「いらっしゃいませー! 2名様ですかぁ? お席に案内しますぅ!」
シンクがぶりっ子をかまして、男性客を招き入れる。
昨日と同じくツインテールな髪型だが、服が全く違っていた。
ゴスロリ風な衣装から一転、今日は肩出しのレースたっぷりな、ジャンパースカートと呼ばれる物を着ている。
黒い服に紫のリボンがついた物で、ヘッドドレスも同じ柄だ。
シンクに連れられて席に来た男性客に、僕はニコリと微笑む。
「お兄様方、こちらメニューになります。お好きなものを選んでいただけると嬉しいです。私? 私のお勧めは抹茶ケーキですね。私、実は甘い物苦手なんです。結構大人なんですよ?」
微笑みながら首を傾げる僕の今の服装は、白いブラウスに、青緑色のスカート、肩にかけるタイプの黒いコートに、室内だけど帽子を被っている。
ワンポイントでリボンを愛元に付けていて、清楚な雰囲気を出していた。
所謂、お嬢様コーデというやつらしい。
昨日と同じくロングのウィッグをつけ、微笑む僕のお勧めを男性客は頼む。
僕やシンクが女性になれば、それはもう母様の血が濃く出るものだから、超絶可愛い美少女になるわけで。
鼻の下を伸ばしまくっている男性客に、内心で舌を出す。
お前らが鼻の下伸ばしてる相手は男だっつの、馬鹿め。
「アオ、コウ、あっちのテーブルのオーダー取ってきてくれ」
「「はい、お兄様」」
シャナが僕とシンクに指示を出した。
客の入りがとても良いようで、僕はほくそ笑む。
ルトルに提示した条件。
それは、昨日の売り上げを午前で越えられたら、午後は僕らを解放するというものだった。
確かに成功するかは五分五分だったが、ルトルは首を縦に振ってくれた。
むしろ逆に謝られたので、僕達が何か困った事があったのなら手助けするよう、伝えておく。
ルトルの家って、衣装とか色んなのあるんだよなぁ。
元々仕立て屋の一家だったって話だし。
僕とユエの結婚式の時、ユエのウェディングドレス仕立ててもらおうかな。
結構豪華なやつ。
それでチャラにしてやろう。
チラリとユエを見る。
昨日とは違い、今日はちゃんと顔を出して接客している彼女を見て、若干複雑な気持ちになった。
白いワイシャツと、ベルト付きの黒のスキニーパンツ。
胸元を飾るのは、僕の色である蒼。
シルバーのアクセサリーで装飾されたものを、ユエは身につけている。
黒髪を横に流し、青色のリボンで髪を結っていた。
「お兄さん、青色好きなの?」
「うん、好き。青って言葉も良いよね。僕、バタフライピーっていうハーブティーも好きでさ。お姉さん達、試しに飲んでみない?」
飲むー! と女性客が盛り上がる。
相手はユエと同性なのだから、別に複雑な気持ちになる事はないのだが、ちょっと引っ張られているのか、僕だけを見てて欲しいなぁ、なんて思ってしまう。
「アオ。動き止まってるぞ。お前が言い出したんだから、ちゃんとやれ」
「あ…ごめんなさい、お兄様」
メニュー表で軽く小突かれ、僕は注意してきたシャナに謝った。
シャナの今日の衣装は、白いロングジャケットを着て、長い髪を三つ編みにし、黒いリボンで留めている。
中に着ているのは黒い軍服で、ロングジャケットと同じ色の軍帽を被っていた。
乗馬鞭を携えれば、軍部所属の鬼上官風だ。
「アオ、悪い。オーダー向こうに持ってってくれないか?」
「はい、承りました。ユタ、お客様はどうです?」
自分が取ってきたオーダーを渡してきたユタカへ、僕は尋ねる。
凄い量なんだけど、これ厨房捌き切れるかな?
してもらわないと困るんだけど。
「話しかけてくれる女性が多くて嬉しいね。私のお願いも聞いてもらえて…うん、みんな好きだよ」
ユタカはそう言い、自分を見つめていた女性客に手を振る。
きゃー! と歓声が上がり、さながらホストのようだ。
シャナのファンも増えそうだが、ユタカのファンも増えてるなこりゃ。
シンクを見ると全く気にせず呼び込みをしているので、精神年齢高い組すげぇ、と感心する。
ユタカが着ているのは、紺色のアシンメトリーのロングジャケットと、同色の男性物のチャイナ服だった。
これで丸い縁のサングラスを付けたら、街の片隅で薬草を売っている胡散臭い薬屋風である。
ユエとは反対側で髪を結っており、赤色のリボンを付けていた。
僕はユタカから受け取ったオーダー表を持って、厨房へ行く。
本名で呼び合うわけにもいかず、僕らはあだ名で呼び合おうという話になっていた。
僕とシンクは名前から取って、
ユタカとユエは、ユタとユゥユゥ。
シャナにいたっては、シャーと何とも簡単な呼び名になっている。
厨房に着くと、僕と同じくオーダーを置きにきていたツルギに会う。
「殿下…シャナは大丈夫、ですか?」
シャナは僕らにオーダーを渡して、度々教室の外に出していた。
多分、奇異の目やら何やらで僕らに負荷がかかるのを、シャナは心配しているのだろう。
本当に、僕の姉は優しい人だ。