また僕がぼーっと彼女の顔を見始めたら、流石に心配になるだろう。
「てか、これが生前のカヅキおばさんの顔なのか…」
マジマジとユエを見る。
母様の言を信じるならばだけど、母様があの場で嘘つく必要性ないしな。
今躯体のはずだから、父様の嫉妬心煽ってとかはないだろうし。
「お前らこの後どうすんの?」
昼食をとり終わったシンクが尋ねてくる。
ユエとのデートは明日にするとして。
「途中で抜けちゃったから、シャナのお供…」
「同じく」
お前もかよという目を、シンクはユエに向ける。
ユタカも、少し驚いて彼女を見ていた。
「だって! アオめちゃくちゃ可愛かったんだもん!! アオの気持ちよく分かったよ!! あんなの、可愛すぎて抱き潰したくもなるよねぇ?!」
ブレスレットを外して元の姿に戻ったユエが、そう叫ぶ。
それ以上言わせたくなくて、僕は後ろから彼女の口を塞いだ。
「このバカップルが…」
「シンクには言われたくないと思うよ、グンちゃんは」
ユタカが僕の気持ちを代弁してくれる。
この中で言っても良いのは、シャナとツルギだけだと、僕は思っているのだ。
僕やシンクみたいに、相手を貪りたいという欲ではなく、ゆっくりとお互いに恋を育んでいくタイプの二人だからこそ、バカップルと罵られても仕方ないな、なんて思ってしまう。
「ツルギ君、頑張ってね。後で行くから」
「…殿下と同じように、あまり…君に、見られたくないんだが…わかった…見ててくれシャナ。俺、頑張るから…」
ツルギの手を握り、ニコリと笑うシャナへ、何かの覚悟を決めた彼が頷いた。
何の覚悟かは知らないが。
三人にブレスレットを渡し、僕とユエはシャナのお供をする為に、控え室から出た。
◆◆◆
外にも結構出し物が出ていて、人がごった返している。
シャナが迷子になりそうだったので、僕は姉と手を繋いでいた。
ユエは僕の腕に抱きついて、指を絡めている。
実質、両手に花の状態に陥っていた。
片方姉だけど。
「グンジョウ! 射的ある!」
「え? あー、本当だ。何? 何か欲しいのあるの?」
あんまり見て回らない方が良いと思うんだけどなぁ。
明日ツルギとデートするだろうし。
なんて、今の姉に水を差す事はしない。
姉弟で回っても、恋人で回っても楽しめるのがシャナだから。
「あのぬいぐるみ!」
シャナが指差した先にあったぬいぐるみを見て、僕は思わず言ってしまう。
「いやデカすぎ!! 何発必要だろ…あ、景品じゃない?」
射的担当の生徒が違うと否定してくれたので、僕は少し安堵した。
あれ落とすとしたら一体いくら金かければ良いかわからないし、何ならツルギにねだって買ってもらった方が安上がりだろう。
「アオ、私あのキーホルダーが良い」
「ん? うん、良いよ」
ユエが僕の制服の袖を引っ張り、射的の景品の中にあったやつを指差す。
あれなら落とせそうだと思ったので、僕は担当の生徒に金を渡し、銃を貰った。
確か上手い奴が、こうやってたよな…。
そいつの姿勢を思い出し、景品を狙う。
引き金を引き、銃からコルクが飛び出した。
ユエが欲しいと言ってたキーホルダーに当たり、落ちる。
「はい、ユエ」
「ありがとう、アオ」
微笑む彼女に、僕も笑いかけた。
ユエが欲しいと言っていたキーホルダーは写真が入れられるタイプのもので、多分僕とのを入れるつもりなんだろうなと察してしまう。
嬉しくもあり、恥ずかしくもあるが、素直にユエが愛おしいと思った。
「これはあたし、お邪魔虫か?」
「そう思ってないから。シャナ、お菓子でいい? まだ弾余ってるし」
うん、と姉が頷いたので、ユエの分もと思い、狙ったやつは全部落とす。
それを見て、ユエは驚いていた。
「アオ、射撃も上手かったんだ…」
「ただの見様見真似だよ。射撃上手かった奴がいてさ。言ったろ、劣化コピーだって。はい、こっちがシャナの。こっちはユエね」
景品を渡されたので、姉と彼女にお菓子を渡していく。
二人とも収納魔法を覚えてるから、手荷物にならないだろうし。
また二人と連れ立って歩く。
シャナは食欲旺盛なので、たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、アメリカンドック、串焼きと、全出店を制覇する勢いで買って食べていった。
「シャナ、魔力の保有量が多いから、あれだけ食べても腹すくんだよなぁ…」
僕は先程買った、ローリングポテトを食べながら、前を歩くシャナを眺める。
少し人が空いてきたな、と思っていたら、体育館で劇やら何やらの出し物があるらしく、去年、一昨年は僕らもそうだったな、なんて懐かしく思ってしまった。
「私もうお腹いっぱいだよ…」
「珍しい。体調悪いの?」
自分のお腹をさすりながら、ユエがそう言う。
いつもなら、もっと食べてるよなぁ、とか思ったからだ。
「あんまり体重増やすとドレス入らなくなるし、身動き取りづらくなるから」
「え、またそれ? 何処が太ってるって言うんだよ、ユエ」
彼女の前に行き、身体強化を使わず持ち上げる。
簡単にヒョイと持ち上がり、僕は呆れた目を彼女に向けた。