全長五メートルはありそうな石碑だし。
「グンジョウ、お前ベルカ詳しい?」
「あんまり。この情報も、携帯に載ってたものの引用だし。ここの教皇様に会った事はあるけどね」
それでも一王太子だし、気軽に話しかけられるわけがないので、父様と一緒に訪問した時かこの間の会議の時でないと会う事もない。
次に移動した先も石碑で、順に石碑を巡っているとおばさん…立花先生から説明される。
「何とかストーンって奴だっけ」
「ロゼッタストーンじゃなくて、ストーンヘンジの事言ってる? アオ」
石碑なんだけど、石で作ったオブジェっぽいのが乱立している丘を見て僕は呟き、それにいつの間にか近くにいたユエが話しかけてきた。
「…ごめん、ロゼッタストーンって何? あとストーンヘンジ」
「ロゼッタストーンは、古代エジプトの王様が勅令を刻み込んだ石碑の事。ストーンヘンジは、イギリスにあるストーンサークルの名称。世界遺産にも登録されたんだけど…その様子だと分かんないみたいだね…」
あの夕陽だぞ?
分かるわけないじゃん。
そう言いたかったけど、周りに人がいるので言えず。
僕は曖昧に笑うしかなかった。
次の石碑は観光地の中にあるようで、これで生計を立ててるんだろうなと周りを見て思う。
「グンジョウ、あの…」
シャナがおずおずと話しかけてきたので、何? と返した。
「いや、あの、さっきはごめん…」
「もう良いよ。お前がやらかすのいつもの事だし。その様子だとツルギからも怒られたな?」
うん、と姉はしょんぼりしながら頷く。
普段は滅多に怒らないツルギだが、シャナが何かやらかしたりすると、言い含めるように嗜めてくれる。
ツルギの事が大好きな姉は、ちゃんと反省はするのだ。
忘れて何度も同じ事をやらかすが。
結構キツく言われたのかシャナのしょんぼりは治らず、僕は姉の頭を撫でた。
「良いって言ってんだろ。ほら、行くぞ」
クラスの列が移動したので、僕は姉の肩を抱き歩く。
途端、鋭い視線が突き刺さる感覚がし、僕は直感でマズいと感じる。
おばさんや母様達に鍛えられたおかげなんだろうけど、冷や汗が出て思わずシャナの肩を強く握ってしまった。
「いっ…! グ、グンジョウ…? これ…」
「うん、ユエだ…。せっかく機嫌治ったのに…やらかしたぁ…っ!!」
シャナも気付いたようで、僕を見上げてくる。
前方にシンクが見えた瞬間、僕は咄嗟に弟の腕を掴んだ。
「うわ、ビックリした。なんだよ、グンジョウかよ。これがユタカだったら嬉しかったんだけどなぁ」
「ちょっとシャナ預かれ、弁明してくる」
後方からまだジリジリと睨まれている感覚がしていて、本当僕の彼女は嫉妬深いなぁ、なんて思いつつ、早く弁明しないとまた拗れると焦る。
「グンジョウ、本当ごめん…!!」
「あとでユエに言い訳とかしといて…っ!!」
僕はクラスの列を離れ、ユエのクラスに混じり彼女の所へ行く。
僕が来た事に気付いた彼女は、気不味そうに目を逸らした。
「ユエ…!」
「…ごめん。ちょっと、シャナちゃんの肩抱いてるの見えちゃって…羨ましい、良いなって嫉妬しただけなの…。さっきの事でツルギに怒られたんでしょ、シャナちゃん? アオ、お姉ちゃんだから慰めてるだけだって分かってるし。私の事は気にしないでいいから、自分のクラス戻りなよ」
目を逸らし、苦笑いしつつ彼女はそう言うが、ユエがそんな視線を向けたのは僕にも原因があるわけで。
僕は自分が付けてた腕時計をおもむろに外し、彼女に渡す。
「アオ?」
手に握らされた腕時計と僕を見比べ、ユエは首を傾げた。
「預かってて。僕が離れていて寂しいって思ったら、それ付けて僕の事を想ってて? 傍に居られなくてごめん。自由時間には君の所へ真っ先に行くから」
じゃあ、と彼女の頭を撫で、僕は自分のクラスに戻る。
まぁ、勝手に列から離れた僕はおばさんから背中を蹴り上げられたわけだが、ユエの機嫌が治るならこれくらい安いものだと思った。
◆◆◆
宿泊するホテルに着き、班ごとに部屋へ行けと先生方に言われたので班長がカードキーを貰い、各班で二泊する部屋へと向かう。
ちなみに男子と女子で階も違うらしく、20階建てのホテルのうち、2階から5階までを男子生徒、6階から10階までを女子生徒と振り分けてあるらしい。
11階から上は一般客だそうだ。
シンク、エミル君、僕、あとクラスメートのカーマイヤーの班で、部屋に入った。
「あとで女子部屋に行く?」
男4人にしては結構広めの部屋で、部屋の散策をしてた僕に、カーマイヤーが聞いてくる。
「なんで?」
「いや、だって。お前やシンク、彼女いるじゃん」
彼女って言うか、お嫁さんになってくれる人ですけども。
いるけど何だ、と視線を送ると、ソファーに座っていたエミル君が、カーマイヤーに言う。
「俺だって彼女いるし?!」
「お前は尻に敷かれてんじゃん。彼女って言うか、鬼嫁だろあれ」
エーリは可愛いとこもあんだよ、なんてエミル君がカーマイヤーに突っかかっている間に、僕は部屋の散策を続ける。