それでも、その手は止めていないが。
「……扉を開けるより、壁抜きをしていった方が…効率が良いのでは…?」
「ツルギ君、ナイスアイデア!」
ユタカの行動を見ていたツルギがポツリと呟き、シャナが賛同した。
多分、彼女が拘束しているテレジアごと、壁抜きすれば良いとか考えていそうで、僕は二人にストップをかける。
「待て待て!! 大柱を破壊したら、捜索どころじゃなくなるぞ?! 下手しなくても城が崩壊する!! シャナお前、大柱が何処の部分にあるか把握してるのか?!」
僕の問いに、シャナは首を横へ振った。
だろうなと思った僕は姉や、テレジアを今も転がしているユタカへ説明する。
「リヒト城の大柱は全部で10本。うち一本は今、ユタカが破壊したから残り9本。あとは謁見の間とか、中心部にあったりする。これ全部破壊したら、どうなるかなんてさっき言った通り。わかったら迂闊な行動しようとするなよ、三人とも」
「え、ごめんグンちゃん!!」
ユタカが慌てて、テレジアを叩きつけている手を止めた。
今はまぁ、彼女は一度言えば分かる子だからキツく言うつもりはないけれど。
問題はうちの姉なわけで。
「残り1本残ってたら良くない?」
「良いわけあるか馬鹿。城の支柱になってる大柱が折れるんだぞ? 1本だけならまだしも、残り8本折りましたー、残り1本だけですー、なんて…ジェンガやってるようなもんだからな? その1本折れたら全部崩れるんだからな?」
シンクのわかりやすい説明に、シャナもうんうん頷き始める。
どうやら納得したようだった。
途端、ユエの魔武器が弾を撃った音がして、僕は彼女を見る。
「ユエ?」
「ごめん、アオ。話の途中で。テレジアが動きそうだったから、撃った。目標は撃破だったよね? 死なせても大丈夫だった、はずだよね?」
彼女から確認され、僕は頷いた。
ユエの弾は、キメラになったテレジアの核を正確に撃ち抜いており、奴は体が砂の如く崩れ落ちている。
蘇生もしなくて良いと、僕はテレジアに近づきつつ告げた。
「レフ、何か言い残す事はあるか? 僕達が帰った後、貴様の一族郎党は全て斬首刑に処されるだろうが、遺言くらいは届けてやる」
僕の言葉に、テレジアはクッ、と笑いを零した。
〈なら、陛下に…二つ程お願い出来ますかな、グンジョウ殿下〉
続けろと言った僕の言葉を聞き、テレジアは話し出す。
その内容に、僕やシャナは驚いた。
一つ、父様の兄君であるハヤテ・クリサンセマム・ブリリアントを殺したのは自分である事。
僕らが産まれる前の出来事ではあるが、父様の兄君は石化の魔眼を持っていたらしい。
それの暴走で亡くなったのだと、テレジアから報告されていた。
それは父様から聞かされていたから、僕も知ってはいる。
暴走は事実だが、その暴走状態になるまで実験したのは自分だと、テレジアは言った。
〈我が家に伝わるのは…魔王の眼だったもので…その実験と解析をする為に、甥であるハヤテを使いましてなぁ…まぁ、失敗に終わったわけですが…〉
何ら悪びれもせず、テレジアは言葉を続ける。
そして二つ目を話し出した途端、シャナがテレジアを蹴り上げた。
「なんて事…っ!! なんて事を…っ!!」
「シャナ、気持ちは分かるが…落ち着け!!」
ツルギから羽交締めにされ、激昂したシャナがもがいている。
姉にとっては、耐え難い話だろう。
何せ、精霊に纏わる話だからだ。
テレジアから語られる二つ目の話は、精霊に瘴気を埋め込んだのだという。
自分の領地の端に精霊がいる事に気付いたテレジアは、ある実験を思い付いた。
エネルギー体である精霊に、瘴気は埋め込めるのかと。
その当時、瘴気というものの存在は知っており、洞窟の奥深くで発生しているのも知っていたテレジアは、それを封じ込め軍事に転用出来ないか研究していたそうだ。
封じ込めは出来るものの、あれやこれやと日夜研究に没頭していたある日だったらしい。
〈その精霊は、随分のんびり屋だったみたいで…人間だった頃の私が近付いても、逃げようともせず…設置するのは、容易でした…〉
その精霊の真下に装置を設置し、瘴気を封じ込めたコアを打ち出して、内部に留めるようにしたそうだ。
誤算だったのが、その場所が沼地で瘴気に汚染され始めた事だという。
〈実験とは常に、失敗ありきではありますが…いやはや、その当時は焦ったものですよ。まさか、我が領地が汚染されるとは〉
「ミラ様から聞いた事ある…ゲンブが瘴気に侵されてて、それを母様が助けたって……まさか……っ…ここの精霊達を使って、こっちのあたしに軍事運用させたの…貴方の入れ知恵?!」
テレジアはそれに対して返事はせず、ただ笑いを零す。
…肯定だとでも言うように。
「っ、許さない!! 絶対許さない!! 離してツルギ君!! ここの精霊達の仇討ちをしてやる!!」
「ツルギ。あと一つ聞いたら、シャナを解放しろ。流石に僕も不愉快だ。レフ、王家に反逆している意識はあったか?」
僕の問いに、否、とテレジアは答える。