「アオ、自由時間の時一緒に回ろ?」
「別に良いけど…人多過ぎて会えるかなぁ…」
一学年千人単位でいるものだから、クラスも1クラス四十人の25クラスある。
僕とユエのクラスは隣同士だから良いものの、婚約者が端と端のクラスの人だって、勿論いるわけで。
「じゃあ、待ち合わせしよ?」
「場所は君が決めて。ベルカに行った事あるんだろ?」
僕がそう尋ねると、ないと言われる。
え、と驚き、僕はまだ修練場にいたおばさんを見た。
「なんだ、グンジョウ。そんな怪訝そうな顔をして」
「いや、二人をベルカに連れて行った事ないんですか?」
僕の疑問に、おばさんはあるわけないだろうと答える。
「何故二人を連れて行かねばならん。別に私だって、それ程ベルカに詳しいわけではないのだが?」
「えぇ…」
あの何でも知ってるおばさんが、知らない事なんてあるんだ…。
「知ってる事だけしか知らんぞ」
「心読むのやめてもらえます?」
僕の思考を読み取ったのか、おばさんがそう言い反射的に返してしまう。
わかりやすい表情をしてるからだと、デコピンされてしまった。
そして翌日、寮から空港までバスが出て、寮暮らしではない生徒ともそこで合流する。
「25もクラスがあると、結構騒然としてるよねぇ」
「リューネの空港が広めで良かったな。全員収容出来てるじゃん」
シャナとシンクが僕の方へと寄りつつ、話をしていた。
僕はシャナの服を掴みながら、片手で携帯を操作してベルカの観光地を検索する。
自由時間に、ユエと周る為だ。
「航空艦も結構大きめの借りれたってよ」
「普通なら3隻か4隻くらい必要だって言ってたよね。まぁ、おばさんが学園に在籍している間は、貸してくれると思うけど。航空艦の運営、おばさん家がやってるんだし」
僕の下と真横から声がする。
まぁ、ガン無視して観光地の場所とか行き方、時間などを調べているわけだが。
そんな僕を、姉弟は見つめてきた。
「お前…会話に参加しろよ…本当ユエが大好きだな…」
「グンジョウ、制服伸びる。掴むならシンクのにして」
僕の携帯の画面を見たシンクが呆れながら言い、シャナに至っては服の心配をしている。
いや、制服の替え何着も持ってるだろお前。
充分に調べられたので、僕は携帯をポケットにしまった。
「で、なんの話してたの?」
「おま…」
僕はシャナの制服から手を離し、姉の手を握る。
こんなに人が大勢いる中で、逸れて別のクラスに行ってましたなんて事になったら、おばさんから怒られる事必至だから。
監督責任とか言って、僕も一緒に怒られるんだからたまったものではない。
「お姉ちゃん、別に子供じゃないんですけどー?」
「ならそれ相応の対応してくれよ。あっちにお土産物あった、こっちになんか綺麗な装飾品があったって、フラフラどっか行くだろお前。集合時間だって言ってんのに」
マジかよ、とシンクがシャナを見る。
だってさぁ、なんてシャナは言い訳を始めたけど。
「航空艦内って、そんな食べられる物多く無いじゃん。途中お腹空くっていうか…」
「多く無くても売ってるだろ…割高だけど」
そこは母様達から渡されてる小遣いがあるんだから、飲み食いだって可能だろうに。
その内、搭乗手続きが出来たようで、人の波が搭乗口に向かって流れ始めた。
僕らもそれに続き、金属探知機があるゲートを潜る。
シャナの番で音が鳴ったので、僕は姉を見た。
「シャナ、なんか金属系持ってる?」
「え? いや、なんも持ってないはず…」
自分の制服のポケットとかに手を突っ込んで、探っていた姉だったが唐突に、あ、と声を上げる。
「これかなぁ…」
シャナはワイシャツのボタンを2個程外し、首元辺りを触っていた。
そこを覗き込むといつの間に付けていたのか、ネックレスの留め具が見え、姉はそれを外そうと悪戦苦闘している。
「シャナ、動くな」
僕は留め具を外し、ネックレスを外してやると姉の手にそれを渡した。
「ありがと、グンジョウ」
「それあっちに乗せて、もう一回潜って。あと
手荷物の方にネックレスを入れ、シャナはゲートを潜る。
今度は鳴らなかったので、あれが原因だったのだなと思った。
僕も普通に通り、自分の手荷物を回収してシャナの所へ行く。
「いつの間にあんなの付けてたの」
「ツルギ君に誕生日のプレゼントしたら、今まで渡せなかったって言われて、あれ貰ったの。嬉しくて、寝る時以外はずっと付けてたんだけど…」
金属探知機に反応するって、結構純度高いぞそれ…。
値段も張ったんじゃないかなぁ…。
相手が王女だからって、気負う必要ないと思うんだけどな。
安物でも喜ぶぞ、うちの姉は。
付けるのにも苦戦している姉の手からネックレスを取り、付けてやる。
ワイシャツのボタンを元に戻し、姉はニコニコと笑った。
ツルギからの贈り物がよほど嬉しかったんだろう。
仲がよろしい事で。
航空艦へ乗り込む時間になったので、僕らはゾロゾロと列を成しながら艦内に入る。