my way of life   作:桜舞

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327話『簡単なもの』

何事という顔をした彼女に事情を話した。

 

今日、シャナは学園祭で夕飯のご飯を買うつもりでいたらしい。

それがあの騒動で、すっかり買うのを忘れてしまっていたというのだ。

あと、ツルギとの話し合いが思いの他長引いてしまったのも、一因かもしれない。

 

冷蔵庫の中に作り置きとかをしないタイプの人間なので、あるのは調味料とかいつも自分が飲む用のミルクしか置いていないわけだ。

 

「シャナちゃん…っ!! で、その肝心のシャナちゃんは?」

「ツルギのとこで食べさせてもらうから、お前はユエんとこ行ってこいってさ…」

 

ユエから魔力波が立ち上る。

これは相当お怒りだ。

僕知ーらね、と。

 

「ちょっと怒鳴り込んでくる」

「まぁまぁ、ユエ。食材があったら、グンちゃん自分で自炊出来る子なんだから。シャナちゃんが抜けてるのいつもの事でしょ? 仕方ないって。グンちゃん、朝の余り物で悪いんだけど食べてって」

 

ツルギ達の部屋に突撃しようとしたユエの肩を掴み、ユタカが宥めてくる。

確かに、最近シャナに習って簡単な物なら作れるようにはなってきているが、それでもまさか冷蔵庫の中が空っぽなんて思わなかったわけで。

 

「お風呂も入ってく?」

「いや、流石にそこまでは…」

 

部屋に通され、ソファーに座らせられる。

ちょうど夕飯時だったらしく、味噌汁のいい匂いがした。

 

他の人の部屋、と言っても男友達の部屋にしか入った事がないし、僕らが特例なだけであって、本来なら同性同士のルームメイトになる。

ユエ達の部屋にも、玄関まではお邪魔した事があったが、中まで入った事が無かった。

 

備え付けの棚に、ぬいぐるみやファンシーなものが置いてあって、女の子の部屋だなぁ、なんて思ってしまう。

 

「交代で作ってるの?」

 

キッチンに立ってるユタカに尋ねた。

そうだよ、と彼女は炊飯器から米をよそいながら答えてくれる。

 

「今日は私の番だったの。といっても、お味噌汁しか今日は作ってないけど。おかずは朝ユエが作ってくれたやつの残り。はい、グンちゃん。お米」

「ありがとう。何作ったの、ユエ?」

 

ユタカの隣で味噌汁を注いでいたユエは、簡単なものと僕の問いに答えた。

 

「簡単?」

 

買ってきた納豆とか、ソーセージとか?

前世で夕陽が、面倒臭いからと冷蔵庫から納豆を取り出して、ソーセージも焼くのが面倒だからとレンチンしてたっけな。

いや、僕も実際それで充分かな、なんて思う時があるし。

作ったって言ったから、ソーセージと納豆はないだろうけど。

 

「寝ぼけて、グンちゃんに持ってくお弁当用のおかず作っちゃったんだって。今日学園祭だった、って頭抱えてたから、それ夕飯のおかずにしようよって話してて」

「ちょっと、ユタカ! バラさないでよ!」

 

ユタカの言葉に、ユエが慌てる。

 

それはちょっと楽しみかも。

ユエが作ってきてくれる物、結構美味しいし。

頻度が多かったから、食費代として僕のお小遣いから出してはいるんだけど。

 

皿に乗せられてテーブルに置かれた物は、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、ソーセージといった、お弁当のおかずでは定番のラインナップだった。

普通に美味しそうである。

 

ユエとユタカが着席したので、いただきますと僕らは両手を合わせた。

まずは唐揚げに箸を伸ばし、食べる。

ちょっとした辛味があったので、ユエに尋ねた。

 

「ユエ、唐揚げちょっと辛いけど、何か入れた?」

「ん? うん。付け込む時に黒胡椒を引いたものをちょっと。辛い? 味変?」

 

少し不安そうにしている彼女へ、僕は首を横に振る事で否定する。

 

「ううん。少しスパイシーだなって思って。いつもの君の唐揚げ、生姜が効いてるじゃない? 今回のは少し辛かったから、味変えたのかなって思っただけ。美味しいよ」

 

僕がそう言うと、ユエは少し照れたようで目を伏せた。

ユタカはそんな僕らの様子を、ニコニコしながら眺めている。

高等部一年の頃には考えられなかった光景だな、なんて思った。

 

一年の頃は、ユエもユタカも、僕に執着して追いかけ回してきて。

あの頃はツェリもいたっけ。

 

それが今じゃ、ユエは僕の恋人だし、ユタカにはシンクっていう恋人が出来たし、シャナにも春が来て、お付き合いしてくれてるツルギって奴も出来たし。

ツェリは国外追放になってしまったけど、元気に過ごしてくれてるし。

 

「なんか、遠い所まで来たって感じするなぁ…」

 

感慨深げに呟くと、ユタカが怪訝そうな顔で僕を見てきた。

 

「グンちゃん、いきなりどうしたの…?」

「あー、ユタカ? 放っておいて良いよ。たまにジジくさい事言うんだから、アオは」

 

味噌汁を飲みながら、ユエは自分の姉にそう言う。

 

確かにそうですけども。

そんな僕も好きなんだろ、君は。

 

「当たり前じゃん」

「なら良いだろ」

 

僕の思考を読んだユエに、僕も味噌汁を飲みながら言った。

僕らの様子を見て、ユタカがクスクス笑う。

 

「なんか、熟年夫婦みたい。二人とも」

「「なっ?!」」

 

ユタカの言葉に、僕とユエは同時に声を出した。

ほら、とまた彼女が笑う。

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