「グンジョウ、あれどうすんの」
「僕の事について言ってはいるけど、僕には預かり知らぬ事だから知らない。勝手にすれば」
ソファーの背もたれに肘を付き、シャナが双子を振り返りながら言う。
でも、原因は僕だとしても行動を起こそうとしたのは二人だし、僕に責任はない。
責任を取れと言われても困る。
おばさんが二人を引きずり、お風呂場に直行して行った。
その後を母様とシャナが続く。
僕は本を読んでいたわけだが、父様は何してるんだろうとチラリと見た。
床に置いてあった荷物から書類を出し、何かを書き込んでいる。
その姿に少し引いた。
「父様…仕事してるの?」
「そうだが? いくら、旅行に行った直後に帰れるからと、その間何もしないというのは性に合わなくてな。簡単な決議のものだけを選んで持ってきた。シャルとカヅキには内緒だぞ? 休暇だというのに、仕事をしていたら大目玉を食らってしまう」
ニッ、と父様は笑うが僕は、多分もうバレてると思うよと、心の中で考える。
世界最強の二人に隠し事なんて、出来るはずもないから。
案の定、母様達がお風呂から上がる前に書類を隠した父様だったが、母様とカヅキおばさんからお説教されていた。
それを横目に、シャナが僕に尋ねてくる。
「何あったの、あれ?」
「旅行なのに仕事持ってきてやってたから、二人から怒られてる父様の図」
成程、と姉は納得した。
父様仕事人間だからね。
休めって言っても休まないで、仕事してる時あるし。
その後母様に甘えまくり、寝室から出られないようにしてるのはいかがなものかとは思うけど。
「グンジョウ、先入ってきたら?」
「んー? うん、これ読み終わったら…」
そう言うと、本を取り上げられる。
何をするんだと抗議するが、姉が冷めた目を僕に向けながら、風呂場に指を向けた。
「早く行け愚弟」
「…はい、姉君…」
心なしか声が低くなってる。
こういう時のシャナは本気で怖い。
ユエとユタカが付いてこようとしたが、おばさんの影魔法で雁字搦めにされていたので、僕は安心してお風呂に入る。
シャナ達五人で入ったら少し狭いだろうが、僕一人で入るには広すぎると感じた。
体を洗って湯船に浸かっていると、父様がしょんぼりしながら入ってくる。
「母様から怒られまくったんでしょ、父様」
「…まぁな…。軽めの決裁だと説明したんだが…」
そりゃ、家族で旅行に来ているのにそれはないだろう、と僕でも思う。
さっきまで本を読んでいた僕が言える事ではないけど。
もし、これが母様とデートだった場合、自分とのデートで書類と睨めっこなんてされた日には、怒髪天を突く勢いで父様を詰り、冷笑を浮かべて離れていく事だろう。
まぁ、母様を相手にして、書類なんて見ないだろうけど。
母様大好き人間だし、父様。
「そういえば…お前と風呂に入ったのは何年振りだったか…」
体を洗い、湯船に浸かった父様は縁に頭を乗せ、僕にそう尋ねてくる。
「初等部の時以来だと思うよ。僕が六歳か七歳の時」
「お前、今いくつ…あぁ…13だったな…月日は早いものだ…」
感慨深げに呟いてる所悪いのだが、父様疲れてない?
寝そうになってないかな?
「父様? ここで寝ないでよ? 寝た瞬間、母様に念話飛ばして叩き起こしてもらうからね?」
「問題ない…。そうか…お前達が産まれて、もう13年も経ったのだな。あんなに小さかったのに、今はこんなに大きくなった。喜ばしい事だな、うん」
ガシガシと、父様は僕の頭を乱暴に撫でる。
少しくすぐったくて、僕は笑いを零した。
「背も俺より少し低いくらいか。まだ伸びそうだな?」
「サカネ先生も、成長期だから伸びるぞって言ってたよ。最近は痛く無くなってきたけど」
成長痛とでもいうのか、節々が痛くて仕方ない時がある。
シャナに回復魔法をかけてもらったりするが、それでも治らない時、サカネ先生やおばさんに薬を貰いに行ったりしているのだ。
父様はそうかと、嬉しそうに笑う。
僕らが元気に過ごしてくれて、本当に嬉しいんだろう。
もしかしたら、ヴェスタ神に感謝しているかもしれない。
母様からいわせれば、あんな筋肉馬鹿に感謝しなくても良いと言うだろうけど。
◆◆◆
次の日も観光するからと、就寝する為に僕らは各部屋に戻る。
何時間経っただろうか?
何かが壊れる大きな音がして、僕は飛び起きた。
「グンジョウ…今の音…」
隣のベッドで眠っていたはずのシャナも、僕同様起きたようで不安そうな顔を僕に向けてくる。
日本ってこんな物騒な土地だったか?
いや、今日観て周ったが、平和な土地なんだなって印象の方が強かった。
魔物がいるわけでもない、犯罪者もいるようには見えなかったのに。
僕はシャナにそのまま待機するよう伝え、扉を少しだけ開ける。
通路に人が折り重なるように倒れていて、それ以上扉が開かなかった。
「お姉様!!
リビング方面からそんな声が聞こえ、僕は人を押すようにして扉を半分開けて様子を伺う。