my way of life   作:桜舞

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380話『番外編1-1』

「お前達、旅行に行く準備をしておけ」

 

カヅキおばさんが城の食堂に来て、僕やシャナ、ユエやユタカにそう告げた。

 

これは、僕が中等部に上がった頃の話だ。

 

あの時は、ユエと付き合おうなんて微塵も考えてはいなかったし、勿論シンクもいなかったから、ユタカは僕に引っ付いて、ユエといつも喧嘩をしていた。

シャナも今とは違って、もっとお気楽…いや、アホな性格だった気がする。

 

「なんでまた唐突に…おばさん、旅行ってオーシアにですか? それともベルカへ?」

 

近場で済ませてくれないかな、なんてあの時の僕は思っていた。

王立図書館にまだ読んでいない本が沢山あるし、この時は確か冬季休暇に入ったばかりで、そこへ通っている最中だった。

 

「日本だ。あぁ、言語とかは気にするな。私が翻訳魔法で何とかしてやる」

「ママ、日本って何処?」

 

僕の後ろから抱きつき、体重を乗せないように頭へ顎を置いていたユエが、おばさんに尋ねる。

僕が左利きだから、右腕に抱きついていたユタカも首を傾げていた。

 

「私やナツキの故郷だ」

「それは僕達だけでしょうか?」

 

んなわけあるか、とおばさんは言う。

じゃあ母様達も一緒か、と思い至った僕は少し眉を寄せた。

 

「今結構、父様達の執務溜まってませんでしたっけ?」

「溜まってるな? だからなんだ?」

 

だからなんだと言い切ったよ、この人。

 

父様や母様が旅行なんて出来るわけがないと言いたかったのだが、そこはおばさん。

不可能を可能に変える女性なのを、この時の僕はすっかり失念してしまっていたのだ。

 

「旅行に行った直後の時間軸に、戻ってくれば良いだろう?」

「うわぁ、おばさんすごーい! それ、母様達にもう話してあるの?」

 

僕の向かいで紅茶を飲んでいたシャナが、おばさんに尋ねる。

今からだとおばさんが言ったので、姉は立ち上がり、二人に言ってくると駆け出して行った。

それを見送り、僕は抱きついている二人に離れるよう告げる。

 

「やだ。アオちゃん暖かいんだもん」

「成長途中の胸当ててるのに、なんでグンちゃん動揺しないの?」

 

この時、ユエが好きだと自覚していれば、ユタカのこの行動は許さなかったのになぁ。

 

僕は鬱陶しそうに、二人へ離れるようもう一度言う。

渋々といった感じで離れたので、僕は立ち上がった。

 

「なら準備してきます。旅程日数はどれくらいで?」

「2泊3日予定だ。お前達も準備してこい。グンジョウとデート出来るかもしれんぞ?」

 

おばさんの言葉に、ユエとユタカは嬉々として扉へと走っていく。

そんな二人を見つつ、僕はゲンナリしながら言った。

 

「しませんけど…?」

 

本当に、ユエが好きだと自覚していれば、日本でデート出来たかもしれないのに…!

この時の僕、鈍感すぎるだろ…!!

 

◆◆◆

 

母様達にも話が行き、そのままの髪では目立つからと向こうでは一般的な黒髪へ、おばさんから魔法をかけてもらう。

 

「わぁ…! 黒髪のアオちゃん格好良い…!!」

「素敵! グンちゃん、写真撮ろ写真!!」

 

私もとユエが言い、いつも通り僕の両側に抱きついた二人に、僕は呆れを通り越した溜息をついた。

 

「あたしはー?」

「え、普通」

「何処にでもいる一般人だよね、シャナちゃん」

 

僕と一緒に黒髪にしてもらった姉が、双子に意見を求めるが一蹴されてしまう。

友達なんだから、せめて何かしら褒めてやれよと思った。

 

「グンジョウ…」

「そんな泣きそうな声と顔をするなよ…。シャナ、背が高いし顔も良いから、此処でもそうだけど向こうでも声かけられそうだなとは思う」

 

とりあえず褒めてやると、シャナがふふんと嬉しそうに腰に手を当て、胸を張る。

一体誰に自慢してるんだこの姉は。

 

「黒髪ねぇ…久しぶりに自分の髪がそうなってるのを見たわ」

「その髪色のシャルも美しいな。ナツキの時のお前を思い出す」

 

父様と連れ立って現れた母様は、自分の髪を摘みつつ呟く。

母様の肩を抱き、父様はとても機嫌がいいように笑っていた。

 

「あれ? ユーリおじさんは?」

「パパは下の子達の面倒見る為に残るって。メイドや親衛隊の人達に任せて、ママとデートすればいいのにね?」

 

魔法陣の準備をしているおばさんの横に、夫であるおじさんの姿が見えず首を傾げると、ユエが僕を見上げて言う。

まぁ、下の子達も連れていったら確かに大変ではあるし、ラゼッタやリオンちゃんなんてまだ一歳だ。

 

いや、寧ろ自分の息子預けて旅行とか良いのか母様?

 

「母様、ラゼッタ大丈夫なの?」

「連れてくって言ったのだけれど、ユーリさんから最近執務とかで大変だったから、ナズナ君とゆっくりしておいでよ、って言って貰えたの。お言葉に甘えようと思って」

 

リーゼやアンナもだったけど、弟妹は物心つく前は母様へベッタリになるようだ。

それこそ、父様が抱っこなんてしようものなら泣き喚いて大変だった。

だから執務中でも片手で子供を抱えながら、母様は仕事をしているわけだ。

 

ギャン泣きしなかったかな、ラゼッタ…。

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