my way of life   作:桜舞

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357話『貴様の矜持など』

その微笑みは、うちの姉と似ていると思った。

 

◆◆◆

 

地下牢から元の廊下まで戻ってきて、捜索を続ける。

 

「魔獣以外、誰とも出会さないなんて…本当にここ、うちの城と同じなのかな…」

 

シャナが若干不安そうに呟いた。

確かにここまでの道のりで、魔王のシャナや魔王自身にも会っていない。

いくら、魔力を流してマップを作ったとしても、誰が何処にいるかなんてわからなかった。

向こうには、こちらが侵入した事はバレているだろうけど。

 

「次元が入り乱れているからな。でも、間違いなくリヒト城だ。ただ、外の様子が全く変わっていない事が気になるが…」

 

シンクが窓の外を見る。

捜索を始めてからゆうに三時間以上は経っていた。

今がこちらの時間でどれくらいになるかはわからないが、それでも真っ暗なままというのは確かにおかしい。

普通なら月や、見えなくても星々が輝いているはずなのだから。

 

「精霊を殺しまくったって言ってたよね…磁場が歪んでいる様子もないし、闇の精霊の仕業とか?」

 

ユエが振り向き、シャナに尋ねる。

 

「シャドウもみんな、ミラ様の祠に引きこもってる。精霊がいなくなったから、外の空気が澱んでるんだ。下手したら、この窓の向こうは真空状態かもしれない…オーシアやベルカは無事だと思うよ。おばさんの技術力とか、向こうにはこっちにない力場とかがあるから。でも、リューネの民は……!」

 

姉は悔しそうに、ガンッ、と壁を叩く。

そして、窓の外を睨みつけるように見た。

 

「絶対許さない、こっちのあたし…!! もうこの状態は手遅れだよ…精霊達に見限られたら、あたし達は生きていけないのに…!!」

〈ほう。なら、私の研究対象にして実験場にしましょう。精霊がいなくなった世界で、どれくらい人間は生き延びられるのか。何、シャナ陛下なら面白いからやってみろと仰るでしょう〉

 

頭に男の声が響き、次いでシャナが伸びてきた手によって壁にめり込んだ。

 

「ぐぅ…っ!!」

「シャナ!!」

 

ツルギがシャナを助けようと、その手に向かって蹴撃する。

カヅキおばさん手製の魔術礼装を身に纏っていたから、見る限りシャナへは傷一つ入っていなかった。

それでも衝撃はくるし、痛いだろう。

 

僕は声に聞き覚えがあり、伸びてきた手の方を見る。

赤黒く染まった手が縮み、壁が崩れたその場所から異形の化け物が現れた。

 

〈おや、お久しぶりですグンジョウ殿下。遥々ここまでよく来ましたね?〉

 

化け物は僕の方を見、名前を呼んでくる。

 

「テレジア卿…!!」

 

僕の方を見て言ったという事は、彼は僕達側の世界のテレジア卿なのだろう。

僕はノワールを引き抜き、テレジア卿に向ける。

 

「テレジア卿、その姿はなんだ? それに、貴様には国家反逆罪の容疑がかかっている。大人しく捕縛につけば良し。抵抗するつもりなら、この場で斬り捨てる」

〈容疑だけで、無罪の人間を斬り捨てると申されますか?〉

 

はっ、と馬鹿にしたような態度をとるテレジア卿に、僕は続けて言った。

 

「そうだな。容疑など言って悪かった。生温い発言をした。レフ・スフェーン・テレジア。貴様を王族に対する不敬罪、暴行罪、並びに国家反逆罪の罪で捕縛する。ただ、抵抗するなら斬り捨てても良いと陛下から許可は頂いている。さぁ、選べ。ここで捕まり、罪を贖うか。もしくは死ぬか」

 

僕の声は、とても冷たく響いた事だろう。

隣に立っていたユエが、少し驚いた顔をして僕を見つめていたから。

 

〈そう言われましてもね。私は、私の研究を続行する為にこちらに来ただけですから。あちらだと、魔王の研究とやらは違法の類でしょう? そんな法の為だけに、私の研究が邪魔されるなど…腹立たしいじゃありませんか。私は、私の研究の邪魔などされたくはない。ましてやベルファになど…遅れをとってなるものか…!!〉

「成程。なら死ね、レフ。貴様の矜持など、こちらにとってはどうでも良い事だ。精々ヴェスタ神の御許で、その愚考を言うが良い…総員戦闘配置!! 目標、レフ・スフェーン・テレジアの撃破!!」

 

僕の号令で、ユタカとツルギがテレジアに攻撃を仕掛ける。

シンクとシャナも大規模魔法を行使する為、詠唱を始めた。

テレジアはその異形の身から何本も触手を出し、ツルギとユタカの攻撃をいなしていく。

 

その攻撃はこちらにまで来たが、ユエの魔弾で撃墜していった。

 

双炎剣(レッド・ツイン)!!」

 

ユエが捌き切れなかった触手が僕に来たが、炎属性の斬撃で焼き払っていく。

もう、あの弱かった頃の僕達ではない。

テレジアの動きが全て遅く感じるくらいには、強くなっている。

 

「全てを飲み込め!! 闇渦(ブラックホール)!!」

 

シャナが闇渦を発生させた。

その声に、ユタカとツルギが退避する。

 

〈ククク…そんなモノで、この私が〉

「誰がこれだけだ、なんて言ったよ? 俺からのも喰らいやがれ!!」

 

闇渦に呑まれながらも、テレジアは余裕そうな声を上げた。

しかしそれに、シンクがサムズダウンする。

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