my way of life   作:桜舞

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348話『サカネ先生の方がマシ』

ぷくーっ、と頬を膨らませる彼女にキスを落とす。

唇を離し、ユエをベッドへ横たわらせると、僕もその傍で横になった。

 

「アオー…」

「明日」

 

眼鏡をサイドテーブルに置き、僕は彼女をギュッと抱きしめて目を閉じる。

少し意識が覚醒したユエから、胸を軽く叩かれた。

 

「ん…何…」

「アオの馬鹿」

 

薄目を開けて彼女を見る。

不満そうにしているユエの頭を撫で、その額にキスを落とした。

 

「明日の朝一緒に入ってあげるから、今は寝かせて…もう限界…」

「絶対だからね? 覚えてないなんて言わせないから」

 

わかったわかったと返答しながら、僕は眠りに落ちた。

 

◆◆◆

 

眠りから覚め、ユエの寝顔を見た僕は昨夜の事を思い出し、頭を抱える。

 

眠かったからって、あの口約束なんなんだ僕…?!

本当、眠くなると僕無能じゃない…?!

 

起き上がり、サイドテーブルから眼鏡を取ってかけた瞬間、寝ていたはずのユエから腕を掴まれた。

 

「逃がさないからね、アオ…!!」

「…シャナが短い悲鳴あげるの、わかった気がする…」

 

寝てると思っていた相手が、いきなり腕掴んでくるんだもの。

僕も若干驚いて、少しだけ肩が跳ねた。

 

「昨日の事忘れたとは言わせないからね…!!」

「あー…うん。覚えてるよ、うん…」

 

少し頭を掻き、僕はそう言う。

ちゃんと僕が覚えていた事に嬉しさが顔へ出た彼女は、お風呂に入るための色々を持ってくると、部屋から出て行った。

その隙に僕は諸々をやり、先に風呂へ入る。

 

流石に一緒に服脱いでとかは無理…!!

 

暫くしてから風呂場のドアが開き、ユエの声が聞こえた。

 

「あー! 先入ってるー!」

「当たり前だろ…」

 

理性崩壊するぞマジで。

襲われたいんだろうけど、その後の事考えてくれませんかね。

 

シャワーの音が聞こえるが、僕はそちらから顔を背ける。

チャプンと水音がして、ユエが浴槽に入ってきた。

そのまま、僕の方に這い寄ってくる気配がする。

 

「ユエさん? なんで近づいてくるんですかね?」

「アオもちょっとは慣れよ? 夫婦になるんだよ?」

 

それはなってからでも良いんじゃないかな…。

父様と母様だって、夫婦になるまで一緒に風呂入った事無いだろうし。

 

「あのね、ユエ。僕の視力が悪いからって、肌色が見えないわけじゃないんだよ? そんな刺激しないでくれないかな…!」

「慣れようって言ってるだけでしょ」

 

ユエが僕の腕に抱きつく。

素肌の感触に、僕の顔は真っ赤になった。

 

「ほんっと…っ!! 人の気も知らないで…っ!!」

 

ユエから顔を背け、僕は浴槽の縁に頭を乗せる。

 

「ごめんね、アオ。でも、私今幸せ。貴方とこう出来るのが、こうしていられるのが、とても幸せなの。魔王の問題が片付いていない以上、いつ結婚…っていうよりも、いつ死ぬかわかんないって言ったらいいのかな。だから、思い出いっぱい残したいなって」

 

彼女はそう言って、僕の手に自分の手を添えた。

肩に頭も乗せ、気配から察するに微笑んでいるようだ。

 

「……絶対、君やみんなを死なせたりしない。僕も死ぬつもりはない。魔王を倒して、君と添い遂げる。思い出なんて、倒してからでも作れるだろ」

 

彼女の手を握り、僕は言う。

そんな僕の手をユエは握り返してくれた。

 

「…そうだね。アオ、大好き。というか、眉寄ってるよ? 若いのに跡ついちゃう」

「僕も好きだけど…誰のせいだと思ってんだ、お前は…!」

 

ユエは僕の前に回り込み、えいえいと僕の眉間のシワを伸ばそうと指で押してくる。

その手を取り、自分の方へ引き寄せた。

 

「ひゃ…っ?!」

 

体勢を崩した彼女を抱き止める。

その際、ユエの胸に僕の顔が包まれてしまった。

バスタオルとかなんか巻いていてくれたら良かったのだが、彼女はそれを頭から取っ払ってしまっていたらしい。

ユエはその体勢のまま固まってしまった。

 

「……あの、アオ…」

「…………ごめん…」

 

何で僕が謝ってるんだって話なのだが、とりあえず謝っておく。

少し顔を動かし、彼女を見た。

多分さっきの僕同様顔を真っ赤にさせ、どうしようと困っている事だろう。

 

「…ユエ、一回退こうか…?」

「そ、そうだね、うん!! ごめんアオ!!」

 

物凄い勢いでユエは僕から離れ、その勢いのまま反対側の壁に後頭部を打ちつけた。

ガンッと、とても痛い音が浴室に響く。

 

「あ痛ぁっ?!」

「…ちょっと落ち着こう、ユエ。ね?」

 

頭を押さえ、ユエは蹲っているようだ。

うんうん頷いている彼女を見て、内心安堵のため息をつく。

 

あの体勢のまま誘惑されてたら、理性切れてたな…。

危なかった…。

 

本当に、僕のお嫁さんは誘惑行動が多くて困る。

それだけ僕との仲を進展させたいのだろうけど、もうちょっと待ってもらえないだろうか。

せめて、高等部卒業したら手も出しやすくなるというのに。

 

「…いった…うぅ…」

「大丈夫、ユエ? あとでカヅキおばさんかサカネ先生に診てもらったら?」

 

ママより、サカネ先生の方がマシ、と彼女は言う。

まぁ、カヅキおばさんにこれ聞かれて答えたら、雷が落ちるのは目に見えてるしな。

嘘なんて通じない人だし。

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