my way of life   作:桜舞

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370話『チェックメイトだ、桃華』

そして、母様は魔王と僕を見る。

 

「…ユエちゃん、先に言っておくわね? これから起こる事は、あたしでも対処は出来ません。正気を保ちなさい。そして、グンジョウの選択を尊重してあげて」

「王妃様…?」

 

ユエが戸惑いの声を上げ、母様を見上げた。

僕の目の前にいる魔王は母様を睨みつけながら、その体が灰になっていく。

もう何も出来ないだろうと、僕は背を向けた。

 

「せめて、せめて一矢は…っ!!」

 

僕の背後で魔力が練られる。

体に残った残存魔力で、魔法を放とうというのだろう。

僕はそちらを見ず、一言呟いた。

 

魔力搾取(エナジードレイン)

 

魔王の体から魔力が抜け、僕に入る。

流石、カヅキおばさんがくれた切り札。

少し考えて実践しただけで、叶ってしまう。

 

僕は歩き、ツルギに拘束されている桃華の元まで行く。

殺すなと言ったから、彼は従ってくれたのだろう。

 

「ありがとう、ツルギ。…皆に言っておく。僕は、桃華を助けたい。彼女の体には、魔王の遺物が埋め込まれている…それを収集、封印するのが王族の使命であり、本懐だ。だが、彼女は被害者でもある。彼女を封印するのは容易い。しかし、そんな短慮な事を、僕はしたくないんだ。今は、彼女の精神を壊すけど…いつか…いつかきっと、桃華の精神を治す方法を見つけてみせる」

 

僕に残された時間は、あと3分。

カップ麺が出来上がる時間だな、なんて頭の片隅で考えながら、桃華の頭部に触れた。

 

◆◆◆

 

目を閉じていたようで、僕は瞼を開ける。

眼前に広がる光景を見て、少しだけ苦笑した。

僕の精神世界みたいに、本がびっしりと天井にまで収まっていたからだ。

所々に窓がついており、そこから青空が見える。

 

「流石兄妹って所かな…ね、桃華」

 

白いワンピースを着た桃華が、ロッキングチェアに座りながら本を読んでいた。

彼女は顔を上げ、僕同様苦笑する。

 

「…殺してって、お願いしたのに」

「君を生かすか殺すかは、ゲームで決めようじゃないか。なぁ、桃華。お前、チェスは出来たよな?」

 

近場のローテーブルにチェスを見つけ、彼女に尋ねた。

桃華はロッキングチェアから立ち上がり、ローテーブルに備え付けられた椅子に座る。

僕も真向かいに座り、足を組んだ。

 

「お兄ちゃんに、暇だからって言われて教えられながら覚えたよ。でも、あたしが弱いの知ってるはずだよね?」

 

桃華は困ったように微笑む。

僕はそれを見つつ、目を細めた。

 

「なら賭けをしよう、桃華。万が一、お前が僕に勝てたらお前の望み通り殺してやる。僕が勝ったら…そうだな。僕に一箇所だけ、傷を付けていい。どうだ?」

「どうだって…」

 

困惑しながら、桃華は僕を見つめる。

そんな彼女の目線を無視し、チェス盤に駒を並べていった。

 

「それ、公平じゃ無いと思うよ。お兄ちゃん」

「グダグダうっさい。あと、僕が勝ったらお前には生きてもらうからな。白が先行だぞ、桃華」

 

僕の言葉に桃華は驚き、次いでG7のポーンを動かす。

 

「それ、雪那…ユエが許すと思う? あたしは、雪那を、お兄ちゃんを殺したのに」

「母様の口添えがあったから、許す許さないに関わらず、僕の選択に従ってくれるはずだ。僕は勝って、お前を生かす」

 

僕はB2のポーンを動かし、桃華を見た。

彼女は盤面に視線を落としながら、口を引き結んでいる。

コト、コト、と駒を置く音だけが室内に響いた。

 

「チェック」

 

桃華のビショップが、僕のキングの斜め前に来る。

それを、僕はキングで潰した。

 

「簡単にチェックメイトにさせるか」

「むぅ…」

 

ビショップで再度チェックを入れられたので、またキングで潰す。

ナイトで攻めてくるも、ポーンで取った。

これで、桃華のナイトは全滅。

そう言えばビショップもいるなぁ、なんて取った駒を見つつ思った。

 

「うぅ…」

 

ルークを動かし、ポーンを取った桃華だったが、その場所に僕のルークを動かして駒を取る。

これで、桃華の残りの駒は五つ。

 

桃華がポーンを動かし、またチェックを取られたが、クイーンで潰した。

残り四つ。

 

「お兄ちゃん…三回勝負とか…」

「却下」

 

桃華が動かした駒をすかさず取っていく。

残り二つ。

キングとクイーンだけが、桃華の陣に残った。

 

「これで入れる保険ないかな…」

「何の保険だよ。生命保険とでも言うつもりか?」

 

桃華がクイーンを動かす。

そこをすかさず僕のクイーンが討ち取った。

残り、一つ。

 

キングを動かして逃げようとはするが、如何せん僕の手駒にはクイーンもルークもナイトもビショップも、全て残っている。

どの方向に逃げても、クイーンかルークが桃華のキングを撃ち落とす。

 

「チェックメイトだ、桃華」

 

僕がそう言うと桃華は盤から顔を上げ、ため息をついた。

 

「だから弱いって言ったのに! お兄ちゃん意地悪だよ!」

「なんとでも言え。桃華、約束だ。僕を傷つけてもいい。だけど、お前は生きるんだ。良いな?」

 

僕の体が透け始める。

そんな僕を見て、桃華は悲しげに笑った。




チェスのルールよく分かってないので
マイルールとして目を瞑ってください…
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