my way of life   作:桜舞

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343話『無用心すぎますよ、ミラ様?!』

ずっと前から、シンクはシャナの事、本当の姉だと思っていたよ?

態度からみれば分かるだろうに。

 

「…っ! グンジョウ、よくもそんな口が…っ!!」

「俺はグンジョウじゃねぇ、シンクだ!! 足りん頭で覚えとけクソアマ!!」

 

魔王のシャナに中指を突き立て、弟は怒鳴った。

ギリっと、魔王が歯軋りする。

彼女がもう一度10の元素を放とうとした瞬間。

 

〈私の居住区で暴れないでくれ、愛し子達。嫌なものは、外へポイしてしまおうな〉

 

ミラ様がそう言い、魔王と桃華を薄い膜で包んでしまった。

 

「ちょっと?! まだ魔王の遺物貰ってないんだけど?!」

 

魔王は膜を叩きまくるが、びくともしていない。

そんな彼女を睥睨し、ミラ様が冷たい口調で魔王に言う。

 

〈お前に渡すなら、愛し子のシャナに渡すさ。その悪臭は、気分が悪くなる。退場してもらおうか〉

 

ミラ様が手を横に振る。

途端その膜ごと、魔王達がいなくなった。

多分何処かに飛ばされたのだろう。

何処かは分からないが。

 

「…ミラ様、ごめんなさい…別世界のあたしが…」

 

シャナがミラ様に向き直り、頭を下げる。

自分が悪いわけではないのに、姉はポロポロと涙を溢していた。

別世界の精霊達の痛みや苦しみを思い、それを引き起こしたのが別世界とはいえ自分であるのだと、シャナは申し訳なく思ってしまったのだろう。

 

〈お前であって、お前ではない。泣くな、シャナ。お前は何も悪くなどないのだから。お前のその精神性が、私達は大好きなのだよ。私達を想い、慈しみ、隣人として愛してくれている。私達の愛し子。私達は、お前を愛しているよ〉

 

ミラ様は姉を抱きしめ、頭を撫でる。

まるで、母親が娘へそうするように、愛おしげな表情で。

 

「愛し子って、どういう理由で選ばれるんだろう…」

 

ユエがポツリと呟く。

それに対して、僕は首を傾げた。

 

「さぁ…? でも、精霊自身が好きになるような精神とか魂とか…? いや、魂はないか…シャナの前世、宮塚だし。アレが精霊の愛し子になれるわけがないと思うんだよね…」

 

アレの性質を引き継いでしまったのが、魔王のシャナだとは思われるけど。

 

〈そうだ。グンジョウ、おいで〉

 

シャナの頭を撫でつつ、ミラ様が僕へ手招きをする。

僕は素直にミラ様へ近付き、首を傾げた。

 

「何でしょうか、ミラ様」

〈お前へ、更に祝福をあげよう。困難な道にも、光はあるように。お前の行く先が、幸福で満ち溢れるように。一度だけ、我々を呼べる権利をお前にあげよう〉

 

ミラ様がそう言い、僕の額に口付けする。

ブワッと背後からユエの魔力波が放たれたが、またシンクとユタカ、それにツルギも慌てて宥めにかかっていた。

 

「ありがとうございます、ミラ様」

〈構わないさ。お前は愛し子の弟であり、シャルの息子だからな。私にとっても子供みたいなものだ〉

 

わしゃわしゃと頭を撫でられ、そしてミラ様はユエを見る。

 

〈だからそんなに怒りの感情を向けないでくれ、人の子よ。別にグンジョウを私の番いにと望んでいるわけではない。私はシャナもグンジョウも、そしてここにいる人の子達も、等しく愛おしいだけだ〉

「私の名前はユエです!! 人の子とか言わないでもらえます?!」

 

君のその勝ち気、何なの?!

うちの姉同様怖いもの知らず過ぎない?!

相手精霊王だよ?!

何考えてんの君?!

 

若干血の気が引き、僕はミラ様を見上げた。

怒るかと思われたミラ様だが、彼女は楽しそうに笑っている。

 

〈グンジョウ、お前の番いは可愛げがあるな。それにお前を想って行動する胆力もある。うん、ユエだな。覚えたぞ。お前にも祝福を。一度だけ、自分とグンジョウを守れるだけの力を与えよう〉

 

フワリとミラ様はユエの所まで浮遊し、彼女の頬を両手で包み込むと、先程僕にしたように額に口付けた。

ユエは驚き、ミラ様を見つめている。

あんな啖呵を切ったのだから、怒りに触れて何かしらされるとでも思ったのだろう。

 

僕もそう思ったけど、ミラ様の懐は深いらしい。

あんな事で一々腹を立てるのは、人間くらいなのかもしれなかった。

 

〈さて、魔王の遺物だな。グンジョウ、あの岩の上まで飛べるか? あそこに置いてるんだ〉

 

ミラ様が指差した先、彼女がいつもいる大岩の上辺りに何か光るものが見える。

 

「え、あ、出来ます」

 

脚力強化をし、大岩の上まで飛んだ。

無造作に、本当にただそこへ置かれているだけの腕輪に、僕は引き攣り笑いをする。

 

無用心すぎますよ、ミラ様?!

これ、あっちのシャナが気付いてなくて良かった…!

 

腕輪を手に取り、地上に降りる。

とりあえずシンクに渡し、僕らはミラ様に挨拶をしてその場から立ち去った。

 

◆◆◆

 

「…ユエ、ちょっと心臓止まりかけたから、あんな無茶今後やめてくれる?」

 

エルフの里に帰ってきて、僕ら用にと与えられた部屋につき、僕はユエに言う。

アキカ叔母様に、里に何も変化はなかったか尋ねたが、何もなかったとの事なので、あの魔王のシャナは里を通らず別の所から現れたのだと、僕らは結論付けた。

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