と、ここまでは話された内容ではある。
確かに地下にあるからか見る限り中は暗そうだ。
多分通気口とか方々にあったのだろうが、今は土が上に累積して塞がっている。
「火魔法使ったら、酸素不足で死にそうだな…」
かと言って、僕光魔法とか使えないんだけど。
一般販売されているライトだと心許なさすぎる。
シャナの補修を手伝うから、とカヅキおばさんを説得してシャナを連れてくるべきだったか。
「一応ママからデバイス借りてきたから、光魔法使おうと思えば使えるけど?」
ユエがスカートのポケットから、携帯型の何かを取り出す。
彼女が持っているのは、魔力制御が苦手なおばさんが、自分用に開発したものを一般用として売り出しているものだ。
いつの間に制服から着替えたのか、ユエとユタカは、左右対称の軍服みたいなものを着ている。
僕、制服のまんまなんだけど。
「お願い出来る? あといつの間に着替えたの君達」
「え、服転送しただけだけど…?」
ユタカが何を言っているのだろう、と言った感じで首を傾げる。
魔力量多いと、そんな芸当が出来るのか羨ましい。
「まぁ、別に破れても替えの制服まだあるから良いけどさ…」
ユエが光魔法を発動させる。
光の玉が僕らの周りを浮遊した。
「これで限界だからね。シャナちゃんみたいに出来ないんだよ、普通は」
「何も言ってないだろ。それ以上に僕が魔法使えないっていうのに…」
ユエがジト目で、僕を見ながら言う。
別に、シャナと同様の事をしろなんて一言も言ってない。
いたら楽だな、なんて考えていただけで、ユエに対して何も言っていないのに。
「グンちゃん、ポーカーフェイス苦手だよね。そこ、ナッちゃんに怒られた事ない? ナズナおじさま見習った方がいいよ? それか、ナッちゃんが総帥モードって言ってる状態とか」
「え、マジで…? ごめん、全く自覚なかった…」
あと、母様には怒られた事ない。
百面相してるのシャナの方だと思ってた。
僕もだったか、と軽く落ち込む。
「ユタカ、余計な事言わないでよ。アオ、まだ私達と同じ16なんだよ? 出来ないの当たり前じゃん」
「正確には、シルフ1の月生まれだから、まだ15なんだけどね…いや、本当にごめん…」
落ち込んでいる僕の腕に、ユタカが自分の腕を絡めてきた。
「グンちゃん、王太子モードの時は出来てるから心配しないで。それに、そんなグンちゃん可愛いと思うよ? ユエみたいに、私目くじら立てないし」
「はぁ? 目くじらなんて立ててないでしょ? 私の魔法見て、シャナちゃんがいたらなぁ、って顔してたからそう指摘しただけで…! てか、ユタカ! アオに触るなって言ってんでしょ?! アオは私の大切な人なんだから!!」
ユタカの腕を掴んで、ユエが自分の姉に怒っている。
だけどユタカは僕に抱きつく力を強めた。
「私にとっても大切な人だよ。そんなに怒ってたら、グンちゃんに呆れられるんじゃない? ねぇ、グンちゃん? ユエより私の方がグンちゃんの事好きだよ? ユエと婚約破棄して私にしない?」
「勝手な事言うなって言ってんでしょ?!
……っ!! アオっ! いつまでユタカ抱きつかせてんの?! もう知らないっ!!」
激昂したユエは、遺跡の方へ駆けて行ってしまう。
姉妹喧嘩をぼんやり眺めていた僕だったが、少しどころではなく、不味い事態に陥っている事に気付いて、ユタカの腕を外した。
「ちょっと待ってユエ!! 一人で行動、の前に! 僕が悪かった!! あぁ、もう!! ユタカ、周囲の警戒しといて!」
脚力強化を施し、ユエの後を追う。
グンちゃん、なんて声が後方から聞こえたが、今は構っている余裕はない。
マズイ、本当にこれはマズイ!!
遺跡の構造自体把握出来ていないというのに、一人で先に行かせてしまった。
更に言えば、恋人を傷つけてしまった。
ユエとユタカの喧嘩なんて日常茶飯事だから、結構放置してしまう事が多々ある。
今回も少しの怒鳴り合いの後、遺跡調査に入ると思っていた。
「あぁ、くそっ!! 僕のど阿呆!!」
前回とは違うではないか。
ユエは今、僕の恋人だ。
僕の大切な人だ。
多分、いや十中八九泣いている。
「…っ! いた…っ!!」
見慣れた後ろ姿を見つけ、僕は急制動をかけた。
ズザーっと音がしたのにユエも気付いているはずだが、こちらを振り向こうともしない。
「あの、ユエ、ごめ…」
「私こそごめんね。別に怒る事の程じゃなかったのに。空気悪くしちゃった。戻ろう、アオ」
振り向いた彼女の顔は、困ったように笑っている。
だけど僕には、泣く一歩手前に見えた。
そのまま、僕の横を通り過ぎようとしたユエの腕を掴む。
「アオ? 手を離し…」
「ユエ。本当にごめん。言い訳にしかならないけど、僕が幼稚過ぎた。君達の喧嘩、いつも通りだと思ってたんだ。君を傷つけるなんて、思ってなかった。信じてくれないかもしれないけど、僕は君だけしか好きじゃない。君以外いらない。君に捨てられたら、多分抜け殻の状態で生きていく事になる。死ぬ事は許されないから。それでも君が離れたいと言うなら、僕にそれを引き止める権利はない。本当にごめん、ユエ。離したくはないけど、君に嫌われたら…」