ウンディーネ1の月。
リューネ王歴528年。
ユエと結婚してから1年が経った。
妻であるユエの誕生日から二ヶ月経った今日、やっと長かった出張から帰って来れて、僕は迎えに来た車の中でだらける。
流石に、結婚記念日までには帰らせてほしいと出張前、陛下に懇願し王妃殿下からも口添えがあって、記念日の前日である今日、27日に帰って来れたのだ。
その旨はユエにも伝えてあったのだが、帰る直前に、伝える事があるとメッセで伝えられていた。
このやり取りではダメなのかと聞いたのだが、直接会って伝えたいからと言われる。
え、何、直接って。
ユエに限ってないとは思うけど、まさか他に好きな人が出来たから離縁してほしいとか?
金銭的な話なら、別にメッセで良いわけで。
いや、まさか、そんなそんな…。
だって結婚してからまだ1年だよ?
確かに出張ばっか行って、城にはあんまり帰れないけどさ。
それについては父様に文句言ってほしい。
政務だって覚えてきてはいるけど、自分が行きたくないからって、僕に行かせてるの父様だよ?
いや、まぁ…舅にそれ言えるかって言われたら僕は言えないわけだけど。
僕は頭を抱え、蹲る。
護衛で来てくれていた親衛隊数名が、またかという顔で僕を見ている気配がした。
出張五日目辺りで、ユエに会いたいと弱音を吐きまくったからだろうが。
そんな僕を見かねた、リーダーをしていた一人が、運転席にいた先輩にユエの様子を尋ねてくれた。
普段とあまり変わりない様子だったと聞こえるが、妃教育を受けたユエがそう簡単に表情を崩すわけないだろ、と内心思う。
あと親衛隊から隠れて何かやるのは、シャナ以上に上手いんだからうちの奥さん。
そのうち城に到着し、僕は車から降りた。
「お帰りなさいませ、ア…グンジョウ殿下。長い出張、お疲れ様でした」
侍女を連れ、ユエが出迎えてくれる。
いつも通りアオと呼ぼうとしたのだが、周りの目があるからか僕を殿下と呼んできた。
いつものスタイリッシュな服装ではなく、ゆったり目の服装で、僕はおや? と首を傾げる。
「どうかしましたか?」
「あ、あぁ、いや。ただいま、ユエ。君も変わりないようで安心したよ」
彼女に歩み寄り、抱きしめた。
二ヶ月ぶりのユエの匂いに、僕は笑顔が
この後地獄が待っていたとしても、彼女に会えて嬉しいと僕は思うのだから。
ゆったり目のドレスって…相手の趣味かなぁ…。
父様みたいな奴なのか、浮気相手…。
まぁ、仕方ないか…ドラマでも、出張ばっかりの夫より、親身になってくれる身近な男って、ドロドロなのが流行っていたくらいだし。
なんだっけ、浮気は文化って言った芸能人いたような…。
「貴方もご無事で良かった。お疲れでしょう? もうお部屋に行きますか?」
「いや、陛下へ今回の事について報告しなければならないからね。何か、僕がいない間あったかい?」
ユエから離れ、彼女の肩を抱きながら歩く。
手振りで、侍女と親衛隊について来なくても良いと指示を出した。
素で話すのもだけど、離婚話になったら他の人には聞かせたくないし。
「………あったよ?」
ユエも皆がいなくなったのを気配で感じ取ったのか、廊下を少し進んでから言葉を発した。
その声が少し上擦っていて、緊張していると感じる。
僕は歩みを止め、彼女を見た。
「…何があったの?」
真剣な顔でユエを見る。
彼女は僕を見上げ、自分の下腹部に手を当てた。
「子供出来たよ、アオ」
「………ん?」
ユエから言われた言葉に、僕はフリーズする。
ちょっと待って、それ誰の子?
そう言いかけたが、僕の思考を読んだのかユエが頬を引っ叩いてきた。
「サイッテー!! というか、会った直後から浮気だなんだって思ってたの知ってるんだからね?! 私はアオ以外とやらないって、何度言えば良いの?! こんな癇癪持ちの女、アオ以外なんて手に負えないっていうのに!!」
「わ、分かった! 分かったから!! 悪かったよユエ!! 君が魅力的だから、寂しい思いさせてる僕より他に優しくしてくれる男がいたら、そっち行くんじゃないかって今も不安なだけだよ!!」
ポカポカと僕の胸を叩きながら抗議するユエへ、僕は心情を吐露する。
更に足を蹴ってきて、僕は痛くて蹲った。
「アオだけだもん。私が愛してるのは。それに、他の男から言い寄られて私がどんな対応してたか、アオは見てきてるはずでしょ? 本当、馬鹿で最低」
「はい、すみません…」
痛みが治るまで蹲り、やっと立ち上がれるくらいまでになった僕は、ユエに再度尋ねる。
「子供…出来たの?」
「そうだよ」
一体いつの?
そう問いかけると、予測だけれどと彼女は前置きし、
「多分、私の誕生日…アオが出張行く前…」
「……あの時かぁ…」
結構濃密な夜を過ごしたけど、あの時に出来たのか。
なら納得なわけだけど。
本当? と彼女に問う。
「なんで嘘つく必要があるの。
「いや、あの! 母様から聞いた症状と君が当てはまらないから!! その拳に練ってる魔力霧散させてくんない?! ごめんってば!!」
症状? と魔力を霧散させず、彼女は首を傾げた。