my way of life   作:桜舞

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394話『番外編2-5』

「仲直り出来たみたいだね、グンちゃん。良かった良かった」

「ユタカ、帰ってくるの早くない? シンクとまだイチャついていれば良いのに」

 

窓からユタカに顔を向け、ユエは少し不機嫌そうに言う。

 

「ユエと仲直り出来たら、あっちの席に戻るかと思って忠告しに来たの。シャナちゃんがお菓子広げて甘い匂いさせてるから、戻って来ない方が良いよって」

「シャナの奴…」

 

確かに、収納空間に入れて置けばと言ったのは僕だけど、お菓子まで入れろとは言ってないんだよなぁ…。

 

少し頭が痛くなり、額を押さえた。

席交換したままの方がいいよ、とユタカに言われたので、僕は彼女に伝言を頼む。

 

「シャナに、食うのは構わないけど後片付けとかカスとか落とすなよ、って伝えておいて。隣にシンクいるから、大丈夫だとは思うんだけど…」

「伝えておくね」

 

ユタカは苦笑しながら、僕が座っていた席に戻っていく。

数分してから、僕の名を怒りながら呼ぶシャナの声が聞こえたが無視をした。

 

「ママに怒られなきゃ良いけど…」

「怒られるだろうけど、とばっちり食うのはシンクだけだと思うから僕は知らない」

 

それよりはユエの隣に座れて、僕は今気分が良い。

彼女と仲直り出来たのも大きいし。

 

僕はユエと恋人繋ぎをし、手の甲を撫でる。

 

「ちょっと、アオ…手…」

 

頬を染めながら抗議する彼女に、僕は微笑む。

別に周りが気にしている様子もないし、何ならみんな席を立って思い思いの所へ行ってるから、僕らの周りに人がほぼいない。

彼女へキスをしたところで、バレないような気がした。

 

「アオ…?!」

「しないってば。二人きりならともかく、こうも騒がしくちゃ雰囲気も何もないだろ」

 

僕の考えを読んで動揺したのか、ユエが慌て始める。

本気で僕とユエだけなら、キスもしたし何なら押し倒していたかもしれないのに。

 

「…アオのえっち…」

「君にだけだって。あー…早く結婚したい…」

 

彼女の頭に頬を寄せ、僕はため息をつく。

それは私もだけど、と彼女は返してくれた。

 

◆◆◆

 

着陸するという時、やっぱりシャナはおばさんから怒られ、離れた場所にいた僕も怒られた。

理不尽。

元の席に戻れと言われたので渋々戻ったら、案の定甘い匂いがしてて若干吐き気を催す。

どんだけ甘いもの食ったんだよこいつ、太れ馬鹿姉と僕は恨めしそうな目をシャナに向けた。

 

気分が悪くなりつつ、ベルカの空港に降り立つ。

僕の様子が気になったのか、ユエが少しクラスの列から離れ、僕の傍に来た。

 

「アオ、大丈夫?」

「無理、吐きそう。シャナの奴…!!」

 

ユエの肩に頭を置き、ゲンナリする。

僕を労るように、彼女は頭を撫でてくれた。

ユエの匂いで癒されていると、肩を叩かれる。

 

顔を上げてそちらを見れば、シンクが行くぞとジェスチャーした。

どうやら移動する時間になったようだ。

 

「じゃあ、ユエ。また自由時間に」

 

彼女の手を取り、キスを落とす。

気障だなぁ、なんてユエは笑った。

 

クラス毎にバスで移動するらしく、彼女の笑顔で癒された僕は、窓側の席に座って目を閉じる。

癒されたからと言って、ダメージがそんなすぐ回復するわけではないので眠くなったのだ。

 

「グンジョウ、お前が寝そうになってるの珍しいな。シャナならともかく」

 

僕の隣の席に座ったエミル君が、僕を眺めつつ言う。

それに薄目を開け、返事した。

 

「シャナのせい…僕が甘い匂い苦手だって知ってたくせに…」

「あー…チョコクッキーでさえ、お前吐きそうになってたもんな。どっちだっけ、初等部と中等部で吐いたの」

 

中等部、と僕は目を閉じながら窓枠に頭を乗せる。

あれは、家庭科の授業の時間だった。

調理実習の時にクッキーを作るとの事で、僕の頭の中ではシナモンクッキーだと思っていたのだが、そんなはずもなく。

普通の甘いクッキーとその匂いで、トイレに直行して吐いた。

給食を食べた後の授業だったから尚更。

 

流石にそれを聞いた母様達が、僕を慰めてはくれたのだけど。

 

「目的地に着くまで一時間だってよ。それまで寝とけ、グンジョウ」

「あー、うん…悪いけど起こして…」

 

次にエミル君から起こされるまで、僕は意識を落とす。

体を揺さぶられて、僕は目を開けた。

 

「…着いた?」

「おう。めっちゃグッスリだったけど、大丈夫かグンジョウ? 先生に言って休ませてもらうか?」

 

そこまでではないと返し、むしろ気遣ってくれてありがとうと彼に礼を言う。

エミル君と一緒にバスから降りると、ベルカの名物と言っても過言ではない大きな石碑が見えた。

 

バスの駐留場からでも見えるそれは巡礼の石碑と呼ばれるもので、巡礼者は最初にここへ訪れ、その後各地に点在する石碑を巡っていき、ベルカの首都にある大聖堂で洗礼を受けるのが常である。

 

「でっけぇ…」

「一説によると、オーシア・ベルカの主神であるイオン様が、手を滑らせて落としたのがこの石碑と言われているとか何とか」

 

そんな、あの馬鹿じゃあるまいし、とは母様の言だが。

だがしかし、人の手でこれを作れるかと言われたら、出来ないとは思う。

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