my way of life   作:桜舞

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360話『順に休憩して行こう』

ただ、実験をしていたかっただけだと。

オモチャを与えられた、子供のように。

 

〈それが王家に反逆しているというのなら…そうだったのでしょうなぁ…〉

「……わかった。ツルギ」

 

シャナを羽交締めしていたツルギが、その手を離す。

彼に拘束されながらも、シャナは詠唱を終えていたらしい。

僕へ離れるように告げてから、片手を突き出した。

 

「精霊達に侘びながら逝け!! 太古の炎(エンシェント・ノヴァ)!!」

 

白い炎がテレジアを包み、一瞬で灰になる。

それを見届けて、シャナがペタリと地面に座り込んだ後泣き始めた。

ごめんなさいと、こちらの精霊達に謝りながら。

 

「シャナのせいじゃないって、ミラ様も言っていたろ? 悪いのは、こっちのシャナと軍事運用を提案したレフだ。だから…泣かないで、姉さん。全てが終わったら、こっちの復興手伝おう? 精霊達に話を聞いてもらおう? ね?」

 

シャナの頭を撫でながらそう伝えると、姉の隣にシンクも座り、肩に手を置いた。

 

「姉ちゃんの言葉なら、こっちのミラ様も話聞いてくれるって。大丈夫だよ、姉ちゃん。姉ちゃんは素直だからな。心を閉ざした精霊達も、開いてくれるはずだから。な?」

 

弟の言葉に、シャナは泣きながら頷く。

 

「う……うん……あたし、ちゃんと…ミラ様達に…っく…お願い、する…っ! シンクや、みんなを助けてって…! もう、怖い事も…痛い事も、しないからって…っ! 断られても…何回も…っ!!」

 

うわぁぁんっ!! と姉はギャン泣きし始めた。

背後に寄ってきて見守っていたツルギに、僕は苦笑する。

一回頷くとツルギも頷き返し、シャナを抱き上げて慰めていた。

 

「さて…後どれくらいで捜索が終わるか…」

 

壁に背を預け、僕は天を仰ぐ。

最低でも、後一回は大規模な戦闘が入るはずだ。

そこまで集中力が保てば良いが…。

 

「ここに来て、もう四時間は経ってるし…セーフティルーム作った方が良いんじゃないかな?」

「なら、見張り番は私がするよ。そんなに動いてないし、アオみたいに集中的に警戒してたわけではないから」

 

ユタカが自分の腕時計を見ながら呟き、ユエが挙手する。

シャナもあの状態で戦闘は出来ないだろうし、僕はユタカの提案に頷いた。

 

◆◆◆

 

近場に手頃な客室があったので、僕らはそこへ身を落ち着ける。

シャナにリンクを繋いでもらい、シンクと共に部屋に結界を張った。

 

「あー、疲れた!! 何なんだよ、テレジアのジジイ!! 一、二回しか見た事ねぇけど、あの巨体どうなってんだ?!」

 

ベッドに横になったシンクは、そう大声を出しながら頭を掻く。

複数人泊まる用の部屋で、ベッドは四つ。

その内の一つを弟は占拠していた。

 

「自分を素体としてキメラ体になったのか…もしくは、ベルナールに提供したクローン技術を応用して、キメラ体の中に意識だけを移したのか…前者ならもう出てくる事はないだろうけど、後者だったらまだ出てくるだろうね」

 

椅子へ座り腕を組みながら言う僕に、ユタカが収納空間に入れてたペットボトルのお茶を差し出してくる。

礼を言って受け取り、封を開けて飲んだ。

シャナはまだ泣いていて、ツルギの腕の中で彼に慰められている。

 

「グンちゃん、一回寝た方がいいんじゃないかな。結界の張り直しは私とユエがしておくから」

「いや、この中で一番動いたのはユタカだろ? 順に休憩して行こう。ベッドは、シャナとそこで伸びてるシンクを除けば、後二つあるわけだから。ユエ、君も少し寝ろ。そこまで警戒しなくて良い」

 

扉の所に立っていたユエへ声をかけた。

魔武器を出し、険しい顔をしている彼女は首を横に振る。

 

「私は良い。結界も私が維持しておく。ユタカとアオは休憩してて」

 

普段なら押し問答をしている所だが、ここは敵地。

いつ襲撃があるかわからない。

僕はお言葉に甘える事にし、椅子から立ち上がった。

 

結界の状態をユエに譲渡してから、ベッドへ横になり目を閉じる。

すぐさま眠気が来たので、疲れてたんだなぁ、なんて思いながら意識が暗転した。

次に意識が覚醒した時、良い匂いがしたので目を開ける。

 

「ん…?」

「アオ、起きた?」

 

ユエが僕を覗き込むように見ていて、僕はぼんやり彼女を見上げた。

 

「…ごめん、どれくらい寝てた…?」

「まだ三時間くらい。途中でお腹空くだろうって話になったんだけど、シャナちゃんが創造魔法でキッチンセット作ってくれてね。クッキングヒーターとか色々。今、シャナちゃんとシンク、ユタカが寝てる。ツルギは扉の所で警戒してくれてて、一応食材持ってきてた私が調理したって所かな」

 

起き上がり、テーブルの方を見る。

美味しそうな料理と、全員座れそうな長机があった。

 

「ユエ、これ全部君やったの?」

「私がやったのは調理だけ。他はシャナちゃんだよ。そこで気力が切れたんだろうね。ツルギの腕の中で寝ちゃったんだよ。ね、ツルギ?」

 

彼の方を見れば、うん、と頷く。

僕は伸びをして関節をバキバキと鳴らした。

三時間寝た程度だが、疲れは取れている。

ベッドから降り、ユエを見た。

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