my way of life   作:桜舞

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339話『大精霊に対して不敬』

「年上って、どれくらい?」

 

ユエの疑問に、僕は記憶を思い出す為少し首を捻った。

 

「えーと、ユキヤ叔父様が16の時、オリヴィエ叔母様が21だから…5歳差? 誤差の範囲内だとは思うんだけど、叔母様平民だったから…」

「父様が王太子だった時、平民は王族と結婚出来ないって法律があったんだよ」

 

シャナがフォローを入れてくれ、ツルギとユタカ、ユエがへー、と声を上げる。

弟だけがそれを黙って聞いていたが。

シンクの世界では、今でもその法が適用されているのだろうか?

 

「じゃあ、今の法律はユキヤ様の為に制定されたって事?」

「多分ね。あとは、僕らや子孫の為じゃないのかなって思ってる。好きな人の身分が低くて婚姻出来ない、なんてただの悲恋でしかないだろ?」

 

それこそ国を出奔してでも、という発想になるだろう。

有能な人材がそれだけの為にいなくなるのは、何とも頭の痛い話ではある。

 

そんな話をしていたら、精霊の祠に辿り着いた。

窪地の真ん中に、ぽっかりと穴を開けたような洞窟がある。

そこが精霊の祠だ。

 

「うわー、大きい穴だー」

「ユタカ…小さい頃のシャナと同じ感想言ってる…」

 

ここに初めて来た時、姉はあの祠を見て同じ事を言った。

あれは僕らが5歳になる前だったか。

 

僕の発言を聞き、シャナがニヤリと笑った。

 

「グンジョウは、怖い行きたくないって母様にしがみついてたよね。今じゃこんなに図体がデカくなって」

「言うな」

 

今とは違い、確かに小さい時の僕は気弱で甘えん坊だったよ。

ずっと母様にベッタリで、いない時は姉にしがみついていたさ。

好き嫌いも多かったし、食べたくないってわがままを言ったりもした。

 

こんな性格になったのは、大きくなって王太子の自覚が出てきた辺りだろうか。

自分以外にはこなせないのだから、頑張らなくてはと、そう思ったからかもしれない。

 

「…可愛い…」

「今は読まないで欲しかったかな…」

 

ポツリとそう言ったユエの手を取り、斜面を降りていく。

僕らに続いて姉達も降りてきたので、そのまま精霊の祠に向かった。

 

中に入ると暗く、シャナが光魔法で辺りを照らしてくれる。

 

「ここって深いのかな?」

 

ユタカが誰にともなく、疑問を口にした。

 

「深い、のかな? どんどん下まで降ってはいくけど、ここに来たの小さい頃以来なんだよね。シャナ、深度どれくらい?」

 

僕が先頭をいくシャナに尋ねると、分かるわけないじゃんと答えが返ってくる。

とりあえず、ミラ様の所までは一本道だから迷う事はないだろうけど。

 

と、前を歩いていたシャナが足を止める。

一体どうしたのかと、後方にいた僕らも歩みを止めた。

 

「シャナ?」

「…シルフ! いるのわかってんだからね! イタズラしようとしてるでしょ?! 母様に言いつけるからね?!」

 

何もない空中に向かって、シャナは叫ぶ。

フワッと緑の光が出たかと思えば、それは人型になり、小さい男の子の形をとった。

 

〈ちぇっ! 愛し子は気配に敏感だなぁ〉

 

少し不満そうに頬を膨らませ、大精霊シルフが姿を現す。

威圧感を感じるがそれを物ともせず、シャナは彼に対して怒鳴った。

 

「空気が淀んでたらそりゃ気付くっての! ここら辺はあんたの領域なんだから、澄んでなきゃおかしいのに。そういう時は絶対、イタズラしようとしてる時だってのは、わかってるんだからね!」

 

大精霊にあんな言い方出来るの、うちの姉だけだろうなぁ。

イフリートの時も思ったけど。

あと母様に言いつけてどうするんだ、シャナ。

いくら昔、母様がシルフに勝った事があるからって、今も勝てるとは限らないだろうに。

 

〈ちぇー…〉

 

若干拗ねるシルフへ、姉は指を差した。

 

「シルフ、あんた暇でしょ? あたし達をミラ様の所まで運んでよ」

「シャナ! いくら何でも大精霊に対して不敬過ぎるよ?!」

 

姉の手を握り、僕は慌てる。

精霊の愛し子とはいえ、やって良い事と悪い事くらいあるだろう。

あと、精霊だからといって人に指を差すな。

行儀が悪いと、母様から怒られるぞお前。

 

〈もっと言ってやってくれよ、愛し子の弟。大体、愛し子は僕らの事なんだかんだと、簡単に扱いすぎ〉

「簡単にって…あたしは、精霊のみんなを頼りにしてるからお願いしてるだけだし…嫌なら来なくて良いんだよ? 別に、無視してくれても良いのに…」

 

シルフの言い分に、シャナが少ししょんぼりする。

 

無視が出来るなら、シルフだってするだろう。

しかし、シャナは精霊の愛し子。

精霊に愛された存在。

シャナが望めば、精霊は手を貸さざるを得ないのだ。

 

それが、良い事か悪い事かは関係なく。

 

シンクの世界のシャナはどうだったのだろうかと、落ち込んでしまった姉の頭を撫でながら思考していたら、空中から声が響いてくる。

 

〈あー! シルフが愛し子悲しませてるー!〉

〈愛し子のお願いは、みんな嬉しいのに!〉

〈元素の精霊に言いつけるぞ!〉

 

キラキラと雪の結晶が光に反射し、三体の精霊が現れた。

シャナはそれを見、名前を口にする。

 

「スネグーラチカ…」

 

名前を呼ばれた三体の精霊は、ニコニコしながらシャナの所へ来て、姉を抱きしめた。

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