いつも使ってる専用艦とは違い、席がずらりと並んでいた。
前から詰めていくスタイルだったので、座るまで時間がかかる。
とりあえず、僕とシャナ、シンクでの三人掛けになる事は出来たけれど。
「景色見えないね?」
「そりゃ真ん中の席だし? ユタカ何処かねぇ?」
まだ飛ぶ時間ではないからと、シンクは身を乗り出して後方を見る。
僕は収納空間から本を取り出して、読み始めた。
どうせ、ベルカに着くまで数時間掛かるのだし、今のこのペースでいけば、一時間後には全生徒収容出来るだろうと踏んだからだ。
「グンジョウ、ユエちゃんの席確認しなくても良いの?」
「別に。自由時間には合流するんだし、同じホテルに泊まるんだから、就寝時間まで話す事だって出来る。今席の確認したって、どうしようもないだろ」
ページを捲りながら、シャナに返答していると頭を小突かれる。
シャナとは逆方向のそれに僕は驚き、え、と顔を上げると、不機嫌そうなユエがそこにいた。
「アオ冷たい。酷い。確かにそうだけど、少しは姿見ようとか思わないわけ? 一応私、婚約者だし恋人なんだけど。本当、本読むと人格変わるんだもんね、アオは。そんなに本好きなら、本とご結婚遊ばしたら宜しいんじゃないでしょうかね、グンジョウ王太子殿下」
「え、ちょ、待ってユエ?! 無機物と結婚出来な…じゃない!! そんな不機嫌にならない…あぁ?! だから待てっての?!」
スタスタと自分の席に戻って行ったユエを、僕は慌てて追いかけようとする。
途端、おばさんから帳簿で頭を叩かれたが。
「いっ…?!」
「痴話喧嘩なら、離陸してからにしろ。もうそろそろ出発するぞ。シートベルトをして、大人しく席に座っとけ」
問題解決してないのに席に座れるわけないだろ?!
と言いたかったが、おばさんに逆らって勝てるのは、この世でただ一人。
ユーリおじさんだけである。
僕は言われた通り大人しく座り、ユエに念話を飛ばしたが拒否されてるのか繋がらない。
どうしようと頭を抱えてしまう。
「あーあー…だから言ったのに…」
「ユタカに確認したけど、めっちゃ不機嫌らしいぞユエ。罪悪感で泣いてもいないから、これ完璧頭に来てるパターンだな。グンジョウ、席立てるようになったら、ユエの機嫌取りに行った方がいいぞ」
…どうしよう。
だってさぁ、席立ってユエとイチャつくわけにもいかないだろ?!
ユタカと席変わってとかも言えないしさぁ?!
人の目もあるし!!
「………はぁ……」
僕は深いため息をつく。
航空艦が離陸したようで、軽い浮遊感が体に来た。
暫くしてから、シートベルトを外していいとアナウンスがあり、僕は立ち上がってユエの所に行く。
「あ、グンちゃん。ユエ、グンちゃん来たよ」
「知らない。殿下は本の方がお好きですから、存分に本とイチャついていれば宜しいかと」
ユタカが廊下側で、僕が来た事をユエに知らせるが、彼女は窓の外を見ながら棘がある言い方をした。
いや、うん、さっきの僕も似たような事やったから、何も言えないんだけどね。
「ユタカ、ちょっと席変わってもらえる?」
「じゃあ私、シンクの所に行ってくるね。ユエ、ちゃんと仲直りしないと、気不味いまま修学旅行回る事になるよ。嫌なら、グンちゃんと仲直りしなよー?」
ユタカは席を立ち、自分の妹にそう言って僕の横を通り、シンクの所へ歩いて行った。
空いた席に座り、話しかける。
「ユエ、悪かったよ。ここで君の姿を見なくても、後で会えるからって思ってたんだ。人の目があるから、僕が君の所に行ってイチャつくの嫌がるだろうって思って…」
「そう思いつつ、本読んでたのは殿下ですけど」
僕が本読むの、いつもの事なんですけどね…。
一応修学旅行っていう手前、学習する為の旅行なわけで…。
普通の旅行なら、ユエとイチャつきつつ、口説いてるに決まってるだろうに。
どうしたら許してくれるかなぁ…。
「ご自分で考えては?」
「読まないでもらって良いかなぁ…。別に、他の女性に言い寄ったわけでもないのに…。うーん…なら、こうしようじゃないかユエ。修学旅行中、僕は一切本を読まない。携帯小説も。自由時間も、就寝前の時間も全部君の為に使う。それでも嫌なら、僕はもうお手上げなんだけど…駄目かな?」
ん、とユエは僕に手を差し出してくる。
その手を取ると、彼女から思念が流れ込んできた。
寂しかったのと、そこまでしなくて良いという気持ち。
あと短気でごめんという謝罪。
素直じゃないなぁ、と僕は苦笑しつつ、そこが少し困る所ではあるが君の可愛い所だよ、とユエに考えを読ませる。
「…そう思うの、アオだけだよ…」
「なら、君の魅力に気付けてるのはこの世で僕だけって事になるね。ね、ユエ。愛してるよ」
最後は彼女の耳元で囁く。
ユエは頬を染め、私もと言ってくれた。
よし、機嫌治ったぞ…!!
これで心置き無く、ユエとベルカでイチャつける…!!
心の中でガッツポーズをしていると、ユタカが戻ってくる。
僕とユエの様子を見て、ニコリと微笑んだ。