my way of life   作:桜舞

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363話『可哀想な人ね、貴女って』

「俺が…俺達が、仇討ちしてやる。俺だって、会った事はないが…両親殺されてるんだ。あの魔王に一矢報いなきゃ、弔いにもならねぇだろ」

 

そんな事が出来るのかと、二人は疑いの目をシンクに向ける。

僕は弟の背後から、二人に声をかけた。

 

「僕達が必ず倒すよ。君達の両親の無念、そしてこちらの僕の両親の無念。十倍と言わず、百倍にして返してやる。その後で君達を解放する。ここに留まるも良し。国許に帰るも良しだ。それは君達の好きにしてくれ」

「お前は…」

 

ユエとユタカが、僕を呆然と見つめる。

まぁ、もう一人のグンジョウが出てきたら驚くだろうけど。

二人は僕の目を見つめ、頭を下げてきた。

 

「…すまない、頼む…」

「あのクソアマ…多分、謁見の間にいると思う。馬鹿と何とかは高い所が好きだって言うだろ?」

 

うわぁ、こっちのユエも口悪い…。

異性だとしても、性格とかはほぼ一緒なんだなぁ…。

 

そう思っていると、脇をつつかれる。

いつの間にか僕の隣にユエが立っていて、横目で睨んでいた。

 

だから読むなっていうのに。

 

「情報提供感謝する。行くぞ、シンク」

「あぁ。またな、お前ら」

 

シンクは立ち上がり、二人に背を向ける。

部屋から出て暫くしてから、僕は弟に尋ねた。

 

「二人と会った事あるって、前言ってたけど…話すくらいの仲だったのか?」

「シャナが取り巻きとして連れてきた、数回くらいでな。俺を虐めるように命令されて…まぁ、ごめんって謝りながら叩かれはしたよ。全く力入ってない叩き方だったけど。側から見りゃ、殴る蹴るな暴行されてるように見えるけど、全く痛くなくて。こいつら優しいんだな、なんて思った」

 

それを聞いていたユタカから魔力波が漏れて、この世界のシャナに怒ってるんだろうな、と察する。

 

「ユタカ、昔の事だから」

 

シンクが宥めるように言うが、彼女は無言で首を横へ振った。

大事な人が虐げられていたなど、ユタカにとっては許せないのだろう。

まぁ、僕も許せないけど。

 

「楽に殺してやらない。弟を虐めた事も、精霊達を殺した事も。泣いて謝ったって、絶対に許さない」

「シャナ、感情的になるな。それこそ奴の思う壺だ。シンク、指揮は出来そうか?」

 

僕は振り返り、姉に落ち着くよう告げる。

そしてシンクへは、冷静に対処出来るか聞いた。

 

「…無理そうなら頼む。俺も冷静にあいつに対応出来るかって言われたら…ちょっと分かんねぇ」

「分かった。ユタカ、ツルギ、ユエ。お前達は前に行け。シャナ、中近距離は出来るな? シンクは僕と一緒に後方へ。リンク繋いでくれ」

 

隊形を組み替え、僕はシンクとリンクを繋ぐ。

自分だから魔力循環が良く、すぐ体に馴染んだ。

 

謁見の間に到着した瞬間、ユタカが魔武器を取り出し扉を粉砕する。

 

「…なんて美しくない登場の仕方なのかしら。流石あのおじ様の子。粗暴すぎるわ。まぁ、そこの愚弟とお似合いではあるけれど」

 

玉座で足を組み、頬杖をつきながら僕らを見下すように、魔王であるシャナが笑っていた。

豪奢な装飾品、黒いドレス。

いつものように、悪趣味としか思えない装いだ。

 

「…シャナ、二つ選択肢を与えてやる。ここで大人しく捕まり、改心して罪を償うか。もしくは僕達に倒されるか。どちらか選べ」

 

僕がそれを提示すると、魔王のシャナはクックッと肩を揺らしながら更に笑い始める。

 

「そちらのグンジョウはお優しいのねぇ? いいえ、凡愚とでもいうのかしらこの場合? あたしが改心……? するわけ無いでしょう?! あたしはこの世界で最強なのよ?! そして何者よりも美しい!! お父様も、お母様も! おば様もおじ様も! みんなあたしに手が出なかった! あたしより弱かった!!」

 

ダンッ、と魔王は肘置きを叩いた。

情緒が不安定になっているのか、もしくは演出で叩いたのか。

どちらでも良いが、警戒はしておく。

 

「それなのに、あたしが一番なのに。お父様もお母様も、あたしよりソルフィアナが女王の座に君臨する事を是とした。あたしの方が美しく、優秀なのに、口を開けばグンジョウグンジョウと…!! だから証明してやったのよ。あの四人を殺す事で、あたしが女王に相応しいってね!!」

「……可哀想な人ね、貴女って」

 

僕の前にいたユエが、ポツリと呟いた。

その言葉が届いたのか眉が吊り上がり、魔王の表情が歪になる。

 

「…はぁ? あたしが、可哀想ですって?」

「そう。貴女は可哀想な人。だって、構って欲しかったから、自分を見て欲しかったから、こんな事をしたとしか見えない。自分が何をした所で認めてもらえないから。だからシンクを虐げ、両親や立花夫妻を殺した」

 

ユエの目が真っ直ぐと、魔王を射抜く。

 

「ねぇ、虚しくない? 自分を認めてくれるはずだった人達が、みんな死に絶えて。自己顕示欲を満たせなくて。唯一の弟であるシンクはもう、貴女を認めるはずもない。貴女はこれで良いと思っているの?」

 

魔王は立ち上がり、地面を踏み鳴らした。

まるで、小さい子が駄々をこねるように。

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