my way of life   作:桜舞

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352話『遂に、この時が来た』

まぁ、歩きたい気分なのは僕だけなので、ユエを付き合わせてしまっている、とは感じているんだけども。

僕はユエの方を見、尋ねた。

 

「ユエ、疲れてない?」

「え? 全く。やだなぁ、アオ。老人扱いしないでよ」

 

してるつもり全くないんだけど。

体気遣っただけなんだけど。

なんでそんな発想になった?

 

僕は少しため息をつき、ユエを横抱きにして抱える。

 

「ちょっ?! アオ?!」

「疲れてきてるみたいだね、ユエ。部屋に帰ろうか。二人とも邪魔してごめんね」

 

謝ると、シンクから気にするなと言われた。

僕はユエを抱えたまま、化け桜の庭から歩き去った。

 

◆◆◆

 

「アオ、私疲れてないから! ちょっと、降ろして?!」

 

ユエを抱えて歩き続ける事数分。

彼女から抗議され、立ち止まった。

 

「ユエの口から老人って単語が出たんだから、疲れてるって判断するのは正しいと思うんだけど」

「それだけで?! ただの例えでしょうに?! 私まだ18だもん! 精神年齢で言えば、そりゃ…30前半だけど…だからって自分の事、老人とか思ってないからね?!」

 

キーキーとユエから怒鳴られ、しかしこの体勢から降ろしたくないなぁ、なんて思う。

それは僕の我儘だったけど、これ言ったらユエ大人しくなってくれないかなぁ、なんて思っていた時だった。

 

「その理屈で言うと、あたしナズナより年上になってしまうわね?」

「年上だったとしてもお前の事を愛していたから、俺は別に構わん」

 

両親の声が聞こえ、僕らはピタッと動きを止める。

声がした方を見ると、仲良く腕を組み廊下を歩いている僕の両親が目に映った。

僕はユエを降ろし、二人で頭を下げる。

 

一応、王宮とはいえ人の目もある事だし。

目上だし。

 

「良い、面を上げよ。ユエ嬢、うちの息子が苦労をかけるな」

「え、あ、いえ。これくらい、苦労の内に入りません陛下」

 

息子の目の前で言う事ですかね、それ。

 

苦笑いを浮かべ、僕は目を逸らす。

そんな僕を見てか、母様は微笑した。

 

「グンジョウ、あまり嫌な事から目を背けてはいけないわよ? 言いたくないけど、貴方は次代の王なんですからね」

「分かってるよ母様…」

 

耳にタコが出来る程、言い聞かせられてきた事だ。

それは分かっているのだけど…。

 

目を逸らしたままの僕を見て、ユエがクスリと笑いを溢した。

彼女の方を見やれば、クスクスと笑い続けている。

 

「ユエ?」

「いや、ごめん…! アオ、お二方の前だと妙に子供っぽくなるっていうか…普段とのギャップがあって、面白くて…!」

 

そこまで笑う事ないだろ。

 

ジト目でユエを見ると、急に頭を撫でられた。

そっちを見れば、父様が僕を撫でている。

なんで今撫でる必要が? と不思議に思って父様を見つめてしまった。

 

「大きくなったな、グンジョウ。背は俺より少し高くなったか」

「ほぼ変わらないと思うけど…」

 

父様の身長が181cm、僕が183cm。

誤差の範囲内とは思うけれど。

母様は父様の隣でニコニコ笑ってるし。

一体どうしたって言うんだ、二人とも。

 

「グンジョウ、15時に謁見室へ来い。パーティの皆も呼び出せ。良いな」

 

父様の声色が硬くなり、僕とユエに緊張感が走る。

今まで和やかな空気だったものが、一気に張り詰めた。

 

「…承知しました、陛下」

 

僕とユエはまた頭を下げる。

二人が僕達の横を通り過ぎる際、母様が僕の肩を軽くポンポンと叩いた。

そんなに緊張するなと言ってくれているようで、二人の足音が遠ざかってから頭を上げ、両親を振り返る。

 

父様が母様の肩を抱き、歩いていた。

だが、母の肩が少しだけ震えているのが見え、泣いているのだと理解する。

やや頭も下げているので、多分間違いない。

 

「…一体何なんだよ…」

 

僕はポツリと呟く。

隣でユエが携帯を取り出し、グループメッセでみんなにメッセを飛ばしていた。

そして父様に指定された15時。

謁見室前に、パーティメンバーが全員揃う。

 

「一体どうしたってんだ、父様?」

「もしかして、下に妹か弟出来たんじゃない?」

 

怪訝そうな顔をするシンクと、あっけらかんな感じで話すシャナ。

 

「それならおめでたいけど…私達呼び出す必要あるのかな?」

「……多分、ないと思う」

 

首を傾げながら話すユタカ、そして首を横に振るツルギ。

 

「アオ…」

 

僕の服を掴み、ユエが不安そうな顔を向けてくる。

 

「…行こう」

 

謁見室の扉を、僕は開けた。

玉座に父様、その両隣に母様とカヅキおばさんがいる。

僕らは謁見室の中に入り、中央辺りで歩を止めて膝をつき、頭を垂れた。

 

「陛下のお呼びで参りました。此度は、如何されたのでしょうか?」

 

皆も僕と同じく膝をつき、頭を垂れているのが気配で分かる。

僕らは静かに、父様からの言葉を待った。

 

「魔王の居場所がわかった」

 

父様の隣に立っているカヅキおばさんが、そう言葉を発する。

僕らはそれへ、息を呑んだ。

 

遂に、この時が来たのかと。

 

「そこまでの次元を開くまで、一月を要する。グンジョウ、シャナ、シンク。王族の勤めを果たして来い。ユエ嬢、ユタカ嬢、ツルギ。お前達は命を賭して、三人を守れ。これは王命である」

 

父様の厳格な声が、謁見室に響く。

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