夜景が見える大きな窓も損壊しており、そこにも人が倒れている様子が見えた。
リビングに設置されているソファーに母様が座り、いつもの母からは想像が出来ないような感じで、偉そうにそこへ座っている。
両隣には、父様とカヅキおばさんが立っていた。
三人と対峙するようにいるのは、昼間見た人ともう一人。
部屋が暗いせいと、その人の着ている服が黒だった為、よく目を凝らさないと見えなかった。
「
ギロッと鋭い眼光で黒服の人を母様は睨む。
というかトウカって誰?
「申し訳ありません、
「コイツが止められなかったのは、まぁ…暴力に訴えるわけにもいかなかったんだろう。言葉なり何なりで、止めて欲しかった所ではあるがな。真子に甘い所は治っていないようだな、冬夏」
トウカと呼ばれたその人は、カヅキおばさんの弟なのだろう。
おばさんの言葉に、トウカと呼ばれた人はおばさんが自分の兄だと気付いたようだが、それを叔母様に言うつもりはないようだった。
気付いていないのは、叔母様ただ一人。
「お姉様!! 私の話を…!!」
「聞いている。全く……嘆かわしい。貴様のその執着、もっと別の事に活かそうとは思わないのか。最小限で来た事は褒めてやるが……良い加減にしろ、真子。これが私ではなく、一般人だったらどうするつもりだったんだ、貴様は」
鋭い眼光が、トウカさんから叔母様に向けられる。
いつもの母様なら、僕らに対して怒る時は何がどうして悪かったのか、説明しながらお説教してくるのに。
今の母様は、人ではあるのだけど…何処か人離れした冷たさがあった。
「篠原の権限で金を積むか? それとも口封じで、一家全員殺すか? 貴様はそんなに愚か者だったか? 私の跡を継いだ重責は理解出来る。私に行われてきた教育の数々も、貴様には負担だろう。だが、それが篠原の総帥というものだ。その家に生まれたのだから、責務を果たせ。嫌なら、他の分家の者に跡を任せ、逃げれば良かったものを…」
嘆息する母様に、叔母様が噛み付く。
そんな事しても、火に油なのを理解していないようだ。
「お、お姉様には分かりませんわ!! 逃げられる環境ではないのは、お姉様だって理解しているはずでしょう?! 私だって好きでやっているわけでは有りませんわ!!」
「だから責務を果たせと言っているだろう。世迷言もそこまでにしろ、真子。ここの後始末は私がしてやろうではないか。それで私達に関わるのはもう止めろ。これ以上は、お前も無事では済まぬ。冬夏、真子。これは警告だ。私達の前から去れ」
母様の声が、部屋に冷たく響く。
シャナも僕の背後でその声を聞いていたようで、僕の服をギュッと握りしめた。
二人分の体重が乗ったせいか、扉が音を立てる。
その音に気付いた叔母様が、僕らの方を振り返った。
「誰ですの?! もしかして
「……はぁ…」
頭が痛そうに、母様がため息を吐く。
指を鳴らし、魔法を使って僕らの部屋の前にいた人達を退かした。
「ご、ごめん、母様…」
「母様?! お姉様、
謝りながら部屋の外に出ると、僕の言葉を聞いた叔母様が母様へと怒鳴る。
更に頭が痛そうに眉を顰めた母様は、叔母様の言葉に反論した。
「誰が
目つきも口調もキツくなった母様に、僕らは驚く。
いつもの母様なら、怒ってもそこまで目つきがキツくなる事はない。
これは相当怒っていると感じた。
「シャ…ナツキ、落ち着け。カヅキに執着しているのだろう? そう思っても仕方ないと思う…のだが…」
いつものようにシャルと言いそうになった父様は、母様の肩に手を置いて落ち着くよう説得する。
僕もシャナも、いつもより冷たい口調の母様が怖くて、その場から動けずただ見つめる他ない。
「なら、
「目の前にずっといるだろうが…」
おばさんも頭が痛そうに押さえている。
え、と叔母様が間の抜けた声を上げ、おばさんを見た。