それはうちの両親が認めている場合だと思うんだけど。
まぁ、あの両親だから認めているとは思うんだけどね。
恋愛至上主義者だし、二人とも。
「うーん…でもまだ硬さがあるな。ユエ、相手してあげて」
「え、良いの?」
嫉妬に駆られないのかと、彼女は僕を見る。
僕はそれに肩を竦めた。
「シャナ以外の令嬢とも踊るかもって、ツルギ自身が言ったんだ。なら、シャナ以外とも踊って慣れておかないとって思うだろ? 今更嫉妬なんかしないさ。君は僕のだしね」
彼女の肩を抱き、額にキスをすると姉がニマニマ笑っているのが見え、なんだと目線を投げれば、
「ついに襲った?」
「襲うか馬鹿野郎!! 頭花畑なのも大概にしろ!! ツルギに襲われてからそんな事言いやがれ!!」
何だと?! と姉が食ってかかってきて、姉弟喧嘩に発展した。
それをお互いの婚約者が宥めてくる。
いつもの事なので、ユエもツルギも苦笑していたが。
「じゃあ、ツルギ。エスコートよろしく」
ユエがそう言い片手をあげる。
その手を取ってツルギは一礼し、彼女をダンスホールへ誘った。
ワルツの音楽が流れ、二人は踊り始める。
「客観的に見てどう? シャナ」
「ちょっとぎこちないけど、及第点じゃない? ツルギ君が出るとしたら、騎士団のパーティーとかだろうし。王族や貴族が出るようなパーティーには、騎士団は出席というかむしろ警護してるだろうし」
それはその通りだろうけど。
ツルギ的には、もう少し技術とか上げたいんだろうな、とは思うんだよな。
「ツルギ、ステップ早い。リード遅い。あと手の握力で痛い。女性ぶん回してんの、あんた? シャナちゃんは許しても、私は許さないからね。少しはアオを見習えアホ」
「す、すまない…」
ユエは容赦無くツルギに指摘する。
あと、僕も出来てるかと言われたら自信ないんだよ、ユエ?
あんまり言わないであげてくれないかな…。
「ユエちゃん、容赦な」
「まぁ、ユエだからね。思った事ズバッと言う所は好ましいよ。流石僕の奥さんだよね」
僕の声が聞こえていたのか、ユエがステップを踏み間違える。
すかさずツルギがフォローしていたが。
気が散るような事言うな、という感じでユエから睨まれた。
「修行足りないよ、ユエ」
「うっさい! アオの意地悪!!」
怒鳴られちゃったと、僕は苦笑しながら姉を見る。
シャナは二人が踊る様子をじっと見ていた。
「シャナ?」
「ん? …あぁ、いや…二人とも黒髪じゃん? なんか、あたしよりお似合いだなぁ、なんて思っちゃって」
そう言えばそうだけど、それだけではないだろうな、なんて姉の表情を見て思う。
「心配しなくても、ツルギはシャナ以外を見る事はないよ。あいつ、あれで一途なとこあるから。ユエもね。僕以外を見るような女性じゃない」
腕を組み壁に背を預けながら言った。
そんな僕を見上げ、シャナは苦笑いを浮かべる。
「……あはは…ちょっと不安になってたの、バレた?」
「まぁね。生まれてからずっと姉弟やってるんだから、分かるよ」
それに、ツルギは元々日本に帰ると言ってシャナの専属護衛になった男だったし。
シャナがたまに不安になるのも仕方がないと思った。
シャナの心に触れて一緒に過ごしていくうち、姉と恋に落ちてここへ留まる事を決意した奴だ。
だが今、僕の姉さんを不安がらせている。
少し意地悪したくなり、僕はツルギに声をかけた。
「ツルギ、シャナが不安になってるぞ」
「っ?!」
ユエとのダンスの最中だったが、彼は動きを止め慌ててシャナの方を見てくる。
見られたシャナは僕の腕を軽く叩いてきたけど。
「シャナ、どうした? 俺は、何かまずい事をしただろうか…? シャナ?」
ユエから離れて姉に近寄り、肩を掴んだツルギは眉を下げ、少し泣きそうになりながら問う。
シャナを悲しませる事が、ツルギにとって一番嫌な事なんだろう。
「うぇ、あ、だ、大丈夫、大丈夫だから、そんな心配しないで…! 何もしてないから! ちょっとグンジョウ?!」
怒りの矛先がこちらに向いたので、僕はユエの手をとりニヤリと笑った。
「僕よりそっちの方が先に卒業しそうだよな?」
「はぁ?! あとで覚えてろグンジョウ!! 特大魔法で吹っ飛ばしてやるからね?!」
はっはっは、と僕は笑い、ユエを連れてその場から退散する。
僕に連れられている彼女は、呆れた目を向けてきたけれど。
「アオ…本当にシャナちゃんからぶっ飛ばされるよ?」
「こんなの日常茶飯事だし。それに、多分仲がもっと深まるだろ。ツルギがされて嫌な事も分かったし。本当お互い想い合ってて…シャナが幸せになってくれたら良いなと、僕は思うよ」
反面、ちょっと寂しいなとも思う。
僕の半身である姉さんが、僕から離れて行ってしまう事が。
姉離れしなくてはな、なんて少し寂寥感を感じてしまった。
そんな僕を見てか、ユエが服の袖を引っ張ってくる。
「ん? どうしたの、ユエ?」
立ち止まり、彼女の方に視線を向けた。
ユエは僕を見上げ、微笑みながら言う。