「ユエ、結界の維持代わるよ。食事してから寝て?」
「そうする」
ユエと僕は手を合わせ、彼女から結界を譲渡される。
シャナとのリンクは生きているから、難なく維持出来た。
ツルギも交えて、僕らは食事をする。
「僕が寝てから、何か変化はあったか?」
「いえ…静寂そのものです。襲撃もありませんでしたし…外に感じる気配は魔獣のみです。多分…見逃されている、かと…」
まぁ、だろうな。
あの、性格悪い方のシャナが僕らを見逃す理由なんて、面白い以外の何物でもないだろう。
ただの暇潰し。
王者の貫禄ってか。
「…同じシャナちゃんだけど…性格真反対すぎない? 何をどうしたら、あんな捻くれるんだか」
オムレツを食べながら、ユエがため息を吐く。
彼女も僕と同じ考えに至ったようだ。
「僕らの所は王政だけど、こっちは女王政だからね。それに、優秀な姉君であるソルフィアナがいた。推測にはなるけれど、ソルフィアナを遣わしてシンクの様子を伺っていた辺り、シャナは放ったらかしだったんじゃないのかな」
跡継ぎの教育はソルフィアナへ。
幽閉してしまった息子へ会いに行けず、そちらへ気を回した結果、あのシャナが出来上がったのではないかと思う。
一応淑女教育は受けさせていただろうけど。
「教育も、多分家庭教師あたりに丸投げだったんじゃないかな。こっちでは、お祖母様が僕らのそういう教育を担当してくれていたし、何より僕らが小さい頃は、政務の合間に二人で様子を見に来てくれていたから。長期休暇中なんて、ずっと一緒に過ごしてくれてて…親からの愛情を疑った事なんて、一回もなかったなぁ…」
反抗期らしきものも、僕やシャナ、以下兄弟姉妹には来なかった。
反抗した所で、母様達は余裕で受け止めてくれただろうけど。
偉大なる両親に反抗する気力が湧かなかった、が正しい。
それだけ、僕達兄弟姉妹は両親を尊敬している。
いや、ラゼッタは来るかもしれないけれど。
まだ幼いから。
「ママがいても、シャナちゃんの凶行止められなかったのかなぁ…」
「そこら辺は、ソルフィアナが詳しく知っているだろうね。まぁ、聞きに行く余裕はないわけだけど」
ユエが作ってくれたサンドイッチを頬張り、僕は寝ている三人を見る。
シャナもシンクも、ユタカもぐっすり寝入っているようだ。
姉辺りは匂いに釣られて起きるかとも思ったが、精神的にも疲労していたのだろう。
全く起きる気配がない。
他の三人の分を残しつつ、食事を終える。
僕が寝ていたベッドにユエが横になり、暫くしてから寝息を立て始めた。
壁に背を預ける形で、扉の所へ戻ったツルギの横に行って座る。
何か喋るわけでも無く、僕らは無言で四人を見続けた。
ツルギも僕も、別に共通の話題があるわけではなかったし。
ただ、少しだけ夕陽の記憶を思い出した。
夕暮れ時、夕陽の居残り勉強を呆れながらも、終わるまで待っててくれた
「ツルギさ。マジでぼっちだったよね。僕が話しかけるまで、ずっと教科書と睨めっこしてて。本当、阿呆の夕陽と友達になってくれてありがとう、ツルギ。試験対策とか、雪那と別の学校だったから出来なくて。本当に助かってたよ」
「……そういうの、死亡フラグだって…夕陽自身、言ってましたよ殿下…それに、礼を言うのは…俺の方です。こんな奴と、友達になってくれて…ありがとう、夕陽」
ツルギにしては珍しく、微笑みを浮かべている。
僕も彼に笑いかけた。
「今も友達だけどな。それに、シャナの夫になるって事は僕の義兄だ。姉さんをよろしく頼むよ、義兄さん」
僕は拳をツルギの方に差し出す。
彼も拳を突き出し、僕と合わせた。
「当たり前だろ。シャナの事は絶対に守る。彼女は、俺にとって宝だ。自分でも自覚しているが…こんな、表情筋が死んでる奴…通常なら、誰も付き合おうなんて…思わないから。別に、顔が良いわけでもないし…」
ふっ、とツルギは自嘲気味に笑う。
母親譲りのとんでもない美人な姉と付き合えてるんだから、自分の幸運は使い切ったのだろうな、なんて思っていそうで、僕は苦笑した。
「シャナは顔なんて見てないって。姉さんは、心根でお前に惚れたんだから。不器用だけど優しいお前だからこそ、シャナはフラれてもお前の事を想っていたんだ」
途端僕の方に枕が投げられ、それを片手で受け止める。
やる奴なんて一人しかいなくて、枕をどかしながら僕はニヤリと笑った。
「おはよう、シャナ。寝覚め最悪だろ」
「ほん…っと、最悪!! グンジョウの馬鹿! なんでそれツルギ君に言うかなぁ?!」
ツルギが扉から離れ、シャナの方へ行くと姉を抱きしめる。
小声でシャナへ何か言ったようだが、僕には聞こえなかった。
姉は少し頬を染め、うん、と頷く。
どうやらツルギに口説かれたようだ。
良かったな、シャナ。
まぁ、良い雰囲気な所申し訳ないが、今度はツルギが休む番なので二人に声をかける。