「シャナちゃんが傍からいなくなっても、私はずっとアオと一緒にいるよ」
「……あぁ、うん…そうだね。君はずっと、僕と共に歩んでくれるんだから。君を蔑ろにしたつもりはないんだけど、ごめんねユエ。僕の傍にいてくれてありがとう。愛してるよ」
彼女を抱きしめると、ふふ、と嬉しそうに笑って抱き返してくれた。
◆◆◆
またユエと散歩を続けていると、化け桜の所にシンクとユタカがいる事に気付く。
ユタカを抱き上げ、シンクは幸せそうに微笑んでいた。
「……邪魔しちゃ悪いから、退散しようかユエ」
「そうだね」
その場から立ち去ろうとしたのだが、ユタカが僕らに気付いて声をかけてくる。
「あ、ユエ! グンちゃーん!」
「…一歩遅かったみたいだね…」
大きく手を振るユタカと、僕らを見て眉を寄せるシンク。
弟からは、空気読めよ、とひしひし感じられて大変申し訳ないと思ってしまう。
ユタカから見つかってしまった以上無視するわけにもいかず、僕らは二人に歩み寄った。
「何してんの、ユタカ? あ、いや、愚問だった。シンクとイチャついてたんなら、なんで私達引き止めたの。スルーすれば良かったのに」
ユエが僕と手を繋ぎながら、呆れた目を自分の姉に向ける。
しかしユタカは、ふふふ、と楽しそうに笑った。
「シンクからね、今プロポーズされたの!」
「今? 遅くね?」
弟を見ると、ギロリと睨まれる。
遅くなったのにも何か理由があるんだろう。
ごめん。
「うん。それで幸せのお裾分けって事で、呼び止めたわけか…ユタカあんたさ…」
ユエが少し、頭が痛そうにそこを押さえる。
不思議そうに、ユタカは首を傾げていた。
「どうかしたの?」
「シンクの気持ちも考えてやりなさいよ」
更に首を傾げるユタカを見つつ、ユエはシンクに姉を降ろすよう告げる。
降ろした直後、ユエはユタカの腕を引っ張り、僕らに声が届かない所まで連れて行った。
「…で、なんて言ったんだよ」
二人の様子を見つつ、僕は弟に尋ねる。
「……俺が絶対ユタカを幸せにするから、貴女の将来を俺にくれませんか。俺と一緒に、この先もずっといてくれませんかって」
何ともまぁ、格好良いプロポーズだな、おい。
それにイエスとユタカは答えたんだろうけど。
「…邪魔して悪かったな。ワザとじゃないんだけど」
「分かってる。本当なら、結構高めのホテルのレストラン予約してやりたかったんだけど、まだ学生だし。貰ってる小遣いをこれからの生活の基盤にしたいし。あんま無駄遣い出来ねぇな、って思ってここでユタカにプロポーズしたんだ」
寮生活は高等部生まで。
それ以上になると自分で家を探すか、貴族とかなら学園都市にタウンハウスとかを建てて、そこから通学するかなんだけど。
シンクは何処かを借りて、ユタカと一緒に住むつもりなんだろう。
確かに、大学へ行くための金はかからないとは言え、生活費はかかるわけで。
「ちゃんと考えてるんだな、お前」
「じゃなかったら生活出来ねぇだろ。それより、お前はユエと結婚した後どうすんだよ」
シンクの問いかけに、僕は弟をチラリと見た後軽くため息をついた。
「どうするも何も、王太子として王の仕事の補佐に就くだけだよ。父様の仕事を覚えないと、引き継げないじゃないか」
「それもそうだけど、あんま寂しい思いさせんなよ。ユタカの妹なんだから」
分かっているつもりだと、僕は弟に返事をしてユエとユタカを見る。
ユエから何か言われたのだろうユタカは、アワアワしながらシンクをチラチラ見ていた。
「…あれ、なんだと思う?」
見られているシンクは、何故ユタカが慌てているのか理解出来ていないようで、不思議そうに二人を眺めている。
「大方ユエが、僕らを呼び止めた時にシンクが感じてた感情やら何やらを、自分の経験も交えて説明したからじゃないかなとは思ってる。憶測で話をしてるとは思うけど」
「…あー…別に、今は気にしてねぇんだけどな」
邪魔されたとは思っただろうけど、ユタカの性格上そういう行動をするだろうな、とは納得しただけに、怒りは抱いていないのだろう。
ユエは同じ状況になったら、滅茶苦茶怒るだろうけど。
「シ、シンク、ごめんね!!」
ユタカが謝りながらこちらに走ってくる。
コケる事もなく、ポスンと弟の腕の中に収まった。
「気にしてねぇよ。ユエ、あんま脅すな」
「私は、こういう状況で相手がどう思うか、って話をしただけ。ユタカはアホだけど、そこはちゃんとわかってるはずだから」
誰がアホか、とユタカから抗議の声が上がる。
そんな彼女の頭を、弟は撫でて宥めていた。
ユタカが愛おしいと、その目は語っている。
シャナもだけど、シンクも幸せになってほしいな、なんて思った。
「ユエ、もう行こうか」
「何処か行くの、グンちゃん?」
これ以上邪魔をするのもな、と思った僕は、ユエに声をかける。
弟の腕の中で、ユタカが僕へ問いかけてきた。
「アテもなく歩いてるだけだよ。君達もだけど、恋人と過ごす時間っていうのは、とても貴重だろ?」
逆に問うと、二人とも頷く。