my way of life   作:桜舞

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366話『私の中の雪那』

でもさ、とシャナは続けて僕へ指を差してきた。

 

「そのおかげで隠し部屋見つけられたんだから。あたしの探究心に感謝してよね」

「隠し部屋?」

 

周りを警戒しながら、ツルギが聞き返す。

うん、とシャナは頷いた。

 

「さっきグンジョウが言った通り、教会とか王都の外に続いてる所は見つけたんだよ。あと数カ所出口は見つけた。でもね、一個だけ。外に通じていない扉があったんだ」

「開けてみたら書斎でね。何だここって思っていたら、親衛隊から話を聞いた母様が飛んできて、僕とシャナはお説教。後日聞いたら、お祖父様が雲隠れするために作った部屋だって、父様が言っていたよ」

 

そのせいで、自分が代わりに政務をする羽目になった。

まぁ、あの女の顔を見ずに済んでいたから別に良かったが。

シャルと婚約していた後なら、引っ張り出してやらせていたけどな。

 

なんて、その話の直後に言ってたっけな。

隣にいた母様も困ったように笑っていたけど。

 

「ツルギ君、そこ右」

「わかった」

 

シャナの指示通り、ツルギは十字路を右に曲がる。

 

「…ここ、外に通じてるって言うんなら…外には空気があるって事だよね? やっぱり、暗いだけ?」

「そういえば。普通に呼吸出来てるね?」

 

ユエが疑問を口にし、姉も首を傾げた。

まぁ、それは後で解明すれば良いだけなので、今は一刻も早く目的地に到着する事が優先事項だ。

 

暫く歩くと、目の前に扉が見えてくる。

僕はドアノブに手をかけ、開いた。

なんの変哲もない書斎だが、一部空間が歪んでいる。

 

「やっぱり、ここだったか…」

「アオ、やっぱりって? どうしてここだって思ったの?」

 

ユエが疑問を覚え、尋ねてきた。

確かに、普通なら隠し部屋に魔王の所へ通じる道があるだなんて、思わないだろう。

だが、先程シンクとリンクを繋いだ際、見えてしまったのだ。

 

この部屋の一部の空間が歪んでおり、そこへ僕らが突入する様が。

そして、魔王と対峙している姿が。

 

どうやら、シンクの星読みが僕の方で発動したらしかった。

それを説明すると、シンクが少し心配そうな顔を向けてくる。

 

「大丈夫か? 脳に負担いってないか?」

「問題はない。見えたのは一瞬だけだったから。だけど、少し休憩した方がいいか…?」

 

敵前で休憩するのもどうかと思ったが、若干疲労を感じているのも事実で。

疲労を推して魔王との戦闘に臨んだら、最悪の結果になるかもしれない。

どうしたものかと悩んでいると、ユエが僕の服の袖を引っ張ってくる。

 

「…どうしたの? ユエ」

「アオがもらった、大精霊を呼び出せる権利。あれって一回限りなのかな?」

 

一度だけ、と言っていたから多分そうではないかと思う。

シャナに問うた所で分からないだろうなぁ、なんて考えながら姉を見た。

 

「ん? 多分、各大精霊一回だけだと思うよ?」

「…うん。思考を読み取って、意思疎通してくれるのは助かる」

 

なら、と僕はある大精霊を呼ぶ事にした。

 

「ノーム」

 

僕がそう言うと目の前の空間が歪み、老人の姿をしたノームが現れる。

 

〈如何様の呼び出しか、愛し子の弟〉

 

僕をそう言うという事は、彼は僕らの世界のノームのようだ。

まぁ、こちらの世界の大精霊達は、呼び掛けに応えてはくれないだろうけど。

 

「休憩する為の場所が欲しい。敵に攻撃されても崩れないような。場所が地下だから、貴方が適任と思い呼んだ。お願い出来ないだろうか、大精霊ノーム」

〈そんな些細な事か。まぁ良い。ほれ〉

 

少し地面が揺れ、書斎の横に大きな穴が開く。

中を覗くと、僕ら全員が休憩出来るだけのスペースが作られていた。

僕はノームに向き直り、頭を下げる。

 

「感謝を。大精霊ノーム」

〈これくらい容易い事だ。愛し子、それに愛し子の弟よ。あの空間はとても嫌な気配がする。我々も一度きりしか手助け出来ん。備えは十分にな〉

 

ノームはそう言い、消えた。

元の世界に帰れたら、もう一度礼を言いに行こうと思い、僕らはノームが作ってくれたスペースに入り、各々腰を下ろす。

 

〈ユエ。桃華の事だけど〉

 

僕の隣に座って目を閉じていたユエに、念話で話しかける。

彼女は薄目を開け、無言で僕を見つめた。

 

〈僕がどんな選択をしても、君は受け入れてくれる?〉

〈……それが、王太子としての選択なら。貴方の責務に則ったものなら、私は従う。でも、私情なら…私は桃華を殺す。そうでなければ、私の中の雪那が納得しない。先に死んでしまったけど、雪那()夕陽君(貴方)を守りたかった。もう二度と、貴方を失いたくない〉

 

ユエはそう言って、瞼を閉じる。

僕は彼女の肩を抱き、自分の方へ寄せた。

シャナやツルギ、シンクも目を閉じ、少し仮眠をとっているようで、僕もユエの頭に頬を寄せ、眼を閉じる。

 

ユエ、愛してるよ。

でも多分、僕が選ぶ選択次第では、君を大いに傷つける事だろう。

それでも、僕はこの道を後悔する事は決してない。

 

僕は王太子であり、次代の王になるのだから。

だから、心の中で君に謝るよ。

ごめんね、ユエ。

愚かで、浅はかな考えしか出来ない僕を許して欲しい。

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