「大丈夫だし、流石長女だよ。僕より指示が的確なんだもの。あぁいう場だと、シャナの方が強いからね。シャナが男子だったなら、頭の方はともかく良い王になっていたかもしれないけど」
頭が残念な事以外はと言うと、ツルギはクスリと笑った。
ツルギの衣装は今回も着物だったけれど、紫色の物になっている。
昨日とは違う金色のリボンをつけ、凛とした姿勢で立っていた。
「戻ります。シャナも…一度外に出さないと。疲れて寝られては…困ります、から」
「それもそうだね。みんな、頑張れ。多分午後は暇になるだろうから」
厨房の生徒に声をかけると、忙しすぎると抗議されたので、文句はルトルに言えと返してやる。
「アオ、僕ちょっと水飲んでくる」
戻って暫くして、ユエが僕にそう言ってきた。
確かに水も飲めないほどの忙しさだったので、喉も渇くだろう。
「行ってらっしゃい、ユゥユゥ。後もうちょっとで午前の部が終わるらしいから、そのままゆっくりしてても良いよ」
僕は彼女に微笑みながら言う。
売り上げも昨日以上だと、オーダーを置きに行った時にルトルから言われたから、これで午後はユエとゆっくりデート出来るぞー!!
なんて内心でガッツポーズをしていたら、ユエが僕の肩に手を置き、耳元で囁いた。
「この状態でデートしない? 僕、女になったアオと一回デートして見たかったんだよね」
「…へ?」
返事は後ででいーよ、と彼女は僕から離れ、後ろ手に手を振り教室を出ていく。
囁かれた耳が熱くなって、僕はそこを押さえた。
「な……は……?」
「で…アオ、あっちのテーブル…オーダーを…」
殿下と僕を呼びそうになったツルギが、僕の肩を軽く叩いてくる。
それで少し正気に戻った僕は、彼に笑いかけた。
「ごめんなさい、ルキ。私も少し喉が乾いてしまって…コウ! ちょっと代わってもらえないかしら?」
ツルギの名前を文字ったルキという名で彼を呼び、僕はシンクへ言う。
「はぁい、お姉様! いってらっしゃぁい…きゃ! お兄さん、お触りはNGですよぉ?」
僕に返事した直後男性客に背中を触られ、シンクは少し頬を膨らませて客へ注意する。
確かに背中は開いているデザインではあるけど、あの客…後でシンクに、こっそり報復されるのは目に見えてるな。
南無三。
僕はユエの後を追う為に教室から出る。
厨房を覗き込んだがいなかったので、何処に行ったと辺りを見回した。
丁度別クラスの所で飲み物を買っている彼女を発見し、僕は声をかける。
「ユエ!」
「あ、アオ。お疲れー。出てきて大丈夫?」
片手を挙げ、ユエが僕に問いかけてきた。
だが、僕はそれどころではない。
「ユエ、なんで…?!」
「あー…ここでする話じゃないから、あっち行こっか」
彼女は僕の手を握り、歩き出す。
いつもはユエの手の方が小さいのに、今は逆に僕の手が小さくなっている。
これが女性なんだな、なんて頭の片隅で思った。
空き教室に連れていかれ、ユエは扉を施錠する。
「ユエ?」
「アオさ。私に隠してる事あるでしょ?」
彼女は窓枠に腰掛け、僕を見つめた。
真剣な顔で言われ、本当に分からず首を傾げる。
「隠し事?」
「へー…すっとぼけるんだぁ…」
ユエの目が据わってきて、マジでわかんなかった僕は慌てた。
「いや、何の事?! 本気で分かんないんだけど?!」
「シャナちゃんと昨日一緒にお風呂入ったでしょ、アオ!! 分かってんだからね?!」
なんでそれを?!
冷や汗を流し始めた僕に、ユエはドスが聞いた声で僕に詰め寄る。
「なんでって思ったでしょ? 自分からは絶対バレないとでも思ったでしょ? 甘いね、アオ。シャナちゃんからバレる事考慮に入れてないなんて」
「シャナ?! あいつ…っ!! 僕より魔法防御力あるくせにガバガバじゃねぇか!!」
僕は頭を抱え蹲った。
自分と違って、ガード出来ていると思っていたのだが、そうでもなかったようだ。
「姉弟だけど、やっていい事と悪い事くらい、アオなら分かってるはずだよね? ん? 彼女がいるのに、お姉ちゃんとお風呂入るとか…どういう神経してるのかなぁ? アオって重度のシスコンだったっけ? 桃華の事言える?」
仁王立ちしているユエの前に正座をし、僕は項垂れる。
これ、本当にヤバいやつだ。
誠心誠意謝んないと、婚約者のままずっと婚姻してもらえなくなる…っ!!
「…はい、すみません…僕が悪かったです…多分シスコンじゃなくて、ファミコンだとは思うんだけど………でも言い訳させてもらえるなら、一緒に入るって言い始めたのシャナの方で…っ!!」
「言い訳すんなクズ」
すみません、と僕はすぐさま土下座する。
ユエが本気で怒ってるよぉ…シャナ、責任取ってよぉ…っ!!
内心シクシク泣き始めた僕にユエは、許して欲しい? と聞いてきた。
「はい…」
「じゃあ逆転したままデートしようよ。それで少しは許してあげる」
少しなの?!
そう思って顔を上げると、無表情で僕を見つめるユエと目が合う。