」

 

ユエが呆れた目でこちらを見てくるが、怒らせたシャナはとても怖いんだよ。

いつも優しいし、ボンヤリしてるし、アホの子だけど、キレたら流石の僕でも太刀打ち出来ないんだから。

 

「誰がアホの子だ」

「すみません、姉君…」

 

ギロリとシャナから睨まれ、僕は素直に謝る。

姉について控え室に行くと、早めの昼食を取っている三人がいた。

 

「よ、グンジョウ。客どうだった?」

「…ノーコメント」

 

椅子に座り、手を挙げて感想を聞いてくるシンクに、僕は首を横に振る。

それどころじゃなかったのだから。

あのままでも良かった、なんて思ってしまうなんてどうかしている。

 

僕の様子が少しおかしくて、シンクは僕からシャナに顔を向けた。

 

「何あったの?」

 

弟は僕に指を差し、シャナに尋ねる。

 

「ユエちゃんの顔が格好良過ぎて、グンジョウが女に落ちた」

「シャナぁっ?! ちょっ、言い方もうちょっとオブラートに包んでくんない?! ねぇ、ちょっと姉さんっ?! 聞いてる?!」

 

シャナの肩を掴み、軽く揺さぶった。

姉の言葉を聞き、弟が引いた顔をする。

そんな目で僕を見るな!!

 

「ユエ、体とかどうだった?」

「ん? 少し背が伸びたくらいであんまり体格変わんなかったかな。胸は無くなったけど、多分今これ起動しても、制服破れないと思う」

 

ユタカからの問いに、ユエはシャナからブレスレットをもらって起動する。

またあの姿になったのだが、今度は顔を見てもドキリともせず、普通に見られた。

やっぱり、心が女性の体に引っ張られた結果かと、少しだけ安堵する。

 

「アオ、恰好良い?」

「うん、普通に顔が良いねユエ」

 

僕の反応に、ユエもちょっと安心したような表情を浮かべた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。