イフリート2の月。
この月は妹であるリーゼの誕生月であるが、先月恋人になったユエと、その姉のユタカの誕生月でもある。
彼女達の誕生日の日付は違うが、僕は学園都市のショップで少し悩んでいた。
リーゼの誕生日プレゼントは、シャナとアンナからリサーチしてもう購入済み。
ユタカも、無難なのをあげれば大丈夫だと思う。
問題は、ユエだ。
お揃いの物あげたら、重いとか引かれないだろうか…。
これがユタカなら単純思考で、お揃いやったー! なんて喜んでる姿が想像出来るが、ユエはまた違う。
サプライズではなく、本人を連れて来れば問題はないのだが、それは情緒に欠ける。
あと、僕一人で出歩いているのは、ユエの妃教育にユタカもついていってるからだ。
買い物行くって話したら、一人で行ってと言ってユエと喧嘩になっていたっけ。
多分王家の影とか、なんかついてきてるんだろうけど、誰だか分かんないし、アドバイス聞こうにも、なぁ…。
僕は少し、肩を落とす。
名付けのセンスも壊滅的、恋人にあげる誕生日プレゼントを選ぶセンスもない。
僕の良いとこって、顔と頭の良さだけじゃないのかなー…。
なんて、軽く落ち込む。
「グ、グンジョウ君? ど、どうしたの? 落ち、落ち込んでる…?」
「ツェリ…」
少し落ち込んでいる所を、横から声をかけられ僕はそちらを振り向いた。
いつも通りのオレンジの髪に、オフショルダーの白い服、黒い膝丈スカートにブーツと、ツェリによく似合う服装で、肩掛けのバッグを少し握りしめ僕を心配そうに見ている。
ツェリも買い物に来ていたのか。
というか情けない姿見られたな…まぁ、幼馴染だから別に良いか。
「うん、ちょっとね…」
「は、話、き、聞こうか?」
それは助かるが、いつも一緒にいるエミル君はどうしたのだろうか?
「エミル君は?」
「お、お兄ちゃん、彼女と、デ、デート中…」
まぁ、夏季休暇だしな。
僕も出来ればユエとデートしたいけど、僕のために今頑張ってくれている彼女に無理は言いたくない。
後でお菓子でも差し入れして、休憩が出来るようならユエと一緒に軽く庭でも散歩しようかな。
「そっか。ツェリ、女の子って何を贈られたら喜ぶ?」
「え? う、うーん…その子の、趣味にも、よ、よると思うよ? 装飾品が、す、好きな子もいるし、食べ物が好き、って子も、いるし…」
ユエの趣味か…。
あんまり装飾品を付けるような子では無かった気がする。
というか、異性として見始めたの先月からだから、今まで上辺だけしかユエの事を見ていなかった。
だから、彼女が何を好きで何を嫌いかなんて、本当に気にした事が無かったのだ。
「……ねぇ、ツェリ。ユエと少しだけ仲良かったよね? 彼女、何が好きかとか言ってなかった?」
「ユ、ユエちゃん? うーん…? グンジョウ君が好きとかしか、い、言ってなかった気がする」
ですよね。
ユタカと同様に、ユエも僕に対してそう言っていたのは、分かっているんだよ。
だから、何を贈ろうかって悩んでるのに。
邪魔にならないなら、ネックレスとか…指輪は流石に重い、よなぁ…。
「あの、グンジョウ君…? なんでユエちゃん…?」
「んー…? 先月、ユエと恋人同士になって、婚約したから」
少し息を呑む声が聞こえ、意識が装飾品からツェリの方へ向く。
彼女の方を見ると口を手で押さえ、表情は驚愕に染まっている。
「え? ツェリ? 何か驚くような事、あった?」
僕も少し驚いて、彼女に尋ねた。
だがツェリは首を横に振り、ごめんなさい、と謝って僕に背を向け走り去っていく。
「…? 何か、おかしな事言ったかな…」
まぁ、それよりはユエに贈るものを考えなければ。
◆◆◆
何時間か粘ってはみたがやはりいい案が思いつかなくて、僕はトボトボと城に帰ってくる。
ユエに聞くのはアウトだし…やっぱりシャナか…もしくはデートしてる最中のエミル君か…。
そう思っていると、目の前の扉が思い切り開かれて、後数歩歩いていたらぶつかっていた所だった。
「無理ーっ! なんでこんな事しなきゃいけないの?! 頭おかしくない?!」
飛び出てきたのはユタカのようで、若干泣きが入っているようだ。
という事は、ユエここでレッスンしてるのか。
ユタカは僕を見つけると、抱きついてくる。
「グンちゃん! 妃教育って、なんであんな厳しいの?! 頭おかしいよ!」
「いや、僕に言われても…あとユタカ、離れて。僕には、ユエがいるんだから」
彼女の肩に手をかけ、引き剥がす。
嫌だ、なんて言ってはいるが、扉が開いているし、これ絶対ユエも聞いてる状態なのは、火を見るより明らかだ。
ユタカがまた抱きついてこないように、腕で牽制して部屋の中を覗く。
そこにはお祖母様と、本を頭に乗せて落とさないように姿勢を正して、集中しているユエの姿があった。
彼女はこちらを見ずに、真っ直ぐ前を向いている。
「その状態で歩く事は出来るようになったので、次はカーテシーです。落としたら何回でもしますから、そのおつもりで」
「はい、先生」
うわ、お祖母様厳しい。