「う…ごめんなさい…」
自分の暴挙が分かっていたのか、ユエが素直に謝ってくる。
因みに今部屋の中にいるのは僕とユエのみだ。
他のメンバーは、なかなか入れないエルフの里で土産物を買うために出ている。
シャナのコミュニケーション能力があれば、エルフ達も普通に話してくれるだろうとの目論見だ。
しかも、姉は精霊の愛し子だから無碍にも出来ない。
僕ら以上に、エルフは精霊と共存しているのだから。
精霊の不況を買う事はしないだろう。
「ミラ様に嫉妬してどうすんの。創世の頃からいらっしゃる精霊の王が、赤子同然の僕に懸想なんてするわけないだろ。さっきミラ様も言った通り、僕はシャナの弟で母様の息子だから、良くして下さってるだけだよ。じゃなきゃ、僕みたいに何も持ってない奴がミラ様に謁見出来るわけないだろ」
ベッドに座り肩を竦めながら言うと、ユエが驚いた顔をする。
「そんな事…! アオは何も持っていないわけないじゃない…っ!!」
「持ってないんだよ、それ以外。ねぇ、ユエ? 僕が王子じゃなくても、こんな見た目じゃなくても、好きになってた?」
当たり前だ、と彼女は返してきた。
「私は、アオが王子だからとか、見た目が格好良いからとか、そんなもので貴方に惹かれたんじゃない! 私は貴方の心が、精神が、とても真っ直ぐで優しいから、そこに惹かれたの! 貴方が何も持っていないなんて、そんなの嘘だよ。もし、何も持ってなくてミラ様に会いたいって言ったとしても、ミラ様は会ってくれるよ。だって、アオはとても心が綺麗なんだから」
「あー…うん。ありがとう、ユエ」
煩悩まみれの僕の心が、綺麗、ねぇ…。
真っ直ぐで優しいかな…捻くれている自信しかないのだけど。
僕はユエを手招きで呼び、足の間に座らせて後ろから抱きしめる。
ここに一泊したら城に帰る予定ではあるんだけど、もう何泊かしたいなぁ…。
「ユエとイチャつきたい…」
「もうしてると思うんだけど…」
彼女の肩に頭を乗せながら呟くと、苦笑される。
「そうだけどさぁ…」
少し不満げに僕は言う。
そんな僕の頭を、ユエは撫でた。
「冬休みになったら、二人でゆっくり過ごそ? あ、お風呂も一緒に入ってもらうからね?! もうそろそろ高等部卒業するんだから!」
ツンツンと僕の頭をつつき始めたユエに、今度は僕が苦笑する。
「はいはい…仰せのままに、僕の姫。でも体の関係はまだ先だからな?」
「分かってますー!」
少し顔を上げると、プクッと彼女は頬を膨らませていた。
本当に分かってるのかな、こいつ…。
「グンジョウ、入っても大丈夫?」
コンコンと扉をノックされ、シャナの声が聞こえてきた。
どうせユエとイチャついているだろう、と察した姉もなかなかではある。
流石姉さんその通り。
ユエを立たせ、僕も立ち上がりドアを開ける。
「待たせてごめん、シャナ。何か収穫あった?」
「へへ。見てこれ! ツルギ君とお揃い!」
シャナが差し出した指に、指輪が嵌っている。
右手だったけれど、百合の花をモチーフにしたシルバーリングで、シャナに似合っていた。
「良かったね。なんで右手?」
「婚約の証だって。左手は結婚だってツルギ君言ってた。えへへ、かなり嬉しい」
それを聞いたユエが、自分の左手から指輪を外して右に付け直しをしている。
まぁ、結婚指輪つける時に外してもらう事になるな、とは思っていたから丁度良いけれど。
僕も指輪を外し、右に付け直す。
「他には何か買ってきたの?」
「えっと、母様にハーブティーでしょ、父様にはエルフの里にある木で作られた万年筆、リーゼにはバレッタ、アンナにはパズル、ラゼッタにはチョコ!」
家族全員分買うとか…本当僕らの事大好きだな、シャナは。
そっか、と僕は言い、姉の頭を撫でた。
「ユタカちゃんも、自分の家族用に何買うか悩んでて。ユエちゃんにも手伝って欲しいって事で、呼びに来たんだけど…」
「わかった。ありがとうシャナちゃん。でも、アオと二人だからって変な事しないでね?」
誰がするんだ馬鹿。
早よ行けと、僕は彼女の頭を軽く叩く。
途端シャナから怒られたが。
「彼女に手を上げるんじゃありません! そんな乱暴な子に育てた覚えはないよ、グンジョウ!」
「そんなに強く叩いてねぇよ。ユエがアホな事抜かすからだろ。彼女はもう家族なんだから、ツッコミ入れただけ」
それを聞き、ユエの顔が真っ赤に染まる。
行ってくると、彼女は駆け出して行った。
「…嬉しそうだったね、ユエちゃん」
「義妹になるんだから可愛がってあげなよ、姉さん?」
あたしはいつも可愛がってるもん、なんてシャナは言う。
可愛がってると言うか、シャナのフィジカルディスタンスが近過ぎるので、勘違いする輩が発生するんだけど。
まぁ、ユエとかユタカに対して可愛がってると言うなら、その通りなのだろう。
「じゃあ、僕もみんなに何か買って帰るか…」
そういえばアラスターとか、埋め合わせするって言って何もしてなかったな…。
ここの土産買って渡そう…。
あとはエミル君と、ついでにツェリにも買って土産送って貰おうかな…。