「あぁ、紹介が遅れたね。アキカ・アイリス・ブリリアント叔母様。前王であるライラント・ミラビリス・ブリリアントお祖父様と、前王妃であるベアトリーチェ・ララノア・ブリリアント様の第一子で、父様の異母妹だよ。クォーターエルフでね、エルフの里の族長をなさってるんだ」
そう僕が言うと、アキカ叔母様は肩を竦めた。
「別にしたくは無いんだけど…周りが、外の世界を知ってるのはお前だけなんだから…交渉ごととか上手いだろうって…。私は別に、静かに暮らせれば良いだけだったんだけど…物資とかの問題もあってね。そこは、ハルトがたまにここへ来て…物々交換で乗り切ってるって、感じかな…」
「ハルト?」
知らない名前に、ユタカが首を傾げる。
僕は苦笑しつつ説明した。
「ハルト・クフェア・ブリリアント叔父様。アキカ叔母様の実弟でね、旅をしながら生活してるんだ。僕も小さい頃に一回会ったきりで。お元気でしたか? ハルト叔父様」
「今ちょうど、エルフの里に来てるよ。奥さんが身重でね…ここで出産させたいんだって。本当物好き…王都の病院行けばいいのに。兄様に言えば、無料で出産させてくれるはずだし」
お金ないからここに来たって話なのか、それ…?
そんなまさか、と言いたいが、アキカ叔母様もハルト叔父様も、王族というしがらみが嫌になって出て行った人達だ。
アキカ叔母様は、実母であるベアトリーチェ様の故郷に身を寄せ、ハルト叔父様もある程度成長するまではここにいたらしいと、母様から聞いている。
「というか、奥さんいたんですね…」
「元専属護衛の人。二代目らしいけど…ハルトより年上なんだよね。何の因果だろうね、全く…と、立ち話はこれくらいにして、行こうか…」
はぁ、とアキカ叔母様はため息をつきつつ、僕らをエルフの里まで誘導してくれた。
門番が立っていたが、アキカ叔母様が手を挙げると武器を下ろしてくれる。
エルフの里に足を踏み入れると、そこで暮らす人達が一斉にこちらを見た。
特徴的な尖った耳、色素が薄い肌、金や銀といった髪を持つ人々。
上を見上げると、木々の間に家があった。
あれなんて言ったっけ…。
夕陽の知識が乏しすぎて、見た事あるのに名前が出てこない。
「みんな、物珍しいのは分かるけど、そんなに見ないで。視線が不躾すぎる。君達だって、見られたら嫌でしょ? ほら、散った散った」
アキカ叔母様が少し声を張り上げ、周りのエルフに言う。
その声を聞き、僕らを見ていたエルフ達は方々に散っていった。
「ごめんね…客が来るのも珍しいんだけど…人族って、エルフ達にとっては…あまりいい印象が無いんだ。歴史で習ったかもしれないけど」
「分かってます。すみません、叔母様」
僕らがここに来る事になったのも、魔王の遺物が原因だし。
本来なら、エルフの里に僕らは入れない。
人族がエルフ族に行った虐殺が原因でもあるし、何よりエルフの里は閉鎖的だ。
アキカ叔母様が、ここに慣れるのにも時間がかかったと、少し前にいらっしゃった時に言っていた。
閉鎖的に加えて、他人に対して冷たいからって。
いくら自分がベアトリーチェ様の子供だからと、そこは変わらなかったって愚痴ってたっけ。
父様が事前に、アキカ叔母様に連絡を取ってくれていたからこそ、僕らはすんなり里に入れるのだ。
大きな木の上に作られた家へ、僕らは案内される。
そこが叔母様の家みたいで、しっかりした作りの階段を登った。
「こういう家ってなんて言ったっけ、ユエ?」
「え? こういう家って…ツリーハウスの事? アオ、見た事なかったっけ?」
ユエに尋ねると、少し驚いた口調で言われる。
うん、と僕は素直に頷いた。
別に変なプライドを出す気はない。
知らない事は知らないって、ちゃんと言わなければダメだと、母様から教えられているから。
「夕陽の知識の中にもなくてね。本当に阿呆だな、あいつ…」
「アホで悪かったな」
僕の後方で階段を登っていたシンクが、少し不機嫌そうに言う。
後ろを振り返れば、ムスッとした弟と目が合った。
「なんでお前がそうなるんだよ」
「兄ちゃんがアホだって言ったからだろ」
喧嘩はやめろと、シャナから注意される。
シンクの事ではなく、僕の前世の夕陽に対して言ったのだが。
アキカ叔母様が扉を開けて中に入る。
続いて僕らも入ると、男性の声が聞こえた。
「お帰り、姉さん。あれ? そこにいるの、グンジョウ? シャナもいるじゃん! うわー! 大きくなったなぁ!」
「ハルト叔父様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
扉の先はすぐにリビングになっていたようで、そこでお茶を飲んでいたらしい叔父様が、僕らを見て感嘆の声を上げる。
久しぶりー! と言いながら、僕とシャナを抱きしめてきた。
「ん? グンジョウとそっくりなこの子、誰?」
「義姉様の子。あとの三人は知らない」
そういえばユエ達の紹介してなかったなと、僕は二人に三人の紹介とシンクの説明をする。
ふんふん聞いていたハルト叔父様だったが、物珍しげにシンクを見た。