my way of life   作:桜舞

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出産シーンの表現がちょっと苦手という人は回れ右です


407話『番外編3-6』

シャナはといえば、甘いコーヒーを飲みながら僕らの様子を呆れた目で見ている。

 

寝てるかと思ってたんだけどな。

 

「あんた達の様子が心配すぎて、寝れるかっての」

「心読まないでもらって良いですかね、姉さん…」

 

ん、とツルギからブラックコーヒーを渡される。

ありがたく貰い、蓋を開けて一気に飲んだ。

 

よし目が冴えた。

 

シンクもコーヒーを貰い、チビチビ飲み始める。

酒じゃねぇんだからと、苦笑した時だった。

扉がほんの少しだけ開き、看護師が顔を出したのだ。

 

「グンジョウ殿下、立花先生がお呼びです」

「え、僕だけ?」

 

ユタカもいるのだから、シンクも呼ばれるべきではと思ったが、まさかと最悪の想像をしてしまう。

しかし看護師はそんな僕の表情を見、マスクの下で苦笑したようだった。

 

「妃殿下が、殿下を呼べと叫んでいるので…呆れた先生が殿下を中に入れろと…」

「…あ……あ、そっち…ですか…」

 

ユエが危険な状態じゃなく安心したが、僕を呼べって……行きますけども。

 

看護師に伴われ、僕はユエがいるであろう部屋に入る。

 

「うわぁぁぁんっ!! アオぉぉっ!! 痛いよぉぉっ!!」

 

分娩台と呼ばれている代物の上で、ユエが泣き叫んでいた。

僕は彼女の傍に寄り、その手を握る。

 

「ユエ、ユエ。来たよ。痛いね、辛いね。代わってあげたいくらいだよ」

「うぇぇぇ…っ!! なら代わってよぉっ!!」

 

ユエからの握力で骨が折れそうになるが、泣いている彼女の涙や汗をハンカチで拭ってやった。

彼女を励まし、傍にいる事くらいしか僕には出来ないから。

 

「ユエー、少しいきめ。やっと頭が出てきた」

「やっと?! 何時間ここにいるのよ?! もうやだー!! 帰るー!! おうち帰るぅぅぅっ!!」

 

何時間と言われたら、もう12時間過ぎてはいるけれど。

それ言ったらユエが発狂しそうだから、黙っておく。

おばさんの指示で、力を入れたり抜いたりを繰り返すユエに、言葉をかけ続けた。

 

そして。

 

「ふぎゃあ!! んぎゃあ!!」

 

赤ん坊の泣き声が、部屋に響き渡る。

看護師が取り上げたその子は、体を真っ赤に染めて元気に泣いていた。

 

「産ま、れた…。ユエ、産まれたよ…! 男の子だ…! ありがとう、ユエ…! 辛くて苦しい中、よく頑張ったね…! お疲れ様…っ!!」

「…アオ……泣き虫だ、ね…でも、私、嬉しい…な…そんなに、喜んでもらえる…なん、て…」

 

ユエはそう言い、意識を手放したようだった。

出産は命懸けと聞くが、本当に僕の妻は偉いと思う。

こんなに頑張って、僕達の子を産んでくれたのだから。

 

「グンジョウ、抱いてやれ」

 

お包みと呼ばれる物に包まれた我が子を、おばさんは渡してくる。

恐る恐る、壊れ物を扱うが如くそっと抱いた。

少しの重みと共に、僕とユエの子供はほんの少し欠伸をする。

 

可愛い。

とても、とても可愛い。

ユエのお腹の中にいた子が、僕の目の前で息をして、体温も温かくて。

生きてるって、この子を守らなければって…そう、思った。

 

バタバタと部屋の外が騒がしくなる。

なんだとそちらを見れば、おばさんが笑った。

 

「ユタカの所も産まれたよ。あっちは女の子だ」

「…シンク、僕と一緒で泣いてるでしょ?」

 

そうだな、なんておばさんは笑いながら部屋を出ていく。

僕は看護師に我が子を預け、ベッドで運ばれていくユエへ付き添った。

病室に着き、面会者用の椅子を引っ張り出して座る。

窓の外を眺めると、空が白んでいくのが見えた。

 

「日付変わったから…もう23日か…」

 

今日の業務出来なさそうだな、なんて苦笑する。

結構城へ帰ってなかったけれど、大丈夫だったかな。

僕はそう思い、携帯を開く。

 

母様からメッセが届いており、業務は全て自分がやるから、今はユエの傍にいてあげろと来ていた。

シャナもだけど、母様も家族想いだよなぁ。

 

そういえばシャナどうしたんだろう。

看護師から呼ばれて、それっきりなんだけど。

シンクの方についててあげてんのかな。

 

段々眠くなってきた僕は、回らなくなってきた頭で考え、瞼を閉じた瞬間意識を手放した。

 

◆◆◆

 

「アオ、アオ。起きて。そんな所で寝てたら風邪ひいちゃう」

 

体を揺さぶられるのと、ユエの声で瞼を開ける。

彼女の足元と、体に感じる冷たさで、僕は床に寝転んでいたと気付いた。

ゆっくりと起き上がるが、視界がぼやけている。

 

あれ、眼鏡吹っ飛んだかな…。

 

ボーッとしていると、ユエが僕の手に眼鏡を握らせてきた。

それをかけ、彼女を見る。

いつもの、仕方がないなと笑っているユエの姿が目に映り、入院着という事もあってここ病院だったけな、なんてやっと脳が覚醒してくれた。

 

「ごめん、ユエ。寝ないでずっといたから…」

「謝らないでよ、アオ。それに、謝るならこっちの方。手、バキバキに折っちゃってるから…ごめんね、加減出来なかった…」

 

ユエの手を握っていた方を見ると、赤黒く腫れており、関節やら何やらがぐっちゃぐちゃなのが、傍目から見てもわかるくらいだった。

まぁ握っていたの右手で、利き手じゃないから別に良いんだけど。

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