〈ふむ。別世界のシャナか。どうやってここに来たか分からないが、悪臭が凄いな。二人が並んだとて、すぐに分かる。お前…自分の世界の精霊を殺しまくったな?〉
ミラ様の言葉に、僕らは驚愕で魔王のシャナを更に見つめてしまう。
方法は思いつくが、実行なんてする気が起きない。
精霊は、生物である以前に自然を司り、僕らの生活とは切っても切り離せない者達だ。
精霊を殺した、だって?
そんな事をしたら…。
「…ミラ様、精霊って殺せるの?」
疑問を持ったシャナが、ミラ様に尋ねる。
その疑問に、僕が答えた。
「…シャナ、方法はいくらでもある。精霊は魔力の塊そのものだ。精霊を捕らえて魔力に変換し、兵器とかに使用する、もしくは自分の魔力に変換する為に取り込む…普通は考えない事だけどね」
「ご名答ー!! こっちのグンジョウも頭良いのねぇ。頭ばかり良くなって、本当にくだらない、つまらない性格になってるんでしょうけど」
魔王のシャナが高笑いする。
それに対して僕の方の姉は、自分が嫌っている貴族を相手にする以上に、かなり嫌そうな顔をした。
自分と同じ顔であんな醜悪な事を言うのが気に入らないし、気に食わないのだろうなと察する。
「兵器にするなら、魔石だってあるのに…」
「戦闘するなら自分の魔力を精霊に渡し、代わりに魔法を使ってもらうか、自分の体内の魔力をぶん回して使うか…それが非効率だと、あっちのシャナは思ったんだろ」
なんて事をするのだろうか。
精霊信仰とまではいかないが、精霊と共に生きてきたはずなのに。
精霊を殺して、自分の力にするだなんて。
「…あっちのリューネは…自然界のバランス、滅茶苦茶になってるんだろうな…」
シンクがポツリと呟く。
自分の故郷が酷い事になっていると、悲しくなったんだろう。
手を握りしめ、弟は少し目を伏せていた。
そんな僕らを見て、魔王のシャナは楽しそうに笑っている。
「で、ミラ様。魔王の遺物頂戴?」
手を差し出し魔王の遺物をねだる彼女に、ミラ様は首を横に振った。
〈そちらの世界の私から奪えば良いだろう。あぁ、いや…出来なかったんだな? 私が祠に強固な結界を張り、残った精霊達を守っていると見える。お前でさえも破れなかったのだな。確かに最初は、お前もシャナ同様精霊の愛し子だったんだろう。だが、精霊を殺しまくった事で愛し子ではなくなった。今は、呪い子と言ったところか〉
ミラ様の推測に、魔王のシャナが笑うのを止める。
その様子から、事実なのだろうと理解した。
他の遺物は手に入りはしたのに、彼女がここに来たのがその理由だろう、と。
「…っ!! 精霊を殺すなんて…信っじらんない!! 頭いかれてるとしか思えない!! 精霊はあたし達の隣人であり友達なのに!! 可哀想…嫌だ…っ!! 貴女の世界の精霊達が可哀想だよ!! なんで何とも思わないの?!」
シャナが激昂し、泣きながら叫ぶ。
姉は小さい頃から、精霊と話して遊んでいたりしたからそう思うのだろう。
だが。
「可哀想? 誰が? 精霊が? あんなの、ただの消費物じゃないの。何も思わないわよ。だって、使ってあげてるのだもの。道具に感情移入してどうするの? オカシイのは貴女よ。ねぇ、桃華?」
魔王のシャナの感覚は違う。
自分以外の他人を見下し、両親も臣下も、何もかも自分の駒だと思っている、魔王には。
精霊がいかに大事な存在かなど、理解出来るはずもない。
桃華に繋がれている鎖を引っ張り、魔王のシャナはニヤリと笑った。
「…っ、許さない…っ!! うちの弟達を馬鹿にした事も、あたしを殺そうとした事も…精霊達を殺した事もっ!! アンタだけは絶対に許さない!!」
「許さなかったらどうするの、もう一人のあたし? まぁ、魔王の力を手に入れたあたしと比べたら、貴女なんかミジンコ以下だけれど」
桃華の胸に腕を突き入れ、魔王はその体から銃を取り出す。
「
「っ!!
魔王のシャナが、10の元素魔法を魔銃を介して放ってきた。
姉もそれに対抗したが、半分の元素魔法だけしか扱いきれず、相殺しきれない。
僕とシンクがシャナの前に出て、相殺しきれなかった残りの魔法を、切って捨てる。
それに、魔王のシャナの目が細められた。
「あら、つまらない顔が二つも。つまらないのはつまらないなりに、よく動くのね」
「言ってろクソが! お前なんて姉とは思わねぇ!! 俺の姉は、ソルフィアナ姉様とここにいるシャナ姉ちゃんだけだ!!」
シンクがそう宣言し、二人のシャナが驚いた顔をする。
魔王の方は、自分に逆らう弟に驚いた為だろう。
シャナは、本当にシンクが自分を姉だと思ってくれているのだと、それへ驚いたに違いない。
いくら口で自分が姉だと言っても、弟の心までは分からなかっただろうから。