やはり、うちの姉は勉強の事になると全く以てダメ人間である。
ここの脳の作りは、シャナから僕の方へと移ったのだろうか?
「僕はまだ甘い方だからな、シャナ。僕が鬼なら、おばさんや母様はどうなるって言うんだ。別にお前に関しては匙投げてやっても良いんだぞ。代わりに、政務で忙しい母様と、四つ仕事を掛け持ちしてるおばさんからの、スパルタ教育が待ってるだけだからな」
僕の言葉に、うぇぇ…と、嫌そうな声を姉はあげる。
おばさんの指導もだが、母様からの指導もめちゃくちゃキツい。
僕とシャナが幼い頃、幼等部に入る前の話だが、母様から魔法と剣術を習っていた。
今もだけれど、母様の教育はスパルタで、何度僕とシャナは泣きながらやった事か。
痛くても苦しくても、それを扱う事の責任というものを叩き込まれた。
その間、お祖母様からの教育も施されているのだ。
本当にあの日々はキツかった。
だからこそ、僕達は母様に絶対逆らわないようにしている。
多分弟妹達も、僕達と同じ道を歩んだからこそ精神が成長して、同じように親離れしているのかも知れなかったが。
「観念して、僕から教えて貰った方が良いと思わないか?」
「…うぅ…はい…」
頭を垂れて、シャナは素直に勉強を始める。
本当に、最初からいう事聞いてればよかったのに。
なんで無駄な抵抗するんだか。
母様達に出来ないからって、僕に反抗してどうするんだ馬鹿姉。
◆◆◆
「グンジョウ、荷物の梱包手伝ってー!」
寮の部屋で、明日行く修学旅行用に荷物を括っていると、シャナが僕の部屋の扉を開けてそう言ってくる。
「いや、あのさ。収納魔法に入れて持ってけば? 大体、班分けして女子は女子、男子は男子で分けられてんだから。僕がそっちの部屋にお邪魔して、お前の荷物の梱包するわけにもいかないだろ…」
「あ、その手があったか。じゃあ、キャリーケース空で持ってこーっと。お土産でパンパンにするんだー」
それはどうぞご勝手に。
ほんっと、魔力が莫大にある人は良いよな。
収納魔法で運搬出来るんだから。
魔力が少ししかない僕は、本とか小物しか入れらんないっていうのに。
問題が解決した姉は、扉を閉めて自室に戻ったようだ。
僕はため息をついて、梱包作業に戻る。
とりあえず、修学旅行は2泊3日らしい。
修学と名がつくので、日中の移動は勿論制服だ。
あとは下着と寝巻きと…。
と、そこまで考えハッとした僕は、姉の部屋に向かう。
「シャナ、パスポート持ってる?!」
「へ? いや、うん。そこは、おばさんからもシンクからも、何ならツルギ君からも念押しされたから…」
姉は収納魔法から自分のパスポートを取り出し、振った。
その様子に、僕は安堵の息を吐く。
抜けてる姉の事だから、パスポート自体取ってないと思っていた。
僕らが公務で諸外国へ行く時、王族専用の航空艦で行くものだからパスポート自体持って行かないし、あると便利だからと僕は取って持ってはいたのだが、姉自体持っているという話は聞いた事がなかった為、そこを危惧したのだ。
「良かった…なかったら父様にお願いして、急いで発行してもらう所だった…」
「いや、あたしもそう思ってさ。言われた時に父様へ連絡取ったんだよ。そしたら、あたし達全員分のパスポート、母様が持ってるって言うから」
母様用意周到…。
流石、王妃であり篠原財閥の次期総帥だった人だ。
抜け目がない。
いや、むしろ娘が抜けている事を心配したが故の行動だったりするのだろうか?
「グンジョウは?」
「馬鹿にすんな。城に帰った時、自分の部屋から持ち出して来てるっつーの」
ちゃんとあるのは確認してるし、手荷物の方に入れてるので、取り出して見せる事も出来る。
「あるんなら良いや…」
僕はそう呟いて、シャナの部屋の扉を閉めた。
自室に帰り、最終確認をしてからキャリーケースに鍵をかける。
今日も今日とて狂化訓練が施され、おばさんや母様の動きについていき、引き分けにする事が出来た。
「…共通語、頭から抜けそう…」
「やめろ…それは言うな…俺もだから…」
シャナとシンクが、へばりながらそんな事を言い始める。
やめろと言いたいのは僕の方なのだが。
「いや、シンク。お前僕なんだから頭は良い方だろ?」
「だからって、下地があるのとないのとじゃ、天と地ほどの差があるだろうよ。世界がくっついた後、何年経った? 5、6年は経ってるだろ? 俺幽閉されてたんだって。共通語もクソもねぇよ」
それを言われたらお終いなんだけど。
ツルギはと見ると、なんかの単語カードらしきものを収納空間から出して見ていた。
あー、懐かしい。
あれで英語の単語覚えたっけな、じゃなくて。
「ツルギ? それ自分で作ったのか?」
「あ…はい。とりあえず、挨拶と買い物をする時の単語と…あとは断る時の為の単語とか…」
随分極端だな…。
絶対それ、シャナの為だろ…。
僕の義兄になる人は、姉が大好き過ぎて困る。
まぁ、もう明日なので、あとは勝手にしてくれと思った。