「…僕はグンジョウであって、そうではありません」
「…わかっている…俺の意識も、もうそろそろ消える。転生者だからかな、死して尚…未練を残していたようだ…。だから、伝えて欲しい…ちゃんと、俺もナズナも、お前の事を愛していたと…もっとお前と、過ごせば良かったと…周りの目など、気にせずに…。すまなかった、グンジョウ…」
そう言い終わると、母様は明らかな隙を見せる。
僕はそれを逃さず、斬り伏せた。
「…ありがとう…息子を…頼む……ナズナ……」
倒れた母様は父様の方へ手を伸ばし、動かなくなる。
父様の方を見ると、僕と同時期にツルギから倒されたようだった。
母様の方へ手を伸ばすかのように倒れている様を見て、僕は魔王を睨みつける。
「死者を冒涜するなど…畜生以下に堕ちたな魔王」
「言葉を返すようだが、お前達ブリリアント家など畜生以下、家畜にも劣る生き物ではないか。まぁ、良い。そら、次の余興だ」
魔王の魔力波から、今度は巨大なサイクロプスが複数体出現した。
全てを相手していたら、僕らの体力も魔力も尽きてしまう事だろう。
それこそ、魔王の思う壺である。
「シルフ、イフリート…ミラ様。お願いします」
僕が彼らを呼ぶと、僕らの頭上に疾風と爆炎、そして空間が捩れ、ミラ様が現れてくれた。
三人の大精霊は、サイクロプス達を見ている。
〈こんな小物相手に我々を呼ぶとは…軟弱者か、愛し子の弟〉
〈文句言うなよ、イフリート。元素の精霊の前だぞー〉
筋骨隆々で炎を身に纏ったイフリート、幼子のような出立ちで、薄い羽が生えているシルフ。
その二人を従え、鋭い眼光をサイクロプスに向けるミラ様。
重圧が凄いが、僕も魔王から目を逸らさず三人へ言葉を告げた。
「大精霊イフリート、大精霊シルフ、元素の精霊王ミラ様…眼前のサイクロプス達の相手、お願いします」
〈あいわかった。イフリート、シルフ。私が許す。存分にその力を振るうが良い。私も久々に出よう。我々精霊の、愛し子達の為に!!〉
暴風と爆炎が混じり合い、サイクロプス達に襲いかかる。
それを、魔王はつまらなさそうな目で見つめていた。
僕は地面を蹴り、ツルギと同時に再び魔王へと剣を振り下ろす。
「つまらぬ。やはり、セルジウスは王になるべきではなかった。こんなくだらぬ余興を見たのは初めてだ。桃華、顕現せよ」
僕とツルギの攻撃は、魔王の前に現れた桃華によって阻まれた。
彼女の体からは粘質を帯びた触手が生え、その触手の先には魔王の遺物が握られている。
「…ア゛…ア゛…ァ゛…」
僕には刀、ツルギには籠手で対峙している桃華から掠れた声が聞こえ、彼女は顔を上げた。
顔の半分が溶け、左目は赤く染まっている。
その異様な様に、僕は驚愕した。
確か、桃華の目は僕と同じ青だったはず。
それがどうして…。
「疑問を覚えているようだな、今代の王子。こいつを魔王の武器庫として、運用してやっていたのだがな。最近は拒否反応とでもいうのか? そのように体が溶けてきてな。それを抑える為に、魔眼を埋め込んでやったのだ。全く…罪悪感を覚え、自害するようになってしまった時はどうしたものかと思ったが」
魔王は何処から出したのか、ワインボトルとグラスを持ち、グラスに注いだ後それを飲み干した。
「…貴様…っ!!」
「自害など無駄だと悟ったのは何回目だったか? なぁ、桃華。自害しても死ねぬと気付き、絶望の果てに精神が壊れたのだったな? 呆れを通り越して滑稽だと、今も尚思ってはいるが」
冷静さを欠いたらダメだ。
こんな挑発に、乗ってはいけない。
桃華と拮抗しながらも、シャナ達の方をチラリと見る。
サイクロプス達の相手をミラ様達が、魔王の魔力波から出現する魔獣達をシンクとユエが抑えてくれている。
シャナはといえば長い詠唱をしているようで、目を閉じ何かを唱えていた。
「…お兄、チャ…コロ、して…」
「死ねぬから兄に殺害するよう頼むか! まぁ良い。次の余興だ。今度は存分に私を楽しませてくれよ?」
魔王が指を鳴らすと、桃華の影から影人でも言うのか。
魔王の遺物らしき武器を持った十人が現れた。
影人は、桃華と対峙している僕達へと襲いかかってくる。
「我が魂の深淵より湧き上がる力を解き放て。宇宙の闇、星屑の輝き、時空を超え、我が手に未来を!! …お前らの相手は、このあたしだ!!
シャナの背後に大量の魔法陣が出現し、音速を超えた星を影人へと降り注いだ。
一瞬だけ影は霧散するが、すぐに体を戻しシャナへと標的を変える。
「シャナ!!」
「問題ない!! 集中しなさいグンジョウ!! 隙を見せるな!!」
姉の叱咤に、僕はギリっと歯を食いしばった。
桃華の刀をノワールで弾き飛ばし、蹴りを叩き込む。
僕の左側へと彼女を吹き飛ばし、ツルギに言った。
「桃華の相手を頼む!! 絶対殺すな!!」
「…っ…! 任された…!!」
僕に蹴り飛ばされた桃華が起き上がるのと同時に、ツルギが攻撃を仕掛ける。