my way of life   作:桜舞

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35話『意識してステップ踏んで』

「あるから、ナズナは貴方をこちらに寄越したのでしょう? そこにナズナから渡された書類があるから、可否を決めて頂戴。あぁ、貴方の判断で国が傾くような事態にはならないから安心してね」

 

母様はそう言いつつ、手を全く止めようとはしていない。

流石この国の王妃だと言わざるを得ない。

 

「そーですねー、安心ですねー」

「そういえばカヅキ、聞いてくれない? この間から変な夢を見るようになってね」

 

少し拗ねたように言ってみたが、母様は全く意に介さずカヅキおばさんに話を振る。

 

「変な夢?」

「そうそう。3日前くらいだったかしら? 今のこの時間帯でね、魔法師団が魔法を暴発させて大爆発が起きたのよ。幸いにも死者は出なかったけど、重症者が多数でね。あたしがその場に行って、全体回復魔法をかけたの。確か、グンジョウが執務室に来てしばらく経った頃…」

 

母様の言葉に重なるように、爆音が鳴り響いた。

驚いた僕らは母様の背後にある窓の方を見る。

遠方で、黒煙が上がっていた。

 

確かあの方向は、魔法師団の訓練場があったはず…。

 

「…え? なんで? だって、あれはただの夢のはず…でしょう?」

「ナツキ! 惚けてんじゃねぇ!! グンジョウ! サカネ先生と師匠呼んで来い!! 行くぞ、ナツキ!!」

 

そう言って、カヅキおばさんは窓を開けて飛び降りた。

母様も我に返り、服をドレスから瞬時に軍服へ変えカヅキおばさん同様窓から出ていく。

 

それが最短距離なのはわかるのだが、母様自分が王妃だって自覚があるのだろうか?

って、そんな事を考えている場合じゃないな。

 

僕は脚力強化を自分に施し、母様の部屋を飛び出した。

人にぶつからないように天井を走り、王族の主治医であるサカネ先生の医務室に辿り着く。

 

「サカネ先生!」

「わかってる。今行く」

 

不健康そうな顔つきでキャンディーの棒だけ咥え、医療道具が入っている鞄を持ち、先生は出て行った。

何も言ってないんだけど状況判断は早いようで、流石王族の主治医だと純粋に尊敬する。

 

次はお祖母様の所へ行き、カヅキおばさんが呼んでいる旨を伝えた。

 

「何故私なのでしょうか。まぁ、娘が呼んでいるのなら行かねばなりませんね。あぁ、案内は不要です。構造は熟知してますので。ユエ嬢、私が戻るまで休憩と致します。殿下、あまり不埒な事はなさいませんよう」

 

首を傾げていたお祖母様だったが、僕に釘を刺して部屋を出て行く。

 

カヅキおばさんを娘と呼んで可愛がっているのは知っているので、あまり違和感を感じなかったのだが…不埒って…ドレスが乱れるような事って意味だろうか?

 

なんで誰も彼も、僕がユエにそんな事するって思うの?

…もしかして、父様が学生時代なんかやったのか?

 

腕を組んで、首を傾げると服の袖を引っ張られた。

ユエが少し不安そうな顔をしていたので、腕を解いて彼女の頭を撫でた。

 

「何があったの?」

「訓練場で魔法の暴発だってさ。僕は人を呼びに行けって言われたから、方々巡ってここに来ただけ。まぁ、みんなには悪いけど…ユエとの時間が出来て、ラッキーだったよ」

 

ユエはそんな僕の言葉に苦笑していたが、ふと僕の後ろを覗き込む。

そちらを見てみるが、誰もいるわけなく。

 

「ユタカは?」

 

とユエは聞いてきた。

そう言えばユエをここに送り届けてから、姿を見ていない。

僕は首を横に振って、見ていない事を伝えた。

 

「んー……そっかぁ……あ! ねぇ、アオ。シャナちゃんとワルツ踊ってたよね。ステップ教えてくれない? 本番とかで足を踏みたくないし」

 

僕の側からユタカが離れるわけないのに、と思っているのが彼女の表情から見て取れる。

少し悩んでいたユエは、何かを思いついたように僕にそう提案してきた。

 

「別に良いけど、足大丈夫?」

 

あの訓練で、踵に血が滲んでいたはずだが。

僕の心配に気付いたのか、ユエは少し舌を出して、

 

「自動回復かけて、随時治るようにしたの。だから全く痛くないんだ。アオと別れた後、そういやそこは禁止されてないじゃん、って思って」

 

と、笑いながら言った。

 

「それなら良いけど」

 

僕は少し肩を竦めた後ユエの腰に手を添え、手を取る。

 

「僕がリードするから、一歩ずつ意識してステップ踏んで。はい、1、2、3、4…」

 

ユエをリードしつつ、ステップを踏ませた。

最初はぎこちなかったものの、僕に身を預けながら、徐々に動けるようになっていく。

踏まれそうになったら、すぐ回避はしていたけど。

 

シャナと練習して、何回足を踏まれた事か。

あの時の回避術がここで役立つとはね。

 

「アオ、私、踊れてる?」

「少しぎこちないけどね。でも、上手くなってるよ。流石、僕の奥さんだね」

 

まだ早い、とユエは頬を染めて目を逸らしてしまう。

本当に可愛いな、彼女は。

 

暫くユエと踊っていると、お祖母様が戻ってきた。

 

「休憩になっているのですか、それは?」

「はい、先生。殿下とのワルツは、とても楽しい時間でした。素晴らしい時間をありがとうございます、殿下」

 

僕から離れたユエは、僕に向かって綺麗にお辞儀をする。

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