my way of life   作:桜舞

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372話『話、あるんだけど』

そして妹である桃華の名を聞き、僕はシャナに尋ねる。

 

「桃華は? というか、あの後どうなった?」

 

僕の問いに、カヅキおばさんが答えてくれる。

僕が倒れた後、魔王がいた空間が崩れ始めたので、僕に縋り付いて泣くユエ共々みんなで脱出してきたそうだ。

その際、桃華も一緒に連れて。

 

錯乱するユエを魔法で眠らせ、僕や桃華、怪我をして動けないユタカを、おばさんが影に沈めて運んでくれ、元の世界に帰還した。

元のゲートは残したままで、自由登校の間、シンクやシャナが向こうの復興を手伝っていたらしい。

 

「まだまだ現状は芳しくないけど、それでも良い方向には向かってるよ。精霊達の所にも、話し合いには行っていたしね」

 

シャナが苦笑しながら言う。

こちらの精霊の愛し子である姉は、何度もあちらの祠に足を運び、精霊達の説得を続けているようだ。

向こうの世界が暗かったのも、光の精霊達が皆祠に引きこもってしまったからだと、シャナは言った。

だから、向こうのリューネの民は無事…とは言いにくかったが、それでも生存していて、ソルフィアナの統治の元、姉とシンクの手伝いもあり、復興して来ているそうだ。

 

「ユタカの怪我とかは?」

「問題はない。お前よりは軽傷だからな。筋肉断裂、出血による昏倒、右腕はナツキが治したとはいえ、神経を繋ぎ合わせるのに時間を要した。視神経が損壊し、目玉が壊死寸前の所を摘出。私達ならともかく、お前は常人だからな。むしろもっと寝ていると思っていたぞ、グンジョウ。流石ナツキの子だな」

 

それ褒められてんのかなぁ…。

いや、おばさんの事だから褒めてるんだろう。

通常なら、意識が回復するまで時間を要するんだろうから。

 

「桃華ちゃんは同じ病院に入院してるよ。でも、おばさんの術式が組まれてて、桃華ちゃんのお部屋は、通常は見えないようになってる。動けるようになったら、連れてってあげるよ」

「…うん、わかった。ありがとう、シャナ」

 

そして僕はおばさんを見、頭を下げた。

 

「おばさん…立花卿。僕の我儘を聞いてくださり、ありがとうございます」

「別に、私に礼を言う必要はない。アレの管理責任はお前に一任されている…険しい道だが、それでもその道を進むと決めたんだ。私がとやかく言う問題じゃないさ」

 

おばさんはそう言って僕の頭を撫で、病室を出ていく。

じゃあ、あたしも行くねと言って立ち上がった姉に、僕は一つ頼み事をした。

 

「シャナ、ユエにごめんって伝えてくれない?」

「それは自分で言いなさい。あたしを伝書鳩みたいに使うな」

 

ペチリと額を軽く叩かれ、シャナは病室を出ていく。

 

…ユエ、お見舞い来てくれなさそうだから、お願いしたんだけど。

大っ嫌いって言われちゃったしなぁ…。

 

リクライニングを倒し、横になる。

そして、盛大にため息をついた。

 

◆◆◆

 

ノーム1の月になり、義眼を埋める手術をしてもらった僕は、包帯を取った後鏡を見て、おばさんに対して苦笑いを浮かべる。

 

「なんで、左目金なんですか…」

「色の指定はなかっただろ?」

 

いや、なくても普通、残ったもう片方と同じ色にしませんかね?!

 

なんて抗議した所で無駄なので、僕はため息だけついた。

多分、何かしらの意図があってしたんだろう…多分。

 

いや、おばさん愉快主義者な所あるから、オッドアイなんて面白いだろってやった可能性も捨て切れないんだよなぁ…。

それなら自分でやれよって話なんだけど。

おばさん義眼らしいし。

 

数日後に退院という話をし、おばさんは病室から出ていく。

その際、病院内は歩き回って良いという事だったので、僕は鈍った体を動かす為に桃華の病室に向かう事にした。

 

「うわぁ…体力落ちたなぁ…」

 

そりゃ、二ヶ月も入院して基本的に横になっていなければならないから仕方ないのだけれど。

少し息が上がりつつも、桃華の病室に辿り着く。

 

話を聞く所によると、一応点滴で栄養を送ってはいるが、基本的には魔王の遺物の影響なのか桃華の体は衰える事がないそうだ。

そして、女性が入室すると物凄い拒絶反応が出て暴れるそうで、おばさんが面倒だと言いながら男性型の躯体で診察しているのだそう。

 

部屋に入室すると、ベッドに横たわる桃華の姿があった。

僕は備え付けられた椅子を持って来て、ベッド脇に座る。

虚な目を天井に向けながら、何も言葉を発さない妹の頭を撫でた。

 

「…桃華。お前は、殺してくれなかった僕を恨んでいるかもしれない。でも、お前が生きてて…僕は嬉しいよ。話せるようになったら…やり直そう? ちゃんと、兄と妹として。殺し合う関係ではなく、あの頃みたいに」

 

桃華の手を握りしめると、指先が動いたような気がした。

それでも、妹の口からは何も言葉が出る事は無く、僕はもう一度桃華の頭を撫で、病室から出る。

 

歩いて暫くして、声をかけられた。

 

「話、あるんだけど」

「…ユエ」

 

黒のワンピースと、蝶モチーフの上着を着たユエが腕を組みながら、僕を睨みつけている。

そんな彼女に、僕は笑いかけた。

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