my way of life   作:桜舞

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356話『必ず迎えに来るから』

そんな時、弟の足が突如止まり、隣を歩いていたシャナが声をかける。

 

「どうしたの、シンク?」

「……まさか…」

 

周囲を警戒していたシンクの表情に動揺が見え、僕も弟に尋ねた。

 

「シンク? 異常があるなら言え」

「…あの扉の先から、微かに懐かしい魔力を感じた。頼む、兄ちゃん。少し俺に時間をくれないか? 敵地なのは理解してる。一人で行動するわけにもいかないし、もしかしたら罠の可能性もある。それは分かってるんだ。でも…!」

 

シンクが指を差した先に、一つの扉がある。

僕はリーダーとして、次期王として、冷静に判断を下さなければならない。

パーティを危険に晒すわけにはいかないから。

 

シンクも、僕が否と言えば諦めるだろう。

だが、弟がこれだけ懇願するのも珍しい。

少し考え、僕はシンクに言う。

 

「分かった。ただし、人形を先行させろ。それで危険がないと判断すれば、僕達も着いて行こう」

 

シンクが収納空間から人形を出す。

それに扉を開けさせて、僕の指示通りに動かした。

暫くしてから、シンクが僕を見て頷く。

 

「よし、なら行こう」

 

扉の先は、この空間には珍しく地下に降りるような階段になっており、(レイ)を使って僕らは階下に降りていく。

そこは地下牢のような場所で、少しジメッとしていた。

 

「…誰?」

 

鈴を転がすような澄んだ声を聞いた瞬間、シンクがその声に向かって駆け出していく。

 

「ソルフィアナ姉様!!」

 

その名前に聞き覚えがあった。

確か、ユーラ王国に行った時と、ミラ様の所でシンクが口にした名前だ。

弟は光を出し、一つの牢の前で止まる。

 

「グンジョウ…? 貴方、どうしてここに…」

 

光に照らされた女性は蒼髪にグレーの瞳を持っていて、牢の中からシンクに手を伸ばした。

その手を取った弟は、震える声で答える。

 

「姉様が逃がしてくれた先にあった世界の魔王が、こっちに陣取ってて…それを討伐しに来たんだ。姉様…っ…よくぞご無事で…!!」

 

シンクの後ろ姿しか見えなかったが、肩が震えていて、多分弟は泣いているんだろう。

そんなシンクを見て、ソルフィアナは儚げに笑った。

 

「貴方を逃がした後、私もシャナから逃げる為に地下牢に来たの。あの子は、汚い物や場所が嫌いだったから…ここで、お父様から託された術式で生きながらえてた…。あの子から気付かれないように、魔力を溜めて、溜め続けて…シャナごと、この城を爆破しようって…それがあの子を止められず、お父様達をむざむざ死なせてしまった、私の罪だから…」

「姉様…っ!!」

 

シンクが悲痛な声を上げる。

こちらのシャナを除けば、唯一の肉親であるソルフィアナの自爆など、彼女の弟としては嫌だろう。

僕はシンクに歩み寄り、ソルフィアナに声をかけた。

 

「お話の途中割り入ってしまい、大変申し訳ありません。ソルフィアナ姫殿下」

「貴方…は…グンジョウ? でも、此方では珍しい眼鏡をかけていらっしゃるのね。そう…グンジョウを送った先に、もう一人のグンジョウがいたの……ご迷惑を、お掛け致しました。私達のお家騒動に、そちらを巻き込んでしまって」

 

彼女はそう言い、僕に頭を下げる。

シンクの姉だけあって、とても聡明なようだ。

僕もソルフィアナに一礼する。

 

「こちらもおあいこと言うものです。こちらの魔王が、そちらの世界に行ってしまったのですから。姫殿下、その魔力を一時的にシンク…グンジョウに預けては頂けませんか? 僕達は、僕達の世界の魔王を討伐しにはきましたが…こちらの魔王であるシャナも、我々が討伐致しましょう」

 

バッと、ソルフィアナとシンクが僕を見た。

マジか、なんて目を弟は向けてはきたが。

 

「そこまでは…! それはこちらの問題で…っ!!」

「申し訳ありませんが、そちらのシャナは我が国の民を暴虐したのです。その報いは受けさせねばなりません。私は次期国王です。我が国に仇なした者に報復をせねばならない。ご安心を。この国を滅ぼそうとは思っておりません。ただ、元凶である魔王を打ち倒すだけです。宜しいですね?」

 

僕の言葉と目を見たソルフィアナは、コクリと一つ頷く。

そして練っていた自分の魔力を、シンクに譲渡し始めた。

 

「積もる話もあるだろうから、僕は向こうでみんなと一緒に待ってるよ…姫殿下、我々と共についてきますか?」

 

僕の問いに、ソルフィアナは首を横へ振る。

 

「いいえ…私はここで、皆様のお帰りをお待ちしております。殿下、弟を宜しくお願い致します。グンジョウ、お話はその時にしましょう? 貴方が無事に戻ってくる事を、祈っているわ」

 

シンクの頬を撫で、彼女は微笑んだ。

優美な仕草に、そういえばこちらでは女王制なんだっけな、と思い出す。

多分彼女が1番上だろうから、ソルフィアナが次期女王になるのだろう。

 

「姉様…聞いてほしい事も、話したい事も、いっぱいあるんだ。俺があっちでどう過ごしてきたのか。だから、待ってて。姉様の事、必ず迎えに来るから」

「えぇ。気を付けてね、グンジョウ。いってらっしゃい」

 

フワリと、花が開くように彼女は笑う。

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