my way of life   作:桜舞

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399話『番外編2-10』

ホテルの庭に来てみると、冬の匂いはリューネと変わりなく、だが星の位置は少し違うような気がする。

異国に来ているんだなぁ、なんて星を見上げながら思った。

 

空が白むまでそこにいたせいで体が冷え、僕はそそくさと部屋に戻る。

 

「お。お帰りー。どこ行ってたん?」

 

カーマイヤーが洗面台で歯を磨きながら、外から帰って来た僕に問うて来た。

彼以外の二人はまだ寝ているようで、エミル君の部屋からはイビキが聞こえてくる。

ここまで聞こえるって相当なので、エーリは結婚した後大変だな、なんて他人事のように思う。

寝てる間なんて、誰も分かんないしね。

もしかしたら、僕も酷いかもしれないし。

 

「起きた後、二度寝する気になれなくて外にいたら、体冷やした。風呂入る」

 

自分の部屋から一式取ってきて、カーマイヤーの横を通って風呂場に直行する。

体を洗っている最中、浴室の扉が開き、カーマイヤーが顔を出した。

 

「ユエ嬢来たら、ここに通そうか?」

「やめろ馬鹿!! むしろそんな事したら、お前が立花先生に殺されるからな?!」

 

おばさんの名前を出すと、怒鳴んなよ冗談じゃん、と彼は引っ込んで扉を閉める。

冗談に聞こえないし、何ならユエは僕と風呂に入る事を画策しているから、冗談にもならない。

もし彼女がここに突撃してきたら、理性が切れる事請け合いである。

 

風呂から上がって、タオルで頭を拭きながら出てくると、ソファーにユエとユタカがいて僕は固まった。

カーマイヤーと、起きたエミル君やシンクと談笑している彼女達を、思わず無言で見つめてしまう。

 

「あ、グンちゃん。おはよう」

「……おはよう。なんでいるの君達…」

 

僕の姿を見たユタカが朝の挨拶をし、それに返しながら疑問を投げかけた。

 

「見苦しくないように髪を結ってみたんだけど、ちょっとしっくり来なくて。シンクに髪を結ってもらいに来たの」

「私はアオに会いたかったから付いてきた。ユタカと同じ班だし。おはよ、アオ…って!! また髪乾かさないで出てきたの?! もう!!」

 

ユエはソファーから立ち上がり、僕の方にズンズンと歩み寄ってきたかと思えば、僕の腕を掴み洗面台に連れていく。

備え付けてあった椅子に僕を座らせ、部屋の付属品であるドライヤーを出し起動させて、温風を出しながら髪を乾かしてくれる。

 

「風邪引くってば!!」

「そんな簡単に引かないってば…」

 

とは言っても、ノーム2の月にユエの前で倒れてしまった身からしては、彼女の心配は尤もなもので。

 

僕の髪を乾かす為に、その手が頭を撫でる。

心地良くて、僕は目を閉じた。

 

「アオ? 寝ないでよ?」

「寝てないよ。君の手が心地良いから、寝そうではあるけどね」

 

目を開け、鏡越しに彼女へ微笑む。

愛おしいと、目で告げながら。

そんな僕の表情を見たユエは、少しだけ目を逸らした。

 

「…ずるい。そんな顔されたら、怒れないじゃない…」

「怒らないで欲しいんだけどね」

 

髪を乾かし終わったのか、ユエがドライヤーを止め、片付け始める。

僕はユエの方に向き直り、彼女を抱きしめた。

座っている関係上、僕の顔はユエの胸に埋められる形になったが。

 

「ア、アオ…?」

「好きだよ、ユエ。髪乾かしてくれてありがとう。愛してる」

 

甘えるように、抱きしめる腕へ力を込めると彼女はクスクス笑いながら、僕の頭を抱きしめてくれた。

 

「苦しいよ、アオ」

「ごめん。だけど、暫くこのままで」

 

シンクから扉をノックされるまで、僕らはそのまま抱き合っていた。

 

◆◆◆

 

2日目に観光する場所は、ベルカの総本山であるエルトランド大教会。

バスから降りる前、駐車した瞬間から空気が変わり、何となく王都にあるサンテブルク教会に似た雰囲気を感じる。

それは降りてからも変わりなく、なんだこれと首を捻った。

 

「どうしたの、グンジョウ?」

 

僕の後から降りてきた姉が、首を捻る僕を見つけ尋ねてくる。

 

「いや…なんか、空気違くない? ホテルにいた時と今と」

「聖域だからじゃね? 何、気分悪い系?」

 

僕を覗き込むように、シンクが隣に立ち見てきた。

フルフルと、僕は首を横に振る。

 

「気分は悪くない。むしろ空気が澄みすぎているのに、違和感を感じているだけ。そっか、聖域か…父様から聞いた事ある。祖国でもそうだったって。祖国であるスェッド国の白の女王様が、そんなものを張っていたとか何とか」

 

それでも、統合騒乱には耐えられず皆消えてしまったけれど。

 

ガイドの教会騎士の案内で、僕らはエルトランド大教会に続く道を歩く。

と、行列が出来ている場所を見たシャナが、僕の服の袖を引っ張ってきた。

 

「ね、グンジョウ。あれ何の店?」

「共通語の勉強、筆記までしたはずなんだけど……痛いって…! 皮膚を抓るな…!!」

 

小声で抗議するが、姉は僕を睨むだけで何も言わない。

ついでに抓っている場所も離さなかったので、僕は眉を寄せながら言う。

 

「パン屋とフルーツジュース屋だって」

「成る程。あとでツルギ君と来てみようかな」

 

列へ並んでる間に、時間切れにならなきゃ良いけどな。

 

内心で舌を出すと、脇を叩かれた。

この暴力姉、ツルギに怒られてしまえ。

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