4人部屋というか、6人想定じゃないのかこの部屋?
風呂も大きいし。
ベッドも1人1つ使えるし。
それでも余ってるし。
「やべー…和室あるー…俺ここで寝るぅ…」
畳の部屋で大の字になっているシンクを見かけ、何やってんだコイツみたいな目で弟を見る。
というか、このホテル和室あるの珍しいな。
普通洋室だけだろうに。
「なー、グンジョウ! エーリ可愛いとこあるよなぁ?!」
カーマイヤーとの口論に負けそうなのか、それとも自分の語彙力の無さでエーリを表現出来ないのか知らないが、エミル君が僕を呼ぶ。
できれば僕を巻き込まないで頂きたい。
和室からそちらに顔を向け、僕はエミル君に言う。
「…あのさ、エミル君。僕にどうしてほしいわけ?」
「エーリの良いとこ言ってくれよ! 幼馴染じゃん俺ら!!」
確かにそうなんだけどさ。
なんで婚約者の君じゃなく、僕がエーリについて言わなければならないのか。
ユエの魅力については、物凄く語れる自信はあるんだけど。
「…シンク、ちょっと防音の結界張ってくんない?」
「いやいや、グンジョウ。流石にユエだって、四六時中お前を見てるわけないって。どんだけ執念深いんだよって話に………いや、うん。ユタカから、恋する乙女は怖いって念話来たわ…四六時中は見てないけど、偶々見た場面がそれだったら私だって怒るよ、だってよ…」
シンクは指を鳴らし、防音の結界を張ってくれる。
流石ユタカ、シンクの説得をしてくれて助かった。
僕は少し思い出しながらエーリについて語る。
「まず彼女は幼い頃から聡明だった。僕と同じ話が出来るのは、エーリだけだったし。むしろ彼女が知らない事はないんじゃないかと、幼等部の頃は思ってたよ。あと、エーリの言い方はキツイし、切れ長の目が冷たい印象を相手に与えるかもしれないけど、結構優しいし気遣いが出来る子だよ。エミル君との婚約も幼等部の頃に結ばれたって話だけど、エミル君をよく見ててね。彼が体調悪そうにしてるのも、いの一番に気付くし。落ち込んでる時も傍に居て慰めてるし、エミル君に嬉しい事があったら良かったねって、寄り添って一緒になって喜んでいたし…」
「あー…グンジョウ。サンキュな。でももう、それ以上は良いわ…」
カーマイヤーもエミル君も、僕にストップをかけてきた。
語れって言ったのは君でしょ、エミル君。
君の婚約者の良い所言えって。
「シンク、解除して良いぞ」
「あいよ」
また指を鳴らし、弟は結界を解除する。
僕は、エーリの良い所を語らせた2人に笑いかけた。
「じゃあ今度は、僕の彼女の素敵で可愛い所を聞いてもらおうじゃないか。勿論語らせたんだから、聞いてくれるよねぇ?」
「「顔怖ぇ…」」
夕飯の時間になるまで、僕はユエの可愛い所や少し困るけど素敵な所とかを2人に聞かせ始める。
まぁ、途中でピンポン連打され、応対に出たシンクを押し退け、顔を真っ赤にしたユエに突撃されてしまったが。
「ちょっとアオ?! 何言って、いや!! 何を話してんの?!」
「え? 2人が僕にストレス与えてきたから、ユエの可愛い所を語って発散してるんだけど?」
馬鹿!! と彼女に怒鳴られ、背中を思いきり叩かれる。
今日はよく背中を殴打される日だなぁ。
痣になってそう。
「それよりユエ、僕に会いに来たの? それなら嬉しいなぁ」
「あ、いや、アオの事が気になって…何処にいるのかなって探したら、その…私について言ってるアオが見えて…ちょっと…止めなきゃって…」
頬を染め俯くユエが可愛くて、僕は彼女を抱きしめる。
良いなぁ、なんてカーマイヤーの声が聞こえたので、僕は彼を見ながら言った。
「あげないし、浮気させるつもりもないからな」
「怖い、その顔怖ぇよグンジョウ!! 誰がユエ嬢と付き合いたいって言ったよ?! まぁ、出来ればユエ嬢のクラスの、婚約者や恋人がいない女子は紹介してもらいたいけど…」
それは自分で努力するか、親が決めた結婚相手と大人しく結婚するかしろよ。
僕はユエの肩を抱き、部屋から出る。
あのまま彼女を部屋に居させたら、カーマイヤーから質問攻めに合うかもしれなかったから。
「アオ、何処行くの?」
「夕飯の時間まで自由時間だろうし、デートしようユエ」
ユエに微笑みかけると、彼女は少し目を丸くした後ニコリと笑う。
彼女の頭の中では、そのまま部屋まで送られるんだろうな、とか思ったんだろう。
え?
なんで愛しい彼女が来たのに、部屋に送り返すって選択肢があると?
僕だってデートしたいよ!
ユエとイチャつきたいんだよ!!
出来れば修学旅行そっちのけで、ユエと…!
「アオ、それ以上考えたら顎かち割るから」
「読まないでってば…はい、すみません…」
ユエの笑みが深くなり、ドスが効いても可愛い声で僕にそう言ってくる。
とりあえず謝り、彼女と手を繋いでホテルに併設されている売店へと訪れた。
「チャームかぁ。確かにベルカの名物だけどね。無病息災、恋愛成就、安全祈願…なんか日本のお守りみたい」
売店で売られているチャームを見つつ、ユエがポツリと呟く。