ベッドも王族の部屋なのにシングルサイズ。
今は夜なのだろうか?
窓の外は暗く、何も見えない。
「まぁな。夜になったら何も見えねぇから、シャナみたく
ユタカの頭を撫で、シンクは部屋の外に通じる扉に近寄った。
僕はそれに待ったをかける。
「シンク、開けたら敵が待ち構えている可能性もある。ツルギ、代わりに開けろ」
僕の指示通り、ツルギが扉を少し開けて廊下の様子を確認した。
そしてすぐに扉を閉じる。
「どうした?」
「…殿下。廊下に敵影はありませんが…あちらのリヒト城と、少々様子が違うみたいです」
様子が違う?
一体どういう事だ?
ツルギを先頭に、僕らは廊下に出る。
すぐに、彼が言っていた事が理解出来た。
「なんだここ…」
元の世界のリヒト城にある僕の部屋は、結構奥まった所の角部屋で、部屋を出るとまっすぐな廊下が見えるはずなのだ。
そのすぐ側には、シャナの部屋がある。
シンクの部屋もそうだったとは思うのだが、目の前に広がる光景は、全く違うもので。
ダンスホールかと思われるくらい広い空間が、鎮座していた。
「へー…部屋の外こうなってたんだー…」
部屋から一歩も出た事がないシンクが、物珍しげに周囲を見渡す。
「いや、そんなわけなくない?! 普通に空間捻じ曲がってるんだけど?! これもこっちのあたしの仕業か…構造自体はあたし達の所と一緒だから、簡単に辿り着けないようにって事なんだろうけど…趣味悪、性格悪!! そんなんだから、意中の相手にも見向きされなかったんじゃないの?!」
シャナが激怒しながら壁を蹴った。
いや、そんな姿見せてツルギにドン引きされないのかな、うちの姉さん…。
それに、あのシャナに意中の相手なんていたのだろうか?
まぁ、いたとしてもシャナの言う通り、あの性格じゃ相手にもされないだろうけど。
見てくれだけしか良くないわけだし。
なんて思いながらツルギを見るが、シンクと同様物珍しげに辺りを見回していて、シャナの奇行に気付いていないようだった。
「シャナ、落ち着け。マッピング出来そうか?」
「…ごめん、落ち着く。出来るよ。あたしは母様の娘だ。リューネの守護者、シャルロット・マリアライト・ブリリアントの第一子だ。こんな異空間、何するものぞ!!」
シャナが片手を上げ、魔力を迸らせる。
それが、廊下を物凄いスピードで走って行った。
もう片方の手を上げ、シャナはマップを表示させる。
姉が作成したマップを見て、僕は眉を顰めた。
「なんだ、この複雑な構造…」
縦横無尽に廊下や部屋が広がり、巨大な迷路のようになっている。
マッピングしてもらえなければ、どれほどの時間が掛かっていたことやら…。
「空間歪曲しまくってんな、これ。三階のものも、地下のものも、全部同じ空間に引っ張り出してやがる。まぁ、どこに魔王がいるか、あれがいるかわかんねぇから、片っ端から開けていくしかねぇんだけど」
マップを見つつ、シンクが言う。
途中罠もあるだろうから、そこは気をつけなければならないだろうが。
「大丈夫だよシンク。開けた先に罠があっても、時を止めて排除するから。全体構造も把握した。ふふん、第一王女舐めんじゃないわよ…!」
シャナがニヤリと笑う。
本当にうちの姉は、弟妹の事になると張り切りすぎるというか何というか。
それがありがたい時もあるんだけど。
今はあんまり調子に乗らない方がいいと思うのだが。
「シャナちゃん、それ私にも共有して。罠があった場合、屋外に転移させるから」
「あ、私も! 影に沈めて消すよ!」
ユエとユタカが、シャナと手を繋ぎ意識を共有していく。
僕ら男性陣は、その間周囲の警戒をしていた。
「うちの奥さん達、本当に頼りなるよな。シンク?」
「本当にな。可愛いし、芯が強いし。そんな女を嫁に貰えるなんて、幸運以外の何者でもないよな。な、ツルギ?」
「え、あ、はい…。シャナは、とても美しくて…俺には、勿体無いです…」
僕らはそう言いつつ、ホールに続く廊下から現れた魔獣を掃討する。
今の女性陣に近づけさせてはならないから。
シンクの無属性魔法で牽制し、僕とツルギが魔獣を屠っていく。
「普通に魔獣は闊歩してるわけだ…あんまり無駄な戦闘はしたくないんだけどな」
ブランシュとノワールを、腰に履いた鞘に仕舞いながら呟いた。
意識の共有が終わったようで、ユエが隣に来て僕の腕を軽く叩く。
なんだとそちらを見ると、彼女は少し頬を染めていた。
「敵地なのに、あんまり照れるような事言わないで…気が抜ける」
「じゃあ、帰ったら目一杯口説くから覚悟しててね、ユエ。みんな、陣形を組め! 行くぞ!!」
僕の号令に皆は頷き、いつものフォーメーションで進み始めた。
◆◆◆
扉を一つ一つ開ける、という事をシンクがアンナとスイカ君から貰ってきた人形で行う。
いつの間にとも思ったが捜索のスピードが上がったので、シンクナイスと思った。